第114話 魔道具オタクのマクシムさん
「いやぁ俺はアレの旧型の方が好きだったんですけど、周りの皆はやっぱり新型の方がいいねーってなるんですよ。まぁ確かに新型も新型だけあって旧型の不便な所が良くはなっているんですけど、それによってあの独特の動きも消されているんですよね。俺は言いたい!あの動きこそが・・・・・・・」
「そやねー」
「オホホホ・・・」
陽キャ様のお導きにより和やかに始まったお喋りの場は、今やオタクによるマシンガントークの嵐に吹き曝されていました。
最初こそそんな話にも付いていけていたのですが、彼は自他共に認める魔道具師でこちらは一山当てただけのニワカ魔道具師、彼の濃ゆ~い魔道具トークに直ぐについていけなくなった私達は今や全肯定ソウダネBOTと化していました。
「解るかい!?あ、そうだ!動きというか性能の面にも関わって来るんだけど、ウンタラカンタラ・・・・・」
しかし彼はその全肯定が嬉しかったのか、止まる事無くその口から魔道具の話が漏れ出してきます。・・・このお方、ホステスクラブやキャバクラへ行ったら度ハマりするタイプでは?
(そう言えばイリスも人の話をよく聞いて肯定して上げるタイプ・・・マクシムと仲良くなれる筈ですわ)
「いやぁ、やはり記憶君の製作者だけはあって俺の話もよく解ってくれる!あの発明はウンタラカンタラ・・・・・」
マクシムの好みのタイプはママみが強いタイプ、脳内にそんないらないメモが増えた所で丁度記憶君の話が出てきていたので、私は強引に話に割り込みをかける事にしました。・・・だって放って置いたら夜になるまでこのままっぽかったんですもん。
「あの!マクシム様!」
「あのアイディアは凄いよ・・・ん?どうかしました?」
「そこまで私の魔道具を褒めて頂きありがたく存じますわ」
「ああ、いえいえ」
「ですけれどそんな魔道具、私的にはまだまだ不満がありますの」
「不満ですか?名前とかデザインとかにですか?あ、それとも保存できる容量にどうしても限りがある事とか?確かにあれ以上大きな原材料を採るのも現実的ではないですし、セーフティー機能ですか?あれらを省くのも問題でしょうからね」
マクシムは私が記憶君について不満があると口に出すと、おおよその問題点というか改良点をさらりと口に出します。
自分が作っていない物でもよく理解しているとはやはり超一流の魔道具師、そこに痺れるし憧れます。
ただし、名前とデザインの事をディスった事は許しません。ええ。
「オホホホホ、ソウデスワ。サスガワカッテイラッシャイマスノネ」
「まぁ俺も遊び心でああいう緩い感じの名前とかデザインで作りますからね。いやぁ~!遊び心も理解できる魔道具師の人に会えるだなんて俺は幸運ですよ!」
(#^ω^)ピキピキ
(・・・私はクールで完璧お嬢様・・・私はクールで完璧お嬢様・・・私は・・・・・)
殺意の波動に目覚めそうになりますが、自己暗示を繰り返して何とか心を落ち着けた後、私は続きを話し始めます。
「名前とデザインは置いておきましょう、ええ。私が主に不満に思っている事は容量の事ですの」
「容量ですか。でも正直な所、そこまで容量はいらないんじゃないですか?今でも十分保存できますよね?何なら面倒ですが2,3個買えばいいですし」
記憶君を唯のカメラだと思うのなら、確かにその通りでした。一応記憶君には映像の消去機能もありますので、大事だと思ったモノ以外は消して使えばイイだけですし、後々には画像を紙に出力したり、記憶専用媒体や再生専用媒体等の開発の想定もあったので。
「気に入った一枚の画像や短い映像を自分だけで楽しむならば確かにその通りですの。しかし私はもっと容量の大きい記憶君を使い新しい事業を始めようかと思っておりますの」
しかしこの時に私が考えていたのは映画を撮ろうというモノでした。なので映画の事を簡単に説明して、何故記憶君の改良が必要なのかを説明します。
「へぇ、成程。マシェリーさんは色々な事をしているんですね?若いのに凄い事です。そして映画ですか・・・凄いアイディアですけど、それだけにその事業を始めようと思うと面倒だとおもいますよ?主に関連してくる貴族への根回しとかですけどね」
「根回しなどは問題ないと思いますわ。私実は上位の貴族家の者ですので」
「あぁ~、何となくそう思っていましたけどやっぱりでしたか。なら大丈夫そうですね」
そう言うとマクシムはズズっとお茶を飲み、既にこの話への興味が無くなったかのような雰囲気になっていました。
どうやらこのお方、興味が無い事にはとことん興味が無いタイプの様です。・・・まぁ知っていましたが。
「それでマクシム様、記憶君の改良についてなのですが・・・」
「あ、うんそうだったね。容量か・・・容量ね・・・うーん、そうだなぁ。流石にそこら辺は実際に色々見て見ないと解らないかな。よし、行こうか!今から時間あるよね?」
記憶君の改良の事について話し出すと、いきなりマクシムは立ち上がり『さぁ行こう』と言い出しましたが・・・ちょっとまった!ですよ!?
