第126話 だから・・・釣られな・・・
え?と思った瞬間には、もうその場にシーラがいませんでした。
「・・・シーラ?」
私が消えたシーラを探し周りを見渡すと、私達から遠ざかって行く彼女の背中がみえました。
なので慌てて追いかけようとしたのですが・・・
『ピタッ!サッ・・・サッサッ・・・』
シーラはいきなり立ち止まり、その場へとしゃがみ込み何かをし始めました。あれはきっと・・・
「・・・お目当ての物を見つけたのかしら?」
「どうやらその様です。ちょっと周辺を探してきますね」
「ウチも同じくや。周りに生えとらへんか見て来るわ」
シーラは単にお目当ての薬草を見つけたので走り出した様でした。それが解った私はホッと胸を撫で下ろし、シーラの元へと向かい採取を手伝うためにしゃがみ込みます。
「本当に雑草みたいですわね・・・んっしょっと」
「・・・ふふ・・・お姉様、それは雑草ですよ・・・ふふふ・・・」
「えぇ!?じゃあこっちは?」
「・・・あ・・・それも雑草ですね・・・そっちのが薬草ですよ・・・」
「わ・・・わからなさすぎますわ・・・」
程なくしてマルシアやサマンサが『あっちにもあった』と報告して来たのでシーラが確認し、本当に薬草だった物だけを選んで取って行きます。
そうやって薬草を採っていたのですが、私はふと気づいてしまいます。
「・・・あ、ちょっと止まってもらえる?これ以上進むと山に入ってしまいますわ」
そうなのです。知らず知らずの内、私達は入っては駄目といわれていた山へと入ろうとしていたのです。
寸での所で気づいたので薬草採りはそこまでとし、キャンプへと帰りがてら今度は山菜を採って行きます。
「沢山採れましたわね」
「やね。丁度昼時やし、これら使って料理でもしましょや」
「・・・あ・・・私は薬草の保存処理だけ先にしてきますね・・・」
「シーラだけだと大変だと思うので、私も手伝ってきますねお姉様」
「ええ、頼みましたわ。それではサマンサにノワール、私達は昼食作りといきましょうか」
「「はい」」
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特に何事もなく昼食も終わり、一休みしてから私達は川へと出かける事にしました。
「この時期ですけれど、何が釣れるのかしらね?」
「どやろな、ウチもそこまで川魚に詳しないで解りませんわ」
「事前に調べた情報ですと、マッスゥが旬とのことでございます」
ノワールが準備してくれたマッスゥ用の仕掛けが施された釣り竿片手に私達が川へと辿り着くと、そこには先客がいました。
「あら、グウェル殿下達もここに居らしたんですのね?」
「ん?ああ。獣類が見当たらなくてな」
話を聞くと、グウェル殿下達は最初獣を狙って狩りでしようと思っていたらしいのですが、全然見つからず魚釣りへとやる事を変えたそうです。ついでですので釣果を尋ねてみると『マッスゥがぼちぼち連れている』だそうです。
「成程・・・」
「僕達はまだここで暫く釣りを続けるつもりだが、マシェリー達もここで一緒にするか?」
「あ、いえ。流石に固まりすぎてるとあれなので、少し離れたところでやる事にしますわ」
「そうか」
「ええ。それでは私達は行きますわね」
「ああ」
余りに大人数で一か所に固まっているとよろしくないと考えた私は、グウェル殿下達から離れて釣りをする事に決めたので移動を再開します。
そして程よく離れたところで釣りを始めるのですが・・・
「「「・・・」」」
「おかしいですね?書物や人に聞いた限りではこの仕掛けと餌でよいとの事でしたが・・・」
私達の垂らした糸はピクリとも動かず、唯々静寂と時間が流れる空間が出来ていました。
ですが何処かで『釣りは根気!自分との勝負!』と聞いたことがあったのでそれを信じ、もう暫く粘る事に。
「「「・・・」」」
「あ」
「「「!?」」」
「あ、違いました」
「「「・・・」」」
粘っていても中々釣れず、これは駄目かなと思ったところでノワールが『場所を変えてみては?』と提案してきたので、私達はそれを受けて場所を変える事に。
するとどうでしょう・・・
「・・・来ましたわっ!」
「ウチもや!」
「私も来ましたっ!」
