第104話 学園祭5~賢者の時間~
サマンサから話を聞いた私はゴクリと生唾を飲みこんだ後、一度大きく息を吐いて冷静になれるように務めました。
その結果、なんとか慌てずに動けそうになったので、取りあえずサマンサからもう少し話を聞く事にしました。
「で、サマンサ・・・あの方達はあそこに集まって何をしていらっしゃったの?」
本当にペガサスが居たのなら『ザワザワ』どころではなく、きっと人々は『ぎょぇぴぃー!』とでも叫んで大混乱に陥っていたでしょう。
ですがそうなっていないという事はペガサスが暴れていないという事で・・・
「あ、まさかペガサスは飼いならされていたり?・・・意外と気性は荒くないのかしら?」
(ゲームではモンスター扱いでしたけれど、意外と優しいモンスターだったり?)
「まぁ見た目は美しいですものね。・・・飼いならせるのならいいペットになるのかしら?」
「ちょいお姉様落ち着いてぇな。何でそんなに興奮しとるんです?」
「え?」
・・・どうやら冷静になったと思っていたのは気のせいで、もの凄く動揺していたらしいですね。
私は今度こそ気を落ち着かせるために、1分ほど頭を空っぽ状態にしながら深呼吸をしました。
「・・・今なら女体の神秘も解き明かせそうですわ」
「・・・は?」
「・・・言い間違えましたわ。兎に角、落ち着いたので詳しく説明を」
落ち着き過ぎて賢者状態になってしまいましたが頭は冷えた?みたいですので、私はサマンサから詳しい話を聞く事にしました。
「いや、詳しいも何も、物珍しい恰好しとるペガサスがウェイウェイ言っとったんで一目見ようと集まっとったみたいですよ?まぁお姉様の言う通り、見た目はまぁまぁやからね」
「ウェイウェイ?」
ペガサスとはその様に鳴くのでしょうか?
「・・・っていうか、あれペットにしたいんです?めっちゃ五月蠅そうやし、ウチはちょっと・・・」
「サマンサ、昔貴女はアレ系が好きだったではないですか。それなのに嫌なんですか?」
「っちょ!何言うとるんやマルシア!そんなん昔の話やないか!」
「うふふ・・・懐かしいですね・・・ギルバートでしたか?・・・うぇ~い・・・」
「いや、あいつは吟遊詩人やし、あんなチャラチャラホストとちゃうからウェーイとは言わんやろ」
ペガサス・・・ウェーイ・・・ホスト・・・あっ!
「あぁぁぁっ!『輝く星』のウェーイ!」
そこで漸く私の頭にもピンと来ました。サマンサの言うペガサスとは、ホストクラブ『輝く星』に居たホストの事でしたか!
(イリス達が帰った後、ムラサキと一緒に合流して来た方がそう言えばそんな名前だって言ってましたわね!)
よくよく思い返すと、ドンチャン騒ぎをしていた中に妙にウェイウェイ言ってる方が居たことを思い出しましたが・・・
「って、そのホストのペガサスが何故ここにいるんですの?」
「それは解らへんですね。まぁ学園祭見に来たんとちゃいます?あ、そういえばもう1人居ましたわ。・・・たしかムラサキって名前やったはず?」
ウェーイのペガサスが学園に居た事が謎でしたが、ムラサキも居るという事はムラサキについてきたのでしょう。・・・って、ムラサキも何故居るか解りませんね。
「・・・ふむ」
私は何故この場にムラサキが居るのかを推察する為に考え込みましたが、一向に答えは出てきそうにありませんでした。
なので・・・
「聞いてみますか」
直接彼に聞いてみる事にしました。
これはマクシムの場合と違い、ムラサキは面識がありますので接触した所で不味くはないだろうとの判断しました。
それに彼の気性だとこれくらい尋ねたところで怒りはしない筈なので、恐らく大丈夫でしょう。
「では私達もあの人波の中へ突入・・・って・・・」
尋ねに行こうとした時、丁度向こうからこちらにやって来たのですが・・・それは正にモーゼが海を割るかの如くでした。
「うわっ・・・何か妙な力でも使っとるんかあれ。人波がきれーに割れとる」
(多分使っていますわね。まぁ彼からしたら使っている内にも入らないかもしれませんけれども)
ムラサキ・・・紫の魔王ヘイズは精神魔法に長けた人物、あれくらいは息をするかの如く出来ても不思議ではありません。
恐らくあれも魔法を行使したと言うより、漏れ出た魔力に人々が影響されてああなったのでしょう。
