61.早くあの子を
ベネディクトから伝令が届いたとギルバートから連絡がきた。
雨の中、もたらされた手紙にはただ一言、「違った」。
ギルバートとからその連絡を受けたソフィアは心のそこからの安堵に涙が出そうだった。
花花だと思われる葉紅花はまだこの国で生きている。
こちらの準備は整った。あとは花花を早く見つけ出さなければ。
フィルアッシュ・ハワード・・ハワード伯爵家が敵ではないことはソフィアに大きな安心を与えた。
王家とハワードの関係が密接で良好なものならあれこれ考えなくても良いのだ。
ハワードと敵対するのは怖かった。ロイッシュトリアもフィルアッシュもこちらには及びもつかない情報網を持っている。
ハワードがついているなら、ギルバートは大丈夫だ。ゆっくりと着実にハワードに負けない情報網とブレーンを育てればいい。今代の王だってきっとそうしてきたのだ。いや、今代の王が築いたそれがハワードなのかもしれない。
あとは、いまだ国内に潜んでいるであろう葉紅花を探し出すこと。ウォルボートと葉紅花の繋がりはようとして知れないが、ほころびはきっとある。
そして、サットラン子爵の思惑がどこにあるのかも探り見つけなければ。
アイリーン・サットランが葉 紅花なのか。
それを確認するために本気でアイリーンを高官に推してみるのも良いかもしれない。優秀さは折り紙付きだ、不自然なことはない。
アンガスが彼女を「可愛い」と評価したことも気になっていた。花花以外の女性をそう言っていたことをソフィアは聞いたことがない。マグリットと出会った時も、花花かもしれない、といいつつ可愛いという評価はついぞいきいたことがなかった。
もう少し、アンガスとアイリーンの接触を増やしてみるの判別するのにいい材料になりそうだ。
アジデリ鉱山の死体が葉紅花ではなかったことで全てが振り出しに戻った。だからまた、4人で計画の見直しをしなければ。
まず、当面はマグリットの計画のことを第一に進めよう。
あとはアンガスが戻ったら、アイリーンとの接触の件を詰めればいいだろう。
ソフィアはそう考えて窓の外を見る。
外はこのところ降り続いている雨のせいでひどく暗い。
あの二人は、馬で帰ってくるのかしら。と、王都から離れている二人に思いをはせた。
雨はあの日を思い出される。
ソフィアは二人の無事を祈る。