「・・・わ・・・わわわ・・・」
先程までの事が嘘の様に、私達の竿へとアタリが来ました。
そしてそれを上手く釣ったり外したりと続けていると再びアタリが来なくなったので、ここで再び移動を開始、するとまたアタリが再開。
そんな事を続けていると、私はまたまた気づいてしまいます。
「あ、これ以上進むと山へと入ってしまいますわね」
「ん?あ、そうやね」
「何時の間に・・・」
「ふふ・・・熱中すると危険ですね・・・」
「ええ。魚も取れた事ですし帰りましょうか」
危なくまた山の奥へと入りかけていたので、私達はキャンプ方面へと引き返します。
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その後の事なのですが、私は流石に不審に思って頭を捻っていました。
なんせ薪が無いと拾いに出ては山に入りかけたり、獣を見かけた気がしたので追って行ったら山に入りかけたりと、どう考えてもおかしかったからです。
「フラグという不思議パワーが私を山へと誘っているのかしら?」
「何言うとるんです?あ、焼けたでお姉様」
私はサマンサから焼きマッスゥを受け取り、再びフラグについて考えようとしたのですが・・・
「・・・うまっ!美味すぎですわマッスゥ!」
「まさに旬といった感じですね」
「・・・この山菜を刻んで乗せると・・・更に美味しいですよ・・・?」
「あ、ほんまや。うまっ!」
「雑貨屋店主お勧めのこだわり岩塩がより一層味を引き出していますね。購入して正解でございました」
「GJですわよノワール!そして雑貨屋店主!」
フラグがどうのこうのという考えは焼きマッスゥのおいしさに全部持って行かれてしまい、私の頭からさっぱりと消え去ってしまいました。・・・恐るべき美味しさです焼きマッスゥ。
「おぉ・・・あちらでもそうでしたが、美味しそうな匂いですな」
そしてそんな匂いに誘われ魚大好きシフロート先生が・・・って別に焼き魚の匂いに誘われて来たわけではありませんか。
シフロート先生は直ぐに口元を引き締め、ある注意喚起をしてきました。
「恐らくですが、今夜の夜中に雪が降ると思われますぞ。一応それを念頭に入れた上で就寝準備を始める様に。起きたら雪に埋もれていましたなんてなると大変ですからな」
シフロート先生はそれだけ言って自分のテントへと戻って行こうとしたので、私はおすそ分けとして焼きマッスゥを2,3匹渡します。しかし先に行っていたグウェル班の方でも貰っていたらしく、シフロート先生は『こんなに食べきれますかなぁ。はっはっは』と言い、笑いながら帰って行きました。
私達はその後、食後のティータイム中に一応雪が降った時についての話をする事に。
それは朝起きてテントが雪に埋もれていたらや暖の取り方、万が一はぐれてしまった時の対処方法などです。
正直雪がまだ降ると確定していないし、降るとしてもどれくらい降るのかも解っていないので話し合う必要もないかとは思ったのですが、特にやる事もないので私達はそれについて長々と話し合う事となりました。
そして翌日・・・
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「えぇっ!?行方不明!?」
「うぅ・・・はい・・・ちょっとお花を摘みに行くと言って出かけて、そのまま帰ってこないんです・・・」
見事に雪が降ってしまったこの日、事件が起きてしまいました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「もしや強制フラグ?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
え?☆やイイネをくれるんですの? く・・・くm
マシェリーの一口メモ
【私は人間・・・熊ではない・・・はず!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
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よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】