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断罪は計画的に

作者: 青木泊
掲載日:2020/02/08

 深く考えずに書きたいところだけ書いてつなげてみた。

 つじつま合わせの後付け設定が多いので(どことは言わない)矛盾点もあると思いますが、スルーして気楽に読んでもらえたら幸いです。


------

誤字報告をいただきましたので、修正しました。

連絡ありがとうございます。

「レイリー。私はお前との婚約を今ここで破棄し、こちらのメルディアを妻とすることを宣言する!」


 大勢が集まる王立学園の卒業パーティー。

 宴もたけなわな真っ最中の、さらに会場ど真ん中。

 濃茶の髪に緑の目をした美男子が、声も高らかに叫んだ。


「貴様のような性悪は私の妻としてふさわしくない!これまで犯した罪の数々は当然報いを受けてもらう。覚悟するんだな。」


 まだ何か色々言っているのをぼんやり聞きながら、私は思った。

 何言ってんだこいつ?と。


-----


 私の名前はレイリー・アルバレム。

 黒髪に青い目、顔面偏差値は多分平均程度。

 アルバレム男爵家の末娘だ。

 現在卒業パーティーに出席しているが、実は卒業生ではなく一学年下の在学生だったりする。

 パーティーは卒業生の親や多数の有力貴族も参加しており、後半は国王陛下も御光来なさる。しかし、生徒の参加は卒業生のみと決まっていた。

 というわけで、私は生徒としてでは無く特殊事情でここにいるのだ。びみょーに目立っててやだなー。


「おい!聞いているのか貴様!」


 と、うっかり物思いにふけってしまった。

 私が『びみょーに目立つ』から『完全な悪目立ち』に進化した原因が、顔を赤くして怒鳴っている。


「失礼いたしました。あまりに突然だったので、驚きのあまり頭が真っ白になっておりました。」

「ふん、白々しい。今ここで罪を認めてメルディアに謝罪するのなら、少しは考えてやらんことも無いそ。」

「はぁ…」


 さっきからうるさい茶髪はエミリオ・ヴォルガード。

 ヴォルガード公爵家の長男であり、次期当主予定。顔良し、性格良し、成績良し、家柄良しと四拍子そろった優良物件といわれている。

 一応私の婚約者なのだが、私ははっきり言ってこいつが嫌いだ。たった今本人が破棄を宣言してくれたので、ありがたいことに『元』婚約者である。ばんざーい(棒)

 そんな元婚約者エミリオは、それはそれはえらっそーに踏ん反り返っている。


 ああめんどくさい。


 私は卒業パーティーという括りでは部外者なのだ。もめ事は避けたいというのに。

 気づけば私たちの周りはきれいに人が居なくなっている。

 無関係な皆さんが、距離を置いてこちらの様子をうかがっていた。

 てか、ヴォルガード公爵来てないのか?止めろよこれ。


 どうしたもんかと悩むが、幸いなことに私の隣にはエミリオより格上の人物がいた。

 この状況でも留まってくれているんだから、何とかしてもらえないだろうか…

 と、隣に目で訴えてみたところ、スッと無言で一歩下がられた。

 止めないから好きにしろ、という事だろう。役に立たねぇな。

 仕方ないので嫌々エミリオに向き直る。


「エミリオ様。ここは卒業パーティーという大事な場所です。そのお話しは今しなければならないものでしょうか?お急ぎでしたら別室に移動を…」

「黙れ!逃げようとしてもそうはいかんぞ。ここにいる皆が証人だ、己の罪を認め罰を受けるのだ!」


 うわぁ、騒ぎを起こすこと自体が問題なのに、自分で逃げ道塞いだよこいつ。


「大変申し訳ないのですが、私は先ほどとてもショックを受けておりまして、お話しをきいておりませんでした。私の『罪』とはどんなものでしょうか?」

「貴様、この期に及んでまだそのような言い逃れをするか!」

「レイリー様、ひどいです。」

「ああ、かわいそうに。私のメルディア。」


 本気で分からないから訊いてみたんだが、エミリオとメルディア嬢?はすっかり二人の世界である。

 メルディア嬢。

 金髪碧眼のそれはそれはかわいらしい、まごうことなき美少女だ。

 ゆるくウェーブした長い髪をハーフアップにまとめ、青を基調としたドレスが大変良くお似合いである。

 しかし、残念ながら見覚えが無い。多分話したこともない相手だ。

 エミリオが名前を呼ばなければ、あるいは二人でイチャイチャし出さなければ、彼女がそうだと分からなかっただろう。


「あの、そちらの方。」

「メルディアです!」

「はぁ、メルディア様。失礼ですが初対面ですよね?私、あなたに何かしましたか?」

「っ!そんな!」

「レイリー!いい加減にしないか!」


 私の言葉になぜかショックを受けるメルディア嬢。

 いったい何なのか?