「あー・・・それなのですがマクシム様、私の考えでは色々と長期の予定になりますので、改良するのはほどほどに時間的余裕がある方に頼みたいんですの」
「あ、そうなんだ?でも俺なら力になれると思うよ?」
数日前にも言いましたが、狙うはマクシムではなく彼が紹介してくれるであろう方々、なのであれから少し調べた結果を元に上手く誘導する事にします。
「それと・・・魔道具師のマクシムと言うお名前で思い出したのですが、マクシム様って結構先まで予定がお有りだとか?」
「ぎくっ!」
「近々でも何やら『あの魔道具師マクシムが改良した魔道具が~』とか聞いておりますわよ?そう言えば、この様にのんびりしているという事はそれについてはおわったのでしょうか?」
「・・・あっはっはっは」
「まぁ終わったところで次の予定次の予定と入ってるでしょうから、今回は遠慮させていただきますわね?出来ればあの高名なマクシム様に見てもらいたかったのですけれど・・・残念ですわ」
自分で言っていて少々言い方が棒な気がしているのですが、マクシムは何故か疑っていない様なので、問題なしとして続けましょう。
「確かに残念だ・・・記憶君結構面白そうな魔道具なのにな・・・」
「ええ。あ、そうですわ」
「うん?」
「良ければどなたか腕の良い方をご紹介いただけませんこと?」
「え?ん~・・・どうかなぁ。俺もさほど顔が広いって訳でも・・・」
「あらぁ~そうですのねぇ?もし紹介してもらえるようであれば、記憶君の設計や諸々をその方を通じて紹介者にお渡ししようと思ってたのですけれど・・・ざんねんですわ~」
「紹介!?そんな事だったら俺に任せてよ!」
「あらぁ~?ほんとうですの~?あ、出来れば錬金術に長けている方なら尚ヨシだと思いますの。なんせ原材料が鉱石系ですので」
そう言うとマクシムは『マカセロリ!』と言って(言ってはいない)少し考え込んだ後、『ちょっと待ってて』と言って何処かへ走って行ってしまいました。
恐らく紹介してくれる方に繋ぎを取りに行ったのでしょうが、そんなに記憶君の設計図や諸々がほしかったのでしょうか?・・・ほしかったのでしょうね!
(なんせ魔道具狂いのマクシムですものね)
そんなマクシムの別名を思い浮かべつつお茶を飲んだりお菓子を食べたりしていると、喫茶店の扉が『バーン!』と開き、先程飛び出していったマクシムが飛び込んできました。
「さぁ!行こうか!」
「・・・え?」
マクシムは入って来るなりそう言い、伝票を引ったくりレジへと会計をしに行きました。
いきなりだなとは思いつつも、マクシムが『早く速くハヤク!』と急かしてくるので私達は立ち上がり、マクシムの案内の元ある一軒の店まで行きました。
そこで出会ったのが・・・
「よろしくろっ!」
「よろしくらっ!」
双子の魔道具師グロウと錬金術師グラァでした。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【書く直前まで姉御&ロリの友人コンビで出そうと思っていたのに、気が付いたら何故か双子の姉妹になっていましたわ。何を言っているのか解らないと思いますけれど私も何を言っているのか(ry】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




