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第118話 暗い夜に生まれた星・中

 ≪ノワール視点≫


 それはあと半年も経たない内に精霊の儀が行われる9歳の頃でした。


 その日も私は粛々と仕事をこなしていました。


「昼食の準備終わり・・・次は畑の様子を見て・・・それから薪の補充もしなくちゃ・・・それから・・・」


 この頃にはさせられる仕事も解っていた為、要領よく仕事をこなせるようになっていたので何か言われることも殴られることも少なくなっていました。

 しかし少しでも怠けている様に見えるとここぞとばかりに何かされるため、私は止まる事無く動き続けていました。


「もう少しで収穫出来そうだったなぁ、倉庫の整理も進めなきゃ。薪も今日の内に摘む場所変えておこうかな・・・あれ?なんだろう?」


 畑は村外れにあり、そこから戻って来る途中の事でした。何やら村の方が騒がしかったのです。

 私は領主の使いでも来たのだろうか?いや、この時期には来ないから流れの行商人が来たのか?何て事を考えていたのですが、それは大きく外れていました。

 しかしそんな事は当時の私に解る筈もなく・・・


「私には関係ないかな・・・あ、でも一応様子は見ておかないとまた何か言われるかも」


 なんてことを考え、、念の為に確認しておいた方が良いと思った私は喧騒のする方へと歩いて行きました。

 そうすると、私は途中で見知らぬ1人の男に出会いました。


「ん?」


「・・・こんにちは」


 やはり外から人が来たんだなと思い挨拶をしながらその男をこっそりと観察したのですが、どうも領主の使いとも行商人とも見えなかったので、これは喧騒が聞こえてくる場所まで行かなければ解らないなと思い、その男の事は通り過ぎようとしました。

 しかしその男は私を呼び止め、質問を投げかけてきました。


「おい、嬢ちゃん。この村の人間だよな?」


「はい、そうです」


「何処から来たんだ?どっかに人がよく集まってる場所でもあるのか?」


「いえ、私は今まで村はずれにある畑に出ていただけです」


「ああ、そうなのか。この村は結構畑が多いのか?村の外に一杯あったりするのか?」


「いえ?村はずれにあるのはウチくらいです。・・・あの、もしかして領主様の使いの方ですか?」


 私はこのような質問を受け、『もしかしたら男は身なりと言葉遣いでは解らなかったが領主の使いなのではないか?』と考えました。何故なら、そんな事を聞くのは徴税調査のためくらいしか理由が思い浮かばなかったからです。

 男は私のそんな質問にクヒヒと笑った後、口を開き答えました。


「まぁその様なもんだな」


「やはり・・・」


「因みに嬢ちゃん、今から何処に行くんだ?家か?」


「あ、いえ。あちらの方に」


 私が喧騒の方を指さすと、男は顎に手をやって何か考えた後に再び話しかけてきました。


「そうか、俺も丁度あっちへ行くところだったんだ。一緒に行こう」


「あ・・・はい」


「ありがとよ。あ、向こうに着くまでにもうちょっと話聞かせてもらえるか?」


「はい、私に解る事なら」


 領主の使いなら下手に嘘をつくと不味いと思いそう言ったのですが、男が聞いてきたのは主に家のある場所や、村の外れに人が行きそうな場所があるか等でした。

 そんな事ならば村長が話すのではないかと不思議には思いましたが、私は嘘を付く事無く質問に答えていきました。

 そうしている内にやがて喧騒が聞こえる場所の近く辺りまで来たのですが、男が急に立ち止まり『最後にもう1つだけ聞きたいことがある』と言ってきました。


「なんでしょうか?」


「あんまし大きな声で言えないからちょっとこっちへ来てくれ」


「解りました」


 それまでは少し距離を置いて喋っていたのですが、よっぽどのことがあるのだろうと私が男へと近づくと、男は手を口元に持っていったあとに私の耳に顔を近づけてきました。


「最後に聞きたい事っていったがな、実は言いたい事なんだ」


 私がその言葉に小さくコクリと頷くと男は片手を私の肩へと置き、私に会ってからずっと言いたかったであろう言葉を口に出しました。


「クヒッ・・・俺・・・実は盗賊なんだ」


「・・・え?」


 私が何を言っているのか理解できずに呆けていると、男は肩に置いた手をスライドさせて私の腕を掴み、もう話は終わりだとばかりに私を引っ張り始めました。


「え?あの・・・」


「あぁ、もうお喋りは必要ねぇぞ?必要な事は聞けたしな」


 私が混乱しているのにもかかわらず男は進み、気が付くと喧騒が聞こえていた場所・・・村の広場へと辿り着いたのですが、私はその光景を見て漸く男の言葉の意味と現実に頭が追いつきました。


