第21話 とある日の授業 〜校外学習編-1〜
お久しぶりです。今回は普通に忙しかったので投稿が遅れました。
それは唐突に現れる。日々の平穏が乱されるということは誰にも予期できない。
、、まあ今回はその限りではないが。
まあつまりこういうことだ。
「えー今回から校外学習でーす。まあノリと勢いでどうにかなるんで気にせんでええですよー。じゃーまた明日。」
いつものようにマイペースな先生は「えちょっ」「は?」などの声を華麗に無視して空中に溶けるように消えていく。
「はー帰って寝よう。うん。」
そう言い残して先生は、うん。寝に行ったのだろう。認めたくないが。
、、そして誰も喋らなくなった。
「よし、疲れてるようだから俺はさっさと帰るぞ。」
「そうですね。校外学習なんてあの先生がするわけないでしょうね。色々と手続きとかが面倒らしいですし。まあ気にしなくていいでしょう。ねー速水くん。今日も部屋でおしゃべりしませんか?」
「あー。うん別にいいぞ。」
楽しく語り合う俺とグラス。あのうんちくバトルから体感では3ヶ月ほど経ち、随分と仲も親密になった。
最近はこちらの常識にも若干ではあるが慣れてきて、そこそこ授業も楽しいのだが、、。やっぱりあの先生だ。大規模学校破壊事件の後にもちょくちょくと色々やらかしてはいるが、上級神というものの威光は凄まじく、下級神だったら存在抹消処分を受けるレベルのことをやらかしても何も言われないらしい。
神にも格差社会が、下手をすると人間よりも強固なものがあるのではないだろうか。
「んー。なんとも世知辛い。」
「どうしましたか?」
「いや、ちょっと独り言だ。」
今俺たちは俺の部屋にいる。ある程度俺の魔法の腕も上がってきて、元々いじれるように作られている魔法などなら多少は動かせるようになった。
そうすると今まで見えなかった学校の教室やそれぞれの部屋の魔法が、いかに緻密に組まれ、膨大な計算と構築を重ねたものなのかがわかってくる。
教室と違い、個人の部屋は外界と完全にシャットアウトされており、周りからの干渉にかなりの制限をかけられている。
先生が生徒の安全を心から願っていることの証拠だ。
まあ、先生の行動が、見た目のままの完全なる考えなしな動きではないのがわかってきたのだが、というかわかってきたからこそ、すごく先生が適当な性格なのがわかってくる。
、、、うん。結論が何も変わってないね!
だってー、明らかに壊す前と比べてさ、、直した後の魔法構成が雑なんだもーん。論より証拠ってやつだよ。うん。
話を戻そう。そして、俺は元々魔法の術式に組み込まれていた機能を使って部屋の内装とか家具をいじりに弄って俺好みにしたのだ!
なんということでしょう!
あんなに見窄らしくて木賃宿のようだった部屋がこの通り!!
窓からは陽が明るく差し込み、ベットのシーツは純白に輝いています。雲に抱かれていると錯覚させるような素晴らしいソファーまで!おとこの子のロマンを実現!家の中にもハンモックやテントがあり、秘密基地気分を楽しめます!!
速水くんの嗜好を体現してゲーム機やテレビも完備。そして隠し部屋という誰もが一度は憧れる仕組みもついています!!
、、中は男の子の、前述と違う種のロマンと秘密が詰まっています。(ボソッ)
「まあそんなことはどうでもいいんだ。」
「たまに速水くんって訳のわかんないこと言い出しますよね。」
慣れた様子のグラスが答えた。
「まあモノローグやってたんだよ。物件紹介風にな。」
「はいはい。それよりも校外学習ってどういうことなんでしょうね。先生が校外学習がどのような漢字を使って書くかということを知っているなら、教室の外に行くということはわかりますけど。」
実際のとこどんなんだろーな。
「まあ結論としては結局明日にならないとわからないんだが、、。」
「うーん。それもそうですね。」
「それはいいから魔法のこともっと教えてくれよ。俺、眼術以外はからっきしだからさ。」
「しょうがないですね。」
と言いつつもグラスは頼られて嬉しそうだ。
「えーと、ここの式の意味から続きを、、、。」
その日はいつものようにゆったりと過ぎていった。
次の日。
いつも通りに部屋のドアを開けると、いつもの教室ではなく校庭?というか最初に師匠に飛ばされてきたところに場所についた。
俺らの前でスタン貼ってた先生が大声を出した。
「お前ら京都に行きたいかー!ニューヨークにも行きたいかー!」
「「「「「「、、、。」」」」」」
「いや、そこは答えろよ!」
ビシッと、やけにハイテンションの先生が突っ込む。
「それわかる人少ないぞ、、。」
「というかなんでいつもと違ってそんなに元気なんですか?いつもは先生溶けた卵のキャラみたいに、ぐにゃぐにゃになってますよね。」
俺とグラスが何を言っても今の先生には届かない。
「お前らー!今日はみんなで神の支配する世界に行って社会科見学するよー!」
「「「「「うおおおおー。」」」」」
みんなが叫び返す。
「な!?口が勝手に!」
「は?ちょ、えぇ!!」
「口が勝手に、、。」
「、、んー。ねむ。」
「「「お前は帰って寝ろ!!」」」
さすが上級神と言いたいが、使い方に小物臭が漂っている。
みんなに殴られて吹っ飛ばされていったライトを見て、俺はそう思った。
「そんじゃレッツ校外学習〜!」
やけにハイテンションな先生が指を鳴らすと視界が切り替わった。
「ここって、、。」
「バスの中だな。うん。」
気づくとそこはバスの中だった。しかも修学旅行とかそれこそ校外学習で使うようなバス。
「というわけで私は今から即席で宇宙作るのでちょっと待っててください。そのための然るべき場所。それはやはり長距離バスでしょう。うんうん。」
なぜそうなったのかという質問を押し殺し、俺は先生に問う。
「なんで前からやっとかなかったんですか。」
ぎくっと先生がビビったような気がするが気のせいだろう。本当だったら情けなさすぎて涙が出てくる、、、。
校外学習は哀愁を纏いながら始まった。