竜種の恋~その1~
ここからは基本オムニバス形式にストーリーが語られていきます。
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何もかも、彼から教えてもらったの。
『言葉』
『人間』
『社会』
『国』
『竜種』
そして――
『恋』
前夜の大雪が信じられないほど、空は青く晴れているわ。
氷のように冷ややかな青色を見ていると、ここが建物の内部であるのを少しだけ忘れられるの。
そこら一面を野キクの花が咲いていて、季節によっては新緑に包まれているこの場所も現在は、灰色に風景が閉じ込められているの。
息苦しさは感じないけど、周囲を天井のない高い城壁が張り巡らされいて、顔を上げて見なければ空を見ることはできないわ。
リムノス城内庭園。
元々は病弱で城の外に出ることができない、何代か前の王妃が城内からも季節を感じるために作られた場所。
私はそこにいるの。
四季を感じる事ができるだけでもせめてもの救いとは思う。
でも城壁には囲まれてる。
この場所から動けない訳ではないけど、周囲にいい顔はされないのよね。
だから膨大な暇を持て余すしかないの。
城にある本はあらかた読みつくしてしまったし。
「そろそろかしら……」
呟いて、金色の鱗に包まれた長い尻尾をソワソワと振り続ける。
気づいて、尻尾の振りを抑え込んでみる。
「感情が顔ではなく尻尾にでる。 つまり頭隠して、 尻尾は感情隠さず」
と、変な造語で指摘されて何か気恥しかったのを思い出したから。
結果的にはかなりの日数を彼と共にしていても、会えると思うと最大級の笑みを隠すように結局、尻尾が揺れる。
直後、背中の鱗が急激に熱を持った事に気づき、驚きのあまり飛び上がるかのように体を起こしたわ。
「あっつ!」
「う! うわあああ!」
飛び起きる際に無意識に尻尾を大きく振った時に何かぶつかった気がするの。
何か、ではなく誰にぶつけてしまったかはすぐ分かる。
おそらく彼だから。
だから、名前を呼ぶ――
「タッド」
吹き飛ばされた衝撃で転がり続け、雪だるまのようになってしまった彼に向けて呆れながら呟く。
「馬鹿なの?」
(竜種と人間なのよ)
(私の体は鋭い牙と爪を具え、爬虫類のトカゲの様な顔と見た目でも人間と比べると遥かに巨大な体躯と翼を持つ竜種なのよ)
(その竜種が尻尾を振るえば圧倒的に体躯で劣る人間は簡単に踏みつぶせてしまうの。)
(気を付けてほしい)
(そんなこと望んでないのだから)
「いやいや、 いつもどおりの登場だったら暇そうにしているメグにはエンターテイメントに欠けるだろ? だったらメグが改良してくれた魔導絡繰の性能を見るのと火球をぶつけて驚かしてみるっていうのとなんとなく寒そうだったメグを温めるという意味があって。 つまり、 一石三ドラゴンってわけ!」
「なにが一石三ドラゴンよ……また変な言葉を作って……」
タッドが手に持つ、ナイフの様な魔導絡繰は火球を放った衝撃で煙を上げている。
(そんなつもりで改良案出したんじゃないんだけど……)
ズボっと雪だるまから顔を出し、少年と呼ぶには成長しすぎている。
王族らしく上等な外套を羽織ってはいるが、人懐っこい少年のようにニカっと破顔するタッド。
私は呆れたように言葉を発してみたけど、胸中では別のことを呟いていたの。
(ごめんね。 そんなつもりなかったの)
(ケガがなさそうでよかったけど……)
(ないよね? 大丈夫?)
(ところでエンターテイメントってこれ普通にいじめじゃない?)
(たしかに竜種の鱗は魔導を通しにくいけど熱いに決まってるの)
(そんなことも分からないの?)
(え? こういうのって黙認してたらいじめに発展するのかしら?)
(人付き合いっていうかドラゴン付き合いすらなかった私には難しい問題なの)
(毎回されたらちょっと辛いし……泣いちゃうかも……)
(でも、 でも)
(しゅきぃ)
「ぴえん。」
とでも、うっかりこぼしてしまいそうな状況に私の心は忙しく乱れたの。
そんな私をよそに。
「メグ!」
いつもと変わらない様子で彼は続ける。
「おっはよー!」
リムノス王国、通称からくり王国の現からくり王の三男。
私が恋している男の子。
それがタッドだ。
ニコッとするとき目細めるのかわいい。
尊い。
しゅきぃ
「……おはよう」
人間よりもずっと大きい顔を子供のようにプイっと背けるその様は滑稽かしら。
マーガレット、私の名前。
タッドは私をメグと呼ぶ。 しゅきぃ。
人間に恋をした竜種、それが私。
ところでムッとした感情を出しているのは理由があるの。
さっきの悪戯にはもちろんだけど、タッドがもう一人連れているのが見えたから。
せっかく二人きりだと思ったのに。
「あ! あとこいつはアル! なんか別の世界から来たんだって!
寂しそうな奴だからさびしんぼのメグに紹介しとこうと思って!」
(寂しいのはタッドが傍にいない時だし……)
さらり、と流すには聞き捨てならない表現だけど仕方ない。
タッドにデリカシーとか乙女心を理解させるのは竜種がこの姿のまま人間へ手料理を作るより難しいの。
いえ、タッドに頼まれれば真心こめて作るけど
紹介されたのは全身が鋼鉄で表情のない人形のような兵士。
(リムノスのからくり兵士、 よね?)
(エーテル鋼で作られた彼らに近づくと魔素を吸収されるから魔素で肉体を構成する竜種には気持ち悪いのよね。 だからあまり会ったことはないの。)
(ていうかずっと黙ってるけど、 あんな適当な紹介で怒ったりしないのかしら?)
(機械兵って感情もなくなるのかしら?)
(あれ? この顔って……)
(黙ってるだけなら来なければいいのに)
(せっかくの二人きりが台無しよ)
アルとの出会いは私の敵意から始まったの。
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