46.彼女とのこと
ギルバートとの茶会の後。
ソフィアは、茶会の招待状をしたためながら幼馴染に思いを馳せていた。
5人の幼馴染の中で唯一の同性の彼女。
小さなころは仲が良かったが、彼女が快進と付き合い始めたころからなんとなく距離ができた。
もともと性格が合っていたとは言えない。その証拠に小学校に上がり、交友関係が広がるにつれ共有する時間は減っていった。中学に進級し快進と花花がつきあいだした頃。男女の区別はついていたが、「幼馴染」というくくりだった彼らが、「男と女」というくくりに入ったことにショックを受けた。
そのまま、花花だけではなく築とも琉揮とも距離ができてしまった。
あの、お祭りの日。
清香たちは成人式以来の再会だった。SNSでのつながりはあったが顔を合わせることは全くなかった。
ソフィアとなった今、清香は花花の考え方も何もかもを知らないことに気が付いた。
花花は前の生の記憶を残しているのだろうか。
快進の手を取りたいと望んでるのだろうか。
これからどんな生を望んでいるのか。
それがわからない。仲の良い友達だったら、理解してあげられるのだろうか。
でも。
懸念されることは多いけれど、根底にあるのは会いたい、という気持ちだった。
会って話がしたい。
会って、その後にはまた別れることになる可能性もあるけれど、彼女がこの世界で幸せに暮らしているという安心が欲しい。
それがソフィアの気持ちだった。
今、花花だという可能性が高いのは葉 紅花だ。彼女の足取りはつかめていない。何が目的でこの国に入国したのかもつかめていない。
敵なのか味方なのかもわからない。
葉紅花かもしれない、疑わしい人物がいる。
サットラン子爵令嬢、アイリーン・サットラン。
アンガスが葉紅花と同一人物じゃないかと疑っている女性。
今できることは繋がっているであろうさまざまな情報を集めて精査することだ。
ソフィアはアイリーンの情報を収集していた。
登城すると必ず招かれるギルバートの執務室でソフィアは子どもたちからの報告をギルバートに伝える。
人払いをしているので、護衛のベネディクトが開いたままの扉の前に立っている。
「子息令嬢は、学園の寮では子爵という身分にも関わらず個室を得ているわ。学園側も優秀な彼女を優遇して中・高位の貴族たちからの苦情を排除しているそうよ。そんなこともあって部屋に入ると出てくることは少ないとの話だわ」
アイリーンが葉紅花だったら個室を与えられたのは幸運だろう。
誰かの思惑が絡んでいるのかもしれない。とソフィアは考える。いくら優秀だとしても、高位の令嬢と同じような優遇処置は行きすぎている。
「・・茶会が楽しみだな。今回は成績優秀者を学年毎に3名招いたんだっけ?」
「ええ。半数が女性でしたわ。ついでに女性高官の登用の道も作りましょうよ。その第一段階の面接をするみたいな感じで」
ソフィアは常々考えていたことを口に出す。
この国の女性の活躍の場は少ない。中央は男性で埋めつくされ、女性は下働きか侍女の仕事しかないのが不満だった。
この国は身分が高ければ高いほど女性は婚姻しか生きる道がなくなる。平民であれば、さまざまな仕事がある。しかし、女性、ということだけで不当に給金を下げられ、女性一人で生きていくことは難しい。
より多くの生きる道を作りたい。
貴族の女性たちは優秀だ。条件の良い婚姻にはさまざまな条件がいる。家の後ろ盾の大きさ、実家の人脈の広さや豊かさ。何より重視されるのはその女性の優秀さだった。
優秀な女性を有することで家の命運が分かれる。
女性は家政ばかりが仕事ではない。夫の仕事を補佐し、先を読み、情報を集め、役立てる。全ては家のために。しかし、それではもったいない。
この国の国力が落ちている今、女性の進出が必要だと感じる。
「まあ、な・・。たぬきがやかましそうだが・・確かに、優秀な女性が多いからな。宝を埋めておくだけではもったいない」
学園を利用して・・とギルバートはぶつぶつと何やら算段しているようだ。
「では、そのような形にしましょう。・・花花でしたらどうしましょう」
「・・アンガスの出方がわからないか?」
頷くとギルバートは、大丈夫だとにこりと笑った。
「あれもだいぶ我慢が効くようになった。自分で言っていたから少しは待てができるだろう」