「ひどいです、レイリー様。」

「お前はなぜそうやって彼女につらい仕打ちをするんだ!」

「質問しただけじゃありませんか。謝罪を求めるというなら、何が悪かったのかはっきり言ってもらわないと。」

「あくまで罪を認めないというつもりだな。」

「ですから、その罪が何なのか教えていただきたいと言ってるんです。」


 さっきから全然話が進まない。


「ならば言わせてもらう。貴様はこのメルディアに様々な嫌がらせをしてきただろう。先日はとうとう階段から突き落とすという命にかかわる行いをした。見過ごすことはできんぞ。」

「…嫌がらせ?」

「とぼけるな!」

「レイリー様、謝罪してくださるなら私はそれで満足なのです。ですからどうか…」


 首をかしげた私に、エミリオが声を荒げ、メルディアは悲壮感を漂わせる。が、全然全く爪の先ほども覚えが無い。


「先ほど申し上げたように、私たちは初対面です。というか、お顔もお名前も今日初めて知りましたが、そんな状態の私が嫌がらせをしたと?」

「そうだ、貴様は私の心がメルディアにうつったのを嫉妬していたのだろう!」

「ひどいですレイ「それは絶対にない。」

「「は?」」


 さっきからひどいしか言わないメルディア嬢を遮って、きっぱりはっきり言い切る。

 二人はぽかんとしているが、さすがにこれは聞き流せなかった。


「嫉妬で嫌がらせなんて絶対の絶対にない。嫌がらせの真偽はいったん置いておくとして、婚約破棄はむしろ喜んで受けるとして。理由が『嫉妬』だけはぜっっっったいにない!」

「え、あの…」


 戸惑っている二人に言い募る。

 何しろ半端に止めるとまた話が進まなくなる可能性が高い。

 被った猫がどんどん剥がれていくが、もうどうでもいいや。


「何度も言うけど私たちは初対面。たった今存在を認識したと言っても過言じゃない。」

「え、そんな…」

「長期間嫌がらせしていた相手なのに、顔も名前も分からないわけ無いだろうに、そんなことも分からないのか。」

「おまっ、口の利き方を…」

「黙れ。」

「「…」」


 今までこんな扱いを受けたこと無かったんだろう。目を白黒させている。

 なかなか間抜け面だ。


「さらに、メルディアを認識してなかった私が、あんたら二人の関係に気づくわけが無い。気づいてないのに嫉妬も何もあるわけが無い。」

「で、でも…」

「噂とか…」

「うわさだぁ?」

「ひぃ!」


 不機嫌全開で睨んでやれば、情けなく悲鳴を上げる二人。

 ちっ、軟弱者が。


「エミリオ。まだ分かってないみたいだけど、私はあんたが大嫌いだ。心の底からどうでもいい。」

「「ええええ!」」


 なぜか大げさに驚く二人。


「もともと噂話の類は好きじゃない。どうでも良い嫌いなやつのどうでも良い浮気の噂とか、興味ないだろ、聞き流すだろ、覚えないだろ。あげくに嫉妬とか…笑いを通り越して気持ち悪い。」

「おま、おま…公爵家に向かって、たかだか一代限りの男爵家が…」

「うわー、それ言っちゃうんだ。あんた本当にバカだったんだな。」

「バっ、バカだと!この私に向かって!」

「私たちが婚約するはめになった事情、全然解ってないな?」

「へ?」


 当然だが、この婚約は私が望んだものじゃない。ついでに私の親が望んだものでもない。

 エミリオが言うように、我が家は一代限りの男爵家。つまりは元平民というか、今でも気分は平民だ。

 本来なら、公爵家と一代限りの男爵家では身分差があり過ぎる。婚姻なんてまず無理なのである。

 なのにそれが成立してしまったのは、いろんな『大人の事情』が絡んだ結果だ。ついでに、うっかりきっかけを作ってしまったのは、私自身だったりするが。


「私の両親は元冒険者で、かなりの手練れだ。二人でドラゴン退治したり、母は倒したドラゴンを材料に魔法薬や魔法道具を研究開発したり、かなり国に貢献してる。それが理由でうちは爵位を賜った。」