「あ・・・アナタ達・・・」


 なんと村の広場には村人が集められ、その村人たちが逃げられない様に賊が周りを囲み見張っていたのです。


「おらっ、お前もそこに居ろ」


「きゃっ!」


 私をここまで引っ張って来た男は私を村人が集まっている場所へと突き飛ばすと、2人の男の元へと走って行きました。察するに、片方の男は賊のボスなのでしょう。因みにもう片方は村長でした。


「ボス!見逃していた奴を見つけました!」


「おう。・・・で、村長さんよ、今度こそこれで全員だよな?」


「は・・・はい・・・」


「ボス・・・さっきのガキから聞き出した感じ、もう他には居なさそうです」


「おう」


 どうやらボスは慎重な性格らしく、村長に尋ねた後に部下からも情報を聞いていました。その際村人や村長が睨む様に私を見てきましたが、流石に賊に囲まれた状態だったからか、何も言ってはきませんでした。


「あ?どこ見てんだ?」


「すっ・・・すいません!」


「まぁいい・・・じゃあ話を始めようか・・・」


 ボスは不思議な顔をしていましたがこれで下手な事をする奴も居ないと思ったのか、村長と話し合いを始めました。


「そうだな・・・村人1人に付き・・・・・」


「それはっ!・・・流石に・・・・・」


「うるせぇ!じゃあ死ぬか!?」


 会話の内容は流石に解りませんでしたが、賊側もわざわざ私達を殺す気はないようで『助かりたければ○○』と条件を話している様でした。


 しばらくの間、ボスの怒鳴り声と村長の弱弱しい声が続いていたましたが、話が終わったのでしょう、村長が村人の集まっている場所へとやって来て大人達と喋り始めました。

 この時私は何となく嫌な予感は感じていました。しかし知っていたところでどうしようもなかったでしょうね。何の力もない唯の9歳児でしたし。


 村長の話が終わると、賊が数人来て1家族を何処かへと連れて行きその後戻って来る、そんな事が続きました。

 戻って来るたびに何かしら持ってきていたり、賊がニヤニヤしながら帰って来ていたので、恐らく1家族ずつ家に戻らせて受け渡しやお楽しみをしていたのでしょう。


「おい、次はお前の家だ」


 そしてそれは順番に回って来ていたので、勿論私の家族にも声がかかります。


「・・・はい。行くぞベラ、トム、ノワール」


 父が家族に声をかけてきたので私達は揃って家へと向かいました。


 そして・・・そこで私が持っていた唯一の希望が打ち砕かれたのです。


 ・

 ・

 ・


「因みにですが、その際周りの賊は私と継母に厭らしい視線を向けていなかったので、そこだけはホッとしながら歩いていました」


「・・・ホッ。ノワールがショックを受けるなんて言うモノだから、もしかして ピー されてしまったのかと思ってしまいましたわ!」


「当時の私は食事もあまりまともに取れていませんでしたから、やせぎすで身長も小さかったのでそういう対象には見なかったのでしょう。まぁ特殊性癖の方がいなかったのも幸いしましたが」


「ギリギリセーフって感じですわね!・・・私が賊だったらアウトだったかもしれませんけど」


「はい?何かおっしゃいましたか?」


「なにがですの~?」


 なにやらお嬢様がボソボソと言った気がしたのですが、気のせいな様です。


「因みにですけれど、継母の方もセーフでしたのね?」


「継母は私に仕事を押し付けていたせいか、その・・・かなりアレな体型になっておりましたので・・・」


「・・・いらない事を聞きましたわね。続き・・・話してくださる?」


「はい」


 恐らくこの先の話を聞いてしまうと、お優しいお嬢様は心を痛めてしまうでしょう。


 しかし、それでも私は話しましょう。


 何故なら知ってほしかったから。



 絶望の先に見つけた、希望の星の話を。



 マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「賊の癖にノーマル」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。

 イイネ☆ブックマークがもらえると 変態仮面が現れますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【グロ展開は回避いたしましたわ。多分。】


 マシェリーより宣伝

【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。

最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

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