第1話 プロローグ
ブクマと評価お願いします。
僕の耳元を、さわやかな風が吹きぬけていく。そこは草原だった。さやさやとそよぐ一面の草、草、草。丈は子供のひざ下程度だろうか。しかし生命力があふれているように見える草原にしては、周りには一匹の虫や動物、はては木までもがなく辺り一面に緑のカーペットが永遠と続いていた。
なぜか幸せな気持ちになる。幸福感に包まれている。不思議と心が満たされるような気持ちになっていた僕は、満足げに息を漏らした。すると前のほう、大体30歩ほど前に女の人が立っていることに気が付いた。僕は前に立つ女の人を見つめた。女性の後ろに日が昇っているため、女性の顔や何を着ているかなどはわからない。しかしなぜか、それが女性であることも、薄く微笑みながらこちらを見ていることもわかる。そう、なぜかわかるのだ。さやさやと風が吹いている。僕は女性のほうに一歩を踏み出そうとした。女性の口が動いている気がする。何か言ってるようだ。僕も声を出そうとして、そして、、、、、。
「、、、っっおい起きろって。」
聞きなれた同級生の声がする。同級生?
「そろそろ起きないとやばいって。」
少しぶぜんとした。なんだ折角いい気分だったのに。この声はなんだ。
「おい、そろそろ起きないと先生くるぞ。」
なに、せんせい?「せんせい」とは何だったかな。「せんせい」、「先せい」、、、「先生」、、、、
、、。
っやばい。
そうだ。思いだした。まずい。今は朝の学活前だ。早く起きないと先生が来てしまう。成績はそこそこのものを取っておかないと将来困ってしまうからな、、、、。
いきなり目の前にチカッと光が横切った気がして、瞼の裏で感じる光の量が変わった。
「いつまでグダグダ寝てるんだーー。おーきーろー。」
急に声が変わった。聞きなれた同級生の低めの声から、まるで子供のような高い声に。耳元で怒鳴られたのか、耳がキーンとする。
僕は目を覚まし、ぼんやりする頭で声を上げた。
「おいだれだよ、うるさいなあ。耳元で大きな声は出すなよって、え?」
気づくとと周りは草原ではなく、真っ白い空間だった。え、真っ白い空間?教室ではなくて?
「?ええええええぇぇえ?ぇぇええ??ぇぇーーー。HOOOOOOOO‼︎!!!!」
頭が真っ白になる。
「っるっさいな。おい耳元で大きな声出すなよ。周りが真っ白でお前の頭ンなかも真っ白だったら、どこもかしこも真っ白じゃねぇか。」
さっき大声を耳元で出した、見知らぬ子どもがいきなり話しかけてきた。髪の毛が銀色で所々に紺色の髪が混じっている。かなり整った顔立ちをしていて、極め付きにオッドアイだった。右目が赤で左目が黒っぽい紺。
つーかそれをお前が言うな、とも思ったが口をついて出たのは違う言葉だった。
「ごめん待ってどういう状況?で、君は誰?というかどういう経緯でこうなってるの?それにここはどこなの?ていうかは真っ白な空間って、、、」
フリーズしていて、役に立たない頭で答える。
頭が混乱しているせいか、疑問が雪崩のように口から出てきた。
「おいおい、まずはちょっと落ち着け、速水勇晤君。」
え?
「なんでお前が俺の名前を知ってるんだよ。」
「俺は”眼”がいいんだ。」
答えになっているような、なっていないようなことを子供が言った。目がキラッと光った気がする。
「まずここはあれだ。えー、所謂おまえの好きなラノベの、あの最初の真っ白な部屋だ。」
とんでもないことを言い放ちやがった。
「は?じゃあもしかして俺って死んで転生しちゃったの?」
「、、物分かりいいな。まあ正確にはお前は死んだんじゃなくて、あの宇宙からお前の存在が消去されちまったんだ。」
お気楽な顔と声で子供は話す。
「宇宙に裂け目ができることは、数百年とか数千年の間隔で、ちょくちょく起こるんだが。いやー、まさか人間がちょうどいるところに、かぶっちまうとはな。」
「、、、てことはその裂け目のせいでおれは存在が消去されちったってわけだ。」
がっくりした声を出した。自分でも意外だが、思ったほど未練みたいなものはない。しかし両親とか仲の良かった友達は俺の死を悲しんでくれてるだろうか。
「あー。お取込み中に悪いんだが、残念ながらおまえの両親だった2人も、お前の友達もどっちもお前のこと忘れてるぞ。」
え?
