神々の集い(世界でもトップクラスに変な奴らの集会)
大陸を天高くから見下ろすと、幅広いリング状。情緒なく端的に言えば右下の部分が欠けたドーナツの形をした大陸を見ることが出来る。
ドーナツの穴に当たる部分は大陸がかつて小さな島だった時には湧き水だったと伝えられている巨大な湖で、この大陸で生きる者たちにとっては最大の水源であり、また最も使われる交通手段である船の移動経路でもある。
大陸の外側には何もなく、大陸は宙に浮いているかたちになる。
本来は見えない国境線を仮想すると、
南から南西にかけて戦神バーミリオンが生まれたジラン王国。
南西から北西までが騎士神リドマンが生んだ騎士国。
北西から北までが森神が治めるエフェメラの森。
これら三か国が大陸の西部にある。
そして北から北東までが『神のいない国』バゼトフ。
北東から南東までがドワーフと荒野の国ガーズランド。
最後に南東から南までが刀神アズマの生国である和国。
和国だけは南東部が炎河、南部が戦河という二つの大河が横たわるこの世界で唯一の島国となっている。かつて大陸が小さな島だったときは二本の河は一筋の河であり、和国は小さな洲だったと伝えられている。
その和国、最高峰である不死山。
かつての大神と魔神の戦いのおりに不死身と言われた悪魔が封じられていると伝えられる山である。
その山頂に一人の影、バミリオと名乗った戦神バーミリオンの若かりし頃の姿である。
戦神は黙然となぜか広げてあったゴザに座りこんでいた。
そこに……
「あ、バミちゃん。お久しぶり、元気してた?」
エルフだ。頭の上に生えた花と満面の笑顔が特徴的なエルフの女。背が低く笑顔と合わさって童女を思わせる。木肌は白に限りなく近く、頭の葉は緑が豊かに生い茂り全身を覆っている。
「お久しぶりでエフェメラ殿、相変わらず花がお綺麗ですね」
敬語をもって森神エフェメラに対する戦神バーミリオン。
元が軍人であっただけに目上の者に対して敬語を使うことに彼は慣れている。
「えへへ、褒められちゃった。ねえ、前の例会でしたお願い考えてくれた?」
「ジラン王国最強の二人組を送りました。エフェメラの森に着いたらこき使ってやってください」
「やった、ありがとうバミちゃん。愛してるよ」
戦神へと満面の笑顔を向ける森神エフェメラ。彼女が頼んだ援軍たちによってエフェメラの森で死闘が巻き起こることになるが、それはまだ後の話である。
森神の次に現れたのは青い着物で長髪の男。刀神アズマであった。
彼は現れるなり腰の短刀を抜き放ち腹に当てた。
「申し訳ございませぬ、お館様!お館様をお待たせするなど、このアヅマ一生の不覚!もはや腹を掻っ捌いてお詫びするしか!」
止める間もなく、アズマは短刀を腹に突き入れた。
そのことにバーミリオンもエフェメラも驚くことはなくむしろ白けたような空気だった。
「相変わらずだね、アズマくん」
「お前の自殺芸、つまらんからな。面白いと思ってやっているならそろそろ止めたほうがいいぞ」
「バミちゃんそんなこと言っちゃだめだよ、アズマくんはすっごく面白いと思ってやってるのかもしれないよ!人の努力を否定しちゃダメ!」
「つまらんというところは何一つ否定していませんね」
腹に短刀をめり込ませたままアズマは話しかけ辛そうに声をあげた。
「いえ、別に笑いを取りたくてやっているわけではござらんが……」
「……? じゃあなんでやってるのアズマくん?」
「真剣に詫びとしてでござるが!」
「百年来の付き合いだけど本気でお詫びしてたって初めて知った!」
「もしも死なれたら後片付けとか、遺族への連絡とか面倒だろ。それで詫びになるって和国にはわけわからん風習あるな」
子供のように感情豊かな森神エフェメラにどこか常人とはずれている刀神アズマ。
信者たちには見せることがない神々の一面、あるいは素顔。
楽しそうに過ごす三人の前に体が巌で出来た背の低い男があらわれる。彼があらわれるとバーミリオンが上座の席を薦めた。
「どうぞガンガルドの兄者」
「うむ、それでは例会を始めるぞ」
炎神の言葉にその場に集った他の神たちは怪訝な顔をした、その疑問をバーミリオンが言葉にする。
「ガンガルドの兄者。ゼノン様がいらっしゃらないのはいつものことですが、リドマンもまだ来ていませんが?」
「リドマンからは今の状態で国を開けることが出来ないから今回の例会は欠席すると連絡が来た」
「何があったのですか?」
「どうも、シェイプシフターの侵入を許したようだ」
騎士国の現状に戦神は露骨に嫌そうに表情をゆがめ、森神は驚き、刀神も双眸を厳しくした。
「それは厄介ですね……対処可能なのですか?」
「お前の国の対シェイプシフターの専門家に力を借りるために手紙を出したと言っていたぞ」
「凄い偶然ですね、ちょうどそいつはエフェメラの森に行く途中で騎士国に寄っています。あいつならよほどでない限りは問題なく解決できるかと」
「バミちゃんそれってさっき言ってたジラン王国最強の二人?」
「ええ、そうですよ。そうそうこの二人なんですけどね実は男女でしかもくっつきそうな関係でしてね興味ありますか?」
バーミリオンの言にエフェメラとガンガルドが食いついた。
「何それ聞きたい!」
「うむ、興味があるな」
「いいでしょう、あれは今から十年前までさかのぼります……」
神々の会合。
あまりにも高尚そうな響きとは違い実態はこんなもんである。




