2.黒白の魔女、登場。
今日はもう一話、更新したいかな。
「ふんふふふーん、ふんふふふーん!」
黒白のローブをまとった一人の少女が、鼻歌交じりに街を歩いていた。
右手には身の丈ほどありそうな箒。小柄な彼女ではあるが、それでもその箒の大きさは周囲の目を引いた。そして人々は、小声でこう話すのだ。
「アレが魔女か……」
「噂では、まだ半人前だとか……」
「いずれにせよ、薄気味悪いことに変わりはないさ……」
そんな言葉を聞いたかどうかかは分からない。
少女はおもむろにフードを外して、大きく息をつくのだった。
「いやぁ、久しぶりの街は迷うなぁ!」
次いで出てきたのは、周囲の声をまったく気にしていない言葉。
赤の髪を風になびかせる彼女は、なにやら古ぼけた地図を取り出して、同じく赤色の円らな瞳でそれを凝視した。そして、一つ大きく頷いて言う。
「よし、こっちだな! 待ってろよ、セシリア!!」
口にしたのは、神官少女の名前。
やけに親しげな口振りと、表情に周囲はまたざわつくのだった。
◆
『アンタはとりあえず、ゆっくりしてて。私はちょっと、話をつけてこないといけない相手がいるから……』
セシリアはそう言って、教会を後にした。
残された俺は、ひとまず客間――というのが正しいか分からないが――で、まだ疲労感のある身体をゆっくりと休ませる。しかしながら、あまりにも静かな場所なので暇になってきた。
「ちょっとだけ、教会の中を探索するか……」
そんなわけで、俺はやけに見慣れた教会の中を歩く。
礼拝堂に出るとそこには、煌びやかなステンドグラスがあった。圧巻という言葉が正しいのだろうが、やや威厳に欠けるのは所々に蜘蛛の巣が張っているからか。
セシリアという少女は、どこかずぼらなところがある。
それは、ゲームに出ていた情報から分かることだ。
だけども――。
「どうして、俺は……」
ふと、気になった。
どうして俺は、この世界のことだけ憶えているのだろうか。
元の世界での記憶はどれも思い出せない。名前だって、喉に詰まるような感覚があって出てこないというのに。
「まぁ、いっか」
しかし、考えても仕方ない。
そう思って、俺はまた探索を再開しようとした。
その時だ。
「ん? そこにいるのは、セシリアじゃないよな……?」
一人の少女の声が、入口の方から聞こえたのは。
「え、誰だ……?」
「見たことない奴だな。それに、変な服装だし……」
彼女は小首を傾げながら、しかしすぐに笑って言った。
「まぁ、いいか! まずは自己紹介だな!!」
そして、元気いっぱいにこう名乗るのだ。
「アタシの名前は、マリー・レイン! 街外れの森に住む魔女だぜ!」――と。
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異世界転生って、難しいですね_(:3 」∠)_