(そう思うとホストは天職ですわね。まぁ考察wikiとかにも、『自分でもホストは天職だと思っている』みたいには書いてありましたが・・・っと)
「ごきげんようムラサキさん、ペガサスさん。いらしたんですのね?」
「あぁ、こんにちは可愛子ちゃん達」
「ウェーイ!ってかやっぱ金持ちだったんだな君ら!出来れば今後とも御贔屓にオナシャッス!」
向こうが話の出来る距離まで近づいたのでこちらから挨拶をすると、向こうもにこやかに返してきました。
取りあえず挨拶もしたので、次はやんわりと来た理由を尋ねてみますか・・・と、思っていたのですが、私はそれより気になった事を尋ねる事にしました。
「あのー・・・ペガサスさん?その恰好は一体?」
サマンサが『白くて羽が生えとった!』と言っていましたが、私はここで漸くその意味が解りました。
何とこのホスト・・・
「ん?あぁこれ?イケてるっしょ?流行ったら『ペガサスウィング』って名前にしたいんだけど、ドゥー思う?」
背中に作り物の翼をつけていたのです。
それを見て私は思いましたね。『絶対流行らないし、流行らせません』と。
「オホホ。ソウデスワネー」
「ウェーイ☆」
しかし真正面から否定すると可哀想かなと思い、適当に返事を濁しておきます。・・・と、ペガサスウィングについては置いておき、話を戻しましょう。
「えーっと・・・それでお二方も学園祭は楽しんでおられます?あ、毎年来ていたりするんですの?」
「今来たところだからこれからかな。後俺は学園祭に来たのは数年ぶりかな」
「ウェーイ☆俺は毎年1日は来てるYO!」
「あー、ごめんね?ペガサスお祭り好きだからはしゃいじゃってるんだよね」
「・・・オホホ」
一瞬警備員を呼ぶべきか迷いましたが、謝る魔王の顔に免じて許しましょう。
この後ちょいちょい挟まる『ウェーイ☆』に翻弄されながら話を聞いたところ、『そう言えばマシェリーちゃんにまたねって言われたな。学園祭に行けば会えるかな?』と思い来てみたそうです。
「成程・・・そうでしたのね」
「うん。バッチリ会えたし、結果オーライだったね」
「ソ・・・ソウデスワネー」
(私のせいでしたかぁー!!)
何か裏があるのでは?と探ってみましたが、結果は唯単に私の言葉を思い出したから来てみたという事でした。
今思えば、あの時に何故意味ありげに言ってしまったんだ!と後悔が出てきますが、それは後の祭りというモノでしょう。
まぁなにはともあれ、謎は解決したのでもうこのお二方に用はありません。というか、一緒に居るとペガサスウィングとムラサキホストパゥワァーで目立ってしまうので一刻も早く別れたい所です。
でないと・・・
「・・・え?ムラサキさん?・・・それに・・・マシェリー・・・さん・・・」
「おや?イリスちゃんじゃないか」
(・・・あちゃ~)
時すでに遅しといった所でしょう、イリスに見つかってしまいました。
(このひと月程で大分持ち直したとはいえ、イリスにとって恐らくムラサキの事はまだ思い出したくない出来事。・・・大丈夫かしら?)
イリスにとってムラサキの存在は微妙なモノ。
なんたって『カッコイイ!好きかも』と思っていたらその実『モン娘好きの変態男』と知ってしまい、ショックを受けてしまったのですから。
しかもその相手が未だ複雑な思いを抱く私と居たのですからさぁ大変。イリスの心は空前絶後、超絶怒涛のピンげいn・・・ではなく、まぁ・・・物凄く乱れている事でしょう。
「・・・」
イリスは暫く無言で私達の事を見ていたのですが、突然顔を俯かせたと思ったらそのまま私達の近くまでズンズンと歩いてきました。
そして1m程の距離まで近づいた時、イリスは顔を上げて私達に声をかけて来たのですが・・・その様子はまるで・・・
「こんにちはムラサキさん。それにマシェリーさん。今日はとてもいい天気で、絶好の学園祭日和ですね」
悟りを得た賢者の様でした。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【賢者タイムが解らない方は調べ・・・ない方がいいかもしれませんわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】