第9話 偉い人曰く
オーウェルス家の庭園にて開かれている令嬢達のお茶会、現在その庭園には少しピリピリしたムードが漂っていました。
それと言うのも・・・
「皆様・・・少しは落ち着かれまして?」
「「「ハイ、オチツキマシタ」」」
3人の令嬢達は、両手である物を大事そうに抱えながら答えました。それこそがこのピリピリしたムードの原因である・・・『ブロマイド』です。
それは少しだけ前の話です。
私がある事を考えて令嬢達を放って置いた所、何時の間にか渡しておいた『世界で知れ渡っているイケメン達のブロマイド』で推し戦争が勃発していたのです。
何とか言い争いは治めたのですが、原因である『自分の推しが一番!』はノータッチである為、場の空気はこんな状態になっている・・・という訳です。
「ヤレヤレですわ・・・さて皆様」
如何した物でしょう・・・と思いましたが、丁度イイかも知れないと、この状況を利用する事にしました。
「皆様は先程『推し』と『カップリング』が解らないと言いましたわよね?その『推し』の方を今教えますわ」
現在この場にいる全員・・・令嬢も使用人もが、今この空気で話す話題か!?と思ったでしょうが、今だからこそですわっ!
「『推し』とはまさに、今の皆様の感情ですわ!」
「「「・・・?」」」
「このお方が一番カッコイイ!美しい!尊い!好き!このお方が自分にとってのお気に入り!このお方を応援したいし、他の人にも薦めて応援させたい!まさにそれが『推し』!ですわ!」
「「「「「な・・・なるほどっ!!」」」」」
何故か令嬢達だけでなく周りの使用人達も納得して、これまた何故か拍手をしていますが・・・解った様なので問題ないですわね。
「これが・・・」
「成程・・・」
「うふふ・・・推し・・・騎士団長様・・・」
(まだ心が未熟な令嬢達もなんとなく理解した様でよかったですが・・・後でそれぞれの使用人に言って恋や性について教育を進めてもらった方がいいですわね)
少しだけこの場のノリと勢いで話した部分もあるので、私の話を丸々鵜呑みにして育ちおかしくなってもいけないと思い、帰りに言づけを忘れない様にしようとノワールにこっそり合図を出します。
この場の空気に流されていなかったノワールは静かに了承の意を示し、空気に流されて仕事を疎かにしている他の使用人達に仕事を再開する様促し始めた。
「ごほん・・・それで皆様、こんな言葉があるのをご存知かしら?」
「「「?」」」
「エロ・・・いえ、偉い人曰く、嫌いなモノより好きなモノで自分を語れ、らしいですわ」
漫画の先生という偉い人・・・ですが!結構前の漫画ですが名言でしたわ。おっと・・・思考が逸れてしまいました。
令嬢達は相変わらず「よくわかりません」という顔をしていましたので、砕いて言いましょう。
「つまり、推しでないお方の悪口を言うより推しのお方の良い所を話しましょう、という事ですわ。その方が相手も、確かにそうですわ!と推しの良さを褒めてくれるかもしれませんわ」
私の言いたい事が伝わったのか、3人は頷いていました。
「と、いう事で、残りの時間は自分の推しの良い所を話しませんこと?それと出来れば皆様の事も知りたいですわ、よろしくて?」
「は・・・はい!あのですね、赤の魔王様は・・・」
「勿論です!それで私の推しのギルバート様は・・・」
「うふふ・・・マシェリー様・・・騎士団長様はですね・・・」
令嬢達は私の提案に乗り、それぞれの推しの事を話し始めましたが・・・一気に言われても解りませんわ!
それからのお茶会は依然とは一転、楽しい笑い声と笑顔が溢れるものとなり、私達は楽しい時間を過ごしましたわ。
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「それでは皆様、御機嫌よう」
「「「御機嫌よう、マシェリー様」」」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、私は帰る3人を見送りに屋敷の正面に来ていました。
3人とはこれから週2回のお茶会を約束し、笑顔で見送りました。
「今日は楽しかったですわ・・・」
3人が行ってしまい、少し寂しく感じてぽつりと呟くと、その呟きが聞こえたのかノワールが優しい声で返してきました。
「また直ぐにお茶会で会えますお嬢様。それまでにお嬢様も推しを作らなければなりませんね」
「ふふ、そうですわねノワール」
私を気遣ってか、ノワールは普段言わないような事を私に言ってきましたが、確かに少し考えるべき事かもしれませんわね。
今回の作戦『マウント合戦よりどのカップリングが好きかで自分を語れよ~BLが嫌いな女はいない~』は半分成功と言ったところで、皆様に『推し』という概念を作れたのは良かったのですが、実は私自身に推したい人はいなかったのです。
まぁそれはその筈で、多少BLもイケル様になったとはいえ、基本的に私は男より女の子の方が好きなのです。
そんな私なので、推したい男はおらず、皆様の話題もほとんど聞き手側に回っておりました。・・・その分私は皆様の事を質問したりできたので、それはそれでよかったのですが。
しかしずっとこの状態が続くと、場の空気が微妙な感じになる事も確か、なので私も推しを探さなくてはいけないかもしれません。
「どうしたものかしら・・・まぁいいですわ。ノワール、家に入りますわよ」
「かしこまりましたお嬢様」
といってもそこまで急ぐこともないので、考えるのは追々でいいでしょうと思考を切り替え、私達は家へと入りました。
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それから3日後、週2回ペースでお茶会を行うと宣言した通りに、再度あのメンバーを招待してお茶会を開いたのですが・・・そこで事件が起こりました。
「サマンサ様・・・」
「マシェリー・・・様ぁ・・・」
マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「推し戦争は何時の時代も起こるもの」等思ったら、☆で評価やブックマークをして応援してくだされば幸いですわ。
☆がもらえると 推し戦争が、激化しますわ!
マシェリーの一口メモ
【漫画の名言を引用してしまったので、怒られたら修正いたしますわ。因みに元ネタの作者さんをggって最新?の漫画をチラッと見ましたが、面白そうでしたわ】