 爵位を賜ったのは、私がまだ10歳くらいのころだ。

 野山を駆け回り、父にくっ付いて修行に明け暮れ、とにかく自由に生きていた。

 それなのに、突然の男爵。

 父は王命で頻繁に魔物の討伐に出かけるようになってしまった。


「兄たちは一緒に連れて行ったくせに、私だけ年が離れていたから『お前にはまだ早い』とか言って!研究第一の母と一緒に置いてきぼりを食らったんだ!私だって結構強くなってたのに!一緒に行って思う存分暴れたかったのに!!」

「えー。」

「…レイリー様って戦闘狂だったんですか?」

「失礼な、ちょっと激しい運動が好きなだけだ。」


 とにかく、私は不満がたまっていたし、暇を持て余していた。

 父がいなくともできるだけ修行を続けようと、毎日近所の森に出かけていたのだ。


「ある日、私は森で魔物に襲われている人間を見つけた。無視するわけにもいかないから、成り行きで助けたんだが…それが家出中の王太子だったとか笑えないよなぁ。」

「は?」

「え?王太子??」

「信じられないだろう?でも本当に本物の王太子だったんだよ。街まで送って終わりだと思ったのに、腕っぷしを見込まれて護衛任務なんか押し付けられて、そのせいでおまえと婚約させられて、行きたくも無い学園に通わされて…」

「あはは、『なんか』はひどいなぁ」


 背後から軽いノリの突っ込みが入った。

 さっき止めなかったくせに。


「おっと、失礼いたしました。王太子殿下。つい本音が。」

「おっ、王太子殿下ぁ?!」

「え!嘘!この人が?」


 突然の大物登場にうろたえるバカが二人。

 ついでに遠巻きにしていた観客たちもどよめいている。

 振り返って頭を垂れた先でにこやかーに笑っているのは、先ほど私が横に控えていた相手だ。

 ふわっふわした銀髪に紫の瞳、整った顔立ちに全体的に華奢な雰囲気。

 身分を隠して学園に通っていた、王太子殿下。ディラルド・ウィーロウ・グランディオ様だ。


「ふふふ、君の婚約者は面白いね。」

「たった今『元』が付きました。これで私は『将来の公爵夫人』ではなくなったので、王太子殿下護衛の任務はお役御免ですね。短い間ですが大変な名誉でした。どうぞお元気で。」

「待って、待って、すでに帰ろうとしないで。」


 ちっ、ダメか。

 きびすを返そうとしたが、あっさり止められてしまった。


「彼らに最後まで説明してあげたら?」

「もうほとんど全部言ったんですけどね。」


 もう一度振り返れば、ぽかんとしているエミリオとメルディア。

 まぁ王太子はずっと侯爵家を名乗っていたし、突然のことで驚くのは無理もない。

 え?それよりも問題があるだろうって?しらんしらん。


「じゃあ続きだ…、私は腕っぷしを見込まれて王太子殿下の護衛に任命された。だが、私はそんなものになりたくなかった。ひたすら断り続けたけれど、王家は全く引かなかった。こっちが要求してもいない報奨まで押し付けてきやがって、最上級の嫁ぎ先に公爵家へ嫁入りとか、最上級の教育として学園への入学とか、特例待遇として王家への多少の無礼も許すとか、何もかも私には一切価値が無い。どうでもいい。」

「はっきり言うねぇ、破格の待遇なのに。」

「そもそも、『一代限りの男爵』じゃあ王太子殿下の護衛としては低すぎる。そこを強調して断ったら、『将来の公爵夫人になるからOK』とか謎理論に発展して、あげく母の研究に目を付けたヴォルガード公爵が自分から私の嫁ぎ先に立候補して。もうこっちの主張なんて誰も聞きゃしねぇ…」


 思い出したら泣きたくなってきた、心なしか頭痛もする。

 ヴォルガード公爵は母の研究資金の援助として、かなりの額を申し出てきた。国の発展に助力したという名誉と、将来の当主夫人と王家との繋がりが得られるなら安いものだったんだろう。

