第117話 暗い夜に生まれた星・上
≪ノワール視点≫
「貴女がそんな風に言うなんて珍しいですわね?何かその誘拐組織にでも恨みがありますの?ああ、別に言いたくなければ別に言わなくてもよろしくてよ?」
私の言葉に疑問を抱いたお嬢様が理由を尋ねてきましたが、言いたくないという事もないので話す事にしたのですが・・・やはりあの時のお嬢様は詳しい事情も知らず、その後調べる事もなかったようですね。
ですが良いのです。例えお嬢様が気まぐれでした事であっても、私にとっては大恩と感じられる事だったのですから。
「いえ、お話しさせていただきます。ですが事の始まりが私の小さい頃からになるので、少し長い話になってしまうかもしれません」
「ノワールの小さい頃ですの?・・・問題ありませんわ!寧ろお話しなさい?」
「はい。では・・・」
それは昔々、私がまだ幼い頃から始まります・・・
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私は極々平凡な村で生まれたのですが、その暮らしは平凡ではありませんでした。
「ほらっ!さっさと起きて動きなっ!」
「はい」
小さい頃、まだまだ非力な上に何事も一人前にこなせるか怪しいといった感じの年齢の時から、『そんな事は関係ない』とばかりに両親は私に仕事をさせていました。
それは大人がする仕事よりかは楽なモノでしたが、まだまだ小さかった私には上手くこなせるわけがありません。
「はぁ~・・・本当に使えないねぇ。トム、あんたは姉ちゃんみたいになるんじゃないよ?」
私はよくこんな事を言われ、罵倒をされたり暴力を振るわれたりしていました。
そしてそれは家の外でも有り・・・
「アンタ!もっと離れたところで洗濯してくれないかい?」
「おい!お前はもっと向こうで薪を拾え!ここいらに近づくな!」
「おっ!悪魔だ!悪魔がいるぞぉ~!泥団子攻撃だぁ~!」
こんな風に村の人達からも罵倒されたり、軽く攻撃されたりしていました。
運が良いのか悪いのか眠っていた魔力のお陰か暴力には耐えられ、途中からは要領が良くなったのでそんな事も少なくなりましたが、7,8歳くらいまでは日常的にされていました。
何故そんな事をされていたか、それには勿論理由があります。
1つは母が継母で私を嫌っていた事。
私の産みの母は私を産んですぐに無くなり父は今の継母と直ぐに再婚したそうなのですが、継母はどうやら昔から父の事が好きだったらしく、産みの母の子である私を嫌っていたそうです。なので普通の子よりも早い時期から仕事をさせたり、村の人達へと積極的に私が駄目な奴だと吹聴していたそうです。
・・・弟ですか?彼は継母が産んだ子で両親から愛されていたので、普通の子と同じように優しく温く仕事をさせてられていましたね。
蛇足がありましたが・・・理由の2つ目は私が黒髪黒目をしていた事。
お嬢様やお友達の方々は気にしていませんが、黒髪黒目は不吉だとしている人が大多数です。それは私の両親や村の人々もそうで、私は『悪魔の子だ』『災いを呼ぶ子だ』と疎まれていたのです。・・・即刻殺されなかっただけ運がよかったのでしょうか?
これらは継母や村の人がつい漏らしてしまった言葉によって知ってはいましたが、知ったところでどうしようもない事でしたので私は粛々と耐え生きていました。
それと言うのも『私は母に望まれて生まれて来た』、そんな希望があったからでした。
勿論それは私が生まれてすぐ死んだ母に聞いたという訳ではなく、村の人や父の会話の中で『ケイティ(母)は産むと危険とわかっていてあの子を産んだ』『あの子さえ産まなければケイティはまだ生きていたのに』等の話を聞いたことがあったので、私が『自分の命の危険があったのに私を産んでくれた。つまり愛されて生まれて来たのだ。父も母の事さえなければきっと私を愛してくれていた』と勝手に解釈したモノでしたが。
そんな一筋の希望を胸に生きていた私ですが、その希望は儚い砂上の楼閣だったという事を知らしめる事件が起こります。
それは以前の様な罵倒や暴力は少なくなったにしろ、相変わらず村の人や家族から疎まれて生きていた9歳の時です。
村に・・・賊が現れたのです。
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「そう・・・あれは数か月先に精霊の儀を控えた日の事でございました」
「ちょ・・・ちょっとお待ちになって?・・・すぅ~・・・ふぅ~・・・」
続きを話そうとした時にお嬢様からストップがかかったので一度口を閉じ、ティーカップが空いていたのに気づいた私がお茶を注ぐと、お嬢様はお茶が熱々なのにもかかわらずグイッと飲み干してしまいました。
「んっ・・・あづいですわ゛っ!はひはひ・・・い・・・一応念の為に確認しておきたいのですけれど・・・それって実話ですのよね?」
「勿論でございますよ?」
「・・・そう・・・ですのね・・・」
私の過去を初めて知ったお嬢様はショックを受けていた様ですが、今の私は昔の事をそこまで引きずっていないのでお嬢様がショックを受けている事の方がショックです。
「お嬢様、私はお嬢様によって救われたのでもう過去の事は気にしておりません。ですので私の事でそこまでお気に召さず、唯『そんな事があったのか』位に聞いておいてください」
「・・・」
お嬢様は私の言を受けて何やら考えていますが・・・そうですね。慈悲深きお美しい心をお持ちのお嬢様ならばこのようなお話に心を痛めるのは当然かもしれません。
しかしです、今より話すのはもう少しショックが強い話となります。大丈夫なのでしょうか?
「申し訳ありませんお嬢様。解りやすいかと思い始まり辺りから話し始めたのですが、要点だけを話した方がよろしかったでしょうか?」
「いえ・・・話してくださる?」
「ここからはもう少しショックを受けるかもしれませんが・・・」
「・・・・・・よろしくてよ」
「そうですか、では・・・」
お嬢様が何か覚悟を決めた様な顔をしていらっしゃるので、私は話の続きを語り始める事にしました。
当時私が抱いていた小さな希望が粉々にされた後、眩いばかりに煌めく希望を見つけた話を・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【次話ですが・・・作者の気分次第ではちょっとオグロになるかもしれませんわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
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よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】