3.神官少女と女神。
今回は、セシリア視点(*‘ω‘ *)
セシリアは、街外れの森にある神殿に足を運んでいた。
その理由というのも、彼女たちが崇拝する女神アルテミシアが、唯一人前に姿を現わす場所であったからだ。この世界において、神と人間の距離は案外近い。
認められた神官が声をかければ答えるし、なんだったら姿を見せるのだ。
そして、今回は女神の方から呼び出しを受けたわけで……。
「それで……? あの人は結局、外界の人間だってこと?」
「えぇ、そうよ。生まれも育ちも、こことは別の世界」
現在、セシリアは神殿にてアルテミシアと接見していた。
人気のない空間。二人きりで言葉を交わす彼女たちの距離感は、いうなれば気心の知れた旧友同士といった雰囲気だ。
その理由はセシリアの生い立ちにあるが、今回は割愛。
アルテミシアが長い紫の髪をなびかせつつ、羽衣を寄せて口元を隠した。
そして、青く鋭い眼差しを神官少女へと向ける。
「あの人はね、少しだけ特別なの」
「特別……?」
「えぇ、そうよ」
女神の言葉にセシリアは眉をひそめた。
すると、そんな彼女に対してアルテミシアは――。
「最初に断っておくけれど、彼の記憶を操作したのは私よ」
――そう、語るのだった。
「それは、どういうこと……?」
さすがに少女が訝しむと、女神はくすくすと笑って答える。
「これはまだ、少し先の話になるわね。――ただ、彼は元の世界で『心に大きな傷を負った』の。それはもう孤独に包まれて、自ら命を絶つような、ね?」
「…………………だから、記憶を曖昧に?」
「結論を言えば、そうなるわね」
アルテミシアの答えに、解せないといった表情を浮かべるセシリア。
しかし、そんな彼女に女神は一つ息をついてから告げた。
「今回、貴女――セシリアにお願いしたいことは一つ。彼のことを見守って、日常の変化をつぶさに報告すること」
「理由は……?」
どこか怒りがこもった声で神官少女が言うと、女神は答える。
「……そう、ね。理由は二つ――」
真剣な声色で。
「世界のバランスを保つため。そして何より、彼自身のためよ」――と。
羽衣で覆った口元に浮かんでいたのは、いかなる表情か。
それを知る者は、誰もいなかった。
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次回、コメディ。