第113話 歴戦ストーカーお嬢様再び
寒さが増してきて人々の服装が変わりつつある某日、私達は学園の門傍のお店にてお茶を飲んでいました。
「寒いですわ・・・」
「・・・だから店の中で飲みましょいいましたやん。別にテラス席に居らんでも様子は見えますやん?」
「万が一って事もあるかもしれませんもの」
私の記憶やイリアスからの情報によればこの日が主人公と魔王のランデブー日となります。
なので今日出掛ける筈だろうと、わざわざ寒いテラス席にて学園の門を監視していたのですが・・・中々出てきません。
現在の時刻は朝の9時過ぎ、もうそろそろ出てきてもいいはずなのですが・・・
「あ、あれイリスちゃいます?」
「・・・っ!さっさとお会計をして追いますわよ!」
そんな事を考えていたら丁度イリスが学園の門から出て来たので、私達は店の会計を素早く済ませてイリスの後を追いました。
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暫くイリスは目的もなさそうに、あっちへフラフラこっちへふらふらと街をさ迷っていました。・・・多分小一時間程はそうしていたと思います。
そんな時、彼女がある出店を除いていると1人の男が近づいてきました。
「来ましたわね」
近づいてきた男は勿論あの男、黄の魔王マクシムです。
彼とイリスは『偶然だねー?何してるのー?』みたいな感じで話し始め、話している内に話が盛り上がったのか、一緒に歩き出しました。恐らくですが魔道具屋が軒を連ねている地帯へと行くのでしょう。
「無事マクシムと合流しましたわね。ではこれよりは気を付けて後を追いますわよ?」
「畏まりました。念のために隠蔽魔法を強めにかけておきます」
「ええ」
「それでも気をつけやなあかんと・・・了解や」
相手は仮にも魔王、用心してし過ぎる事は無いでしょう。まぁマクシムは戦闘ガチ勢という訳でもないので大丈夫だとは思いますがね。
私がマクシムについて考えていると、サマンサもマクシムについてある事を思ったのか口にしました。
「しかしあれやね・・・はた目から見とるとナンパ仕掛けた奴と見事にかかった奴みたいやね」
・・・まぁ、思っていたのはとても失礼なことでしたけれどね!
「まぁ・・・そうですわね」
まぁ、私も思っていましたけどね!!
と、馬鹿な事を言ったりしながら2人の後をつけていたわけですが・・・
「・・・なんかあれやね?デートしとる相手をつけるって、結構苦痛やな」
「それは言わぬが吉ですわよサマンサ。だって口に出してしまったらもっと苦痛にかんじますもの」
「そやね」
「くくく・・・リア充は爆散すればいいのに・・・」
「あ・・・貴女には私が居るじゃありませんのシーラ!」
「シーラもリア充やん?爆発せな」
「はいはい、皆で一緒に爆発いたしましょうね?」
イチャイチャしているカップル(実際は唯の知り合い程度)の後をつけるのはそれはもう苦行という感じで、私達は尾行をしている筈なのにペチャクチャとお喋りをしまくっていました。
あげく苦行過ぎたのか、少し陰の気があるシーラが究極魔法『リア充爆散』を唱えていたので私は慌てて宥めに入りもします。
そうやって私達はわちゃわちゃとして気を紛らわせながら尾行を続けました。目には目を、歯には歯を、イチャイチャにはイチャイチャを、ですね。
そうやって暫く魔道具オタクカップル(実際は唯のry)の尾行を続けていましたが、5時間程経った後、イリスが他にも用事があるのかマクシムと別れ何処かへ行ってしまいました。
しかし予め想定していた事だったので、メンバーをイリス尾行班とマクシム接触班の二つに分けて行動する事にします。
勿論私はイリスを尾行・・・したいのは山々ですが、今回は魔道具の事を話さなければならないのでマクシム接触班に。
「交渉がんばるでぇ!」
「スケジュール管理等はお任せを」
そして交渉や諸々の管理もあるのでサマンサとノワールもマクシム接触班へとはいります。
「マルシア、それにシーラ、一応気を付けてくださいまし?と言っても、見つかった所で『偶然ですね?』とでも言っておけば誤魔化せるとは思いますけれど」
イリス尾行班はマルシアとシーラに頼みました。こちらは2人体勢ですが、恐らくは他にイベントも起こらない筈なので大丈夫でしょう。
「はい。では行ってきます」
「ふふふ・・・いってきまーす・・・」
「ええ。また後で合流いたしましょう」
こうして二手に分かれた後、私達はイリスが視界から消えるのを待ってマクシムへと接触をする事にしたのですが・・・
「・・・」
「どしたんお姉様?声かけへんの?」
「いえ、かけますけれど・・・どうやってお声をかけようかと。私、あの方とは面識ありませんのよね」
「あー、成程?まぁ適当に話しかけたらええんとちゃいます?・・・すいませーん」
マクシムとは面識がなかった為どうやって声をかけようか迷っていると、我がマシェリー軍団1の陽キャ『パリピのサマンサ』がマクシムへと突っ込んで行きました。
当然向こうは『誰?何の用?』みたいな顔をしていましたが、何を話したのか・・・数分後には笑い合いながら話をしていました。・・・サマンサ、恐ろしい子。
そうやって私がハイパー陽キャに慄いていると、サマンサがマクシムを連れてこちらへと戻ってきました。
「おーい、お姉様ー。連れてきたでー」
「君があの魔道具の開発者って本当かい!?・・・あ、ごめんごめん。俺はマクシムっていう者で、魔道具開発なんかしてます。こんにちは」
「御機嫌ようマクシム様。私はマシェリーと申しますの。えっと・・・立ち話もなんですので、あちらでお茶でも飲みながら如何かしら?」
サマンサはマクシムへ私が記憶君の開発者という事も伝えたらしく、開口一番でその事を言われました。
予め記憶君の事を言ってくれていたのは好都合だったので、私は丁度イイと思いそのままマクシムを喫茶店へと誘います。
すると彼も開口一番で聞いて来るほどには興味があったみたいで、『是非』と喫茶店へと一緒に行く事になりました。
「では、あちらの店へと入りましょうか」
「ああ!いやぁ・・・こんな所であの魔道具の開発者と会えるなんて・・・ラッキーだなぁ」
こうして、『悪役令嬢』と『黄の魔王』のファーストコンタクトは穏やかに成功となりました。陽キャ様様ですね!
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「リア充爆発!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
イイネ☆ブックマークがもらえると リア充爆破スイッチを押す権利を差し上げますわ。
マシェリーの一口メモ
【私の仲間の異名は『パリピのサマンサ』『陰のシーラ』『普通のマルシア』ですことよ!・・・まぁ嘘ですけれども。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】