「もしかして、おれが存在ごと消去されたってそういうことなのか?」
「まあそうだな。」
「まじかよ。本気で何も未練がなくなったわ。」
神はなにか言いたそうだったがそのまま続けていった。
「、、、さて本題だ。お前には俺の手違いで、未知の状況で死んでしまった。ってことでお前にはチャンスをやろう。」
待てよ、もしかしてこの子供えらそうだし、さっきも俺の心読んでる風だったし、この白い部屋にいるってことはテンプレに当てはめると、、、
「すいません。もしかしてあなたは、、、、、、。」
どや顔で子供が言った。
「ああ俺がこの宇宙の神だ。いくらでも敬ってくれて構わないぞ。(どやぁ)」
カチンときた。
「いやいやいや。お前が神ってことは、俺のこともどうにかできたんじゃないの?」
「え、まあできないことはないが、、、、」
「じゃあなんでだよ。なんで俺を助けてくれないんだよ。っていうか神様がいるんだったら、もう少し俺らのことも助けてくれてもいいじゃないか。」
そうだ。今も世界には、貧しい人達や紛争地域で大変な思いをしている人がいる。神様だったら彼らを助けることができるはずだ。と、前の全校朝礼で校長が言っていた。って神頼みかよ校長。
「まあこれには理由があるんだが、俺ら神も何でもかんでも、自由にできるわけじゃない。どの世界のどんな宇宙も生まれた時から背負っている宿命がある。この世界にあるからにはな。それは3つあってな、、、、、。」
自他ともに認める神(笑)が言ったことによると、この世界のルールは大きく分けて3種類あるらしい。
一つ目:この世に絶対はない。
まあ読んで字のごとくだ。絶対ない事も絶対ある事も存在しないとのこと。
二つ目:すべての+の事象とーの事象がつり合う。
要するに、ファンタジー世界でいう勇者と魔王が同時に生まれる、みたいな感じのことらしい。つまり、いいことが起きると、そのいいことと同じ程度の悪いことが起きる。しかし唯一このルールには大きな例外があり、その例外のせいで神様はうかつに人間界に手が出せないそうだ。基本的には+とーは釣り合うのだが神が絡むとこのルールが利かなくなるとのこと。ふつうは釣り合うはずの+とーの出来事が、特にーの出来事が+の出来事に対して多くなりすぎやすくなるらしい。例えば道端に落ちているお金を、人間が拾いやすいように道の真ん中に移動したら、その星の中心の核がいきなり爆発して全員が消し飛びました、みたいなことだ。え、そういうレベルの話?そこでめったに神様は下界に手を出さないそうだ。ただどんなことにも例外はあり、それこそ絶対はないとのこと。しかも結構一般的な抜け道も存在するらしい。誰にでもできるわけではないそうだが。
3つ目:ほかの雑多なルール。
物理法則とか、神様のしていいことのたくさんのルール。代表的なものとしては
神様が宇宙を作るときに自分の宇宙に定めるルールなどである。このルールはかなり自由に決められるかわりに、自分の宇宙の中でしか作用しないらしい。しかしそのルールも完全に自由に決められるわけではないそうだ。
「つまり2つ目のルールのせいで俺を助けられなかったというわけか。」
「まあそうなるな。」
結構しょんぼりしてるふうだったので、俺の溜飲も少し下がった。
「ちなみにさっきから、世界と宇宙が出てきたけど、世界と宇宙って何が違うんだ?」
「ああ、そのことか。世界は広大な空間で、宇宙はその中に浮かんでいる小さな空間のことだ。あれだな、お前が好きだった超ひも理論、あれと似た感じだ。いやー、最近の地球の研究はかなり進んでいて面白い。」
「まじか、あれって本当だったのか。」
まてよ、そしたらもしかして、、、、、、
「ああ、そうだ。お前の思っているように、世界はとてつもなく広いから、お前の知ってる大体のファンタジー風の物語と、ほとんど同じ世界はごまんとあるぞ。」
「なんですとぉぉーーー。」
俺は喜色満面の顔で叫んだ。
そう俺は生きていた頃、超ひも理論という理論を知って気づいたことがあるのだ。
超ひも理論をざっくり説明すると、めっちゃでかい空間があって、その空間の中に俺らのいる宇宙とか、他の宇宙とかがたくさん浮いてるんじゃね?という理論だ。
なんで「ひも」かというとその宇宙(たち?)が細長いかららしい。
まあそれは置いといて、俺が気づいたこととはズバリ、無限に近いほど広い空間の中に、宇宙が浮かんでいるという。
ならば、そこに浮かんでいる宇宙も、めちゃめちゃたくさんあるはずだ。
ということは確率的に、たまたま今俺が読んでいる本と全く同じ世界が存在する確率が1那由多分の1あった場合、宇宙の数が無限にあったらその世界は存在する。それは他の本にも同じように言えるはず、、、!
つまり、結論から言うとあの転◯したらスライムだった件とか、Re:ゼ◯とかと同じ世界がこの宇宙の何処かにあって、そこで本当に本と全く同じの出来事が起こっているのではないか、ということである。
な、俺の好きラノベとか小説とかの登場人物が、本当に生きているかもしれないってわけだ。興奮するだろ。しかし、俺の言ってることがややこしすぎるせいか、理解を示してくれる人はいなかった。(涙)
「はあ」
俺はため息をついた。思い出すと悲しくなってきた。
「さっきから喜んだり、ため息ついたりと、忙しいやつだな。」
神が呆れた顔をしている。
「おい、俺のトラウマ掘り起こしておいて、その言いぐさは、むぐっ」
神がパチッと指を鳴らすと、声が出なくなった。口がパクパクしている。
真面目な顔をした神が真剣な声色で聞いてきた。
「さて、話が脱線しすぎたようだ。本題に入ろう。単刀直入に聞く。おまえには2つの選択肢がある。1つめは天国的なところに行く。2つ目はいわゆるチート能力をつけてやる、もしくはジョブを予め選んでから、転生する。勇者に成りたい、とか魔王に成りたい、とかな。ちなみに記憶はそのままだ。」
もう一度神がパチッと指を鳴らすと、声が出るようになった。
「あーあー。」
声に変なところはない。
「さてどっちの未来がいい?」
俺の答えは最初から決まっている。
「もちろん転生するさ。俺の悲願だったことだ。」
神は少し笑っていった。
「即答だな。」
もちろんだ。
「じゃあどんな力がほしいんだ?お前は何を求める?まあ俺の不始末のせい、ということも踏まえて、基本的には大抵の願いは聞いてやる。この世界を消滅させたい、とか俺を消したい、とかいう願いは聞けないがな。」
ああもちろんだとも。
「、、、、じゃあもう一度聞こう。」
神は言った。
「おまえは何に成りたい?」
一週間に二、三回くらいは投稿したいとは思ってはいますが、どうなることやら、、。
超ひも理論の説明に明らかな不備があった場合はお教えしていただけると幸いです。