 両親は娘を売るようなことはしないと言って、最後まで抵抗してくれた。

 しかし、王家は私と言う護衛と、便利に使える両親がどうしても欲しかったのだ。ヴォルガード公爵が立候補してきたのは渡りに船で、全力で肩入れしてごり押ししてしまった。


「という経緯で、私は渋々婚約してここに入学した。通常の授業を受けつつ、空いた時間は護衛をするということで。」

「学園内は安全だから、護衛なんて本当はいらないんだけどねー。」

「そ、そんなことになっていたなんて…」


 驚きか失意か、その場にくずおれるエミリオ。

 その辺の裏事情は聞かされていなかったんだろう。がっくりと項垂れている。

 下級貴族がのし上がろうと必死になっている。あるいは、私が自分に惚れ込んでいて裏取引で婚約した。もしくは良い気になってる下級貴族の鼻っ柱をへし折ってやろう。

 そんな風に思い込んでいたのかもしれない。

 まぁ同情は全く湧かないが。


「もう一回言うぞ。最初から最後まで嫌々やってる婚約者なのに、どこに嫉妬する要素がある?」

「止め刺しに行くねぇ。」

「でも、じゃあメルディアが嫌がらせを受けたのは…」

「さっきも言ったが、空いた時間はなるべく殿下のそばに控えるようにしていた。嫌がらせだの階段から突き落とすだの、やってる時間があったと思うか?」

「っでも!私が嫌がらせを受けたのは本当です!嘘じゃないんです!」


 メルディアがエミリオに寄り添いながら、悲痛な叫びをあげる。

 顔色は真っ青だし、半泣きだ。だからどうした、というのが正直な感想だが。


「なら正確な時間と場所と受けた被害を言ってみろ、こっちが殿下のそばにいた時間と照らし合わせるから。」

「メルディアが嘘をついていると言うのか!」

「そうじゃないなら真犯人は別にいるって言ってるんだ。そもそも卒業生ではない私がここにいるのに、違和感も持たない考え無しのバカどもが。いい加減にしろよ。ちっとは頭を使えよ。」

「っ、そんな言い方…」

「事実だろうが。私を見つけて深く考えずに思い付きで騒ぎを起こしたんだろう?周囲の人間に気配りもできず、王家主催のパーティーを台無しにして…仮に本当に私が犯人だったとしても、お咎めなしにはならなかった筈だぞ。この後はどうするつもりだったんだか。」

「うぐぅ…」


 もはや返す言葉も無いらしい。

 二人そろって涙目である。見苦しいったらない。


「ふん。納得いったならとっとと真犯人を探すんだな。何を根拠に私を犯人だと判断したんだか…。念のため訊くが、遠目に見た髪の色や服なんて、いくらでもごまかせるのは分かってるよな?」

「「!」」


 まさかと思ったが、どうやら本当にその辺で決めつけていたようだ。

 カツラでも服でも幾らでも替えられるというのに、なんで気づかないんだアンポンタンが。


「いやぁ、小気味のいい啖呵だねぇ」

「事実と私の意見を述べただけです。」

「聞いていて楽しいよね。漫才みたい。」

「漫才は対等にやり取りするものです。これは漫才になっていません。」

「じゃあ僕と漫才する?」

「なんでだよ。しませんよ。…それで、これからどうするんですか?私はこのまま婚約解消させてもらいますよ。この状況で婚約を続けさせるとか、この場の責任を私に求めるつもりなら、王家を見限ります。」

「すごいね、堂々と謀反宣言?」

「行方をくらますだけです。王家を攻撃する気はありません。」


 そろそろうんざりし過ぎて限界を超えそうだ。

 貴族の暮らしに未練は一切ないし、冒険者家業も悪くない。

 家族に多少の迷惑が掛かるかもしれないが、最初から王家相手に私の婚約に反対してくれていた人達だ。まぁ何とかなるだろう。


「そっかー。まぁこの状況については、そこの二人にしっかり罰を受けてもらうよ。」

「っ!」

「そんな…」


 もはや顔色は青を通り越して白くなっている。


「でも、情状酌量の余地はすこーしあるかな。嫌がらせの真犯人に追い詰められての恐慌状態ってことで。真犯人探しは僕も協力するから、真犯人と君たち二人で責任は半々くらい?」

「っ、王太子殿下!」

「お助けくださるのですか?!」

「無罪放免は無理だけどね、まぁ詳しく調べてから状況次第かな。君たちは当分身柄を拘束させてもらうよ。」


 近くの兵にいくつか指示を出せば、二人は寄り添いながら速やかに連行されていった。


「で、婚約解消は当然だよね。さすがに父王も続けろとは言わないと思うし、言いだしたら僕が止めるから。」

「ありがとうございます。では護衛もお役御免ですね。」

「それはちょっと待って、レイリーにはぜひこのまま続けてほしいから。続けてもらえる案を考えるまで待って。」

「私は続けたくないです。」

「…君はもうちょっと不敬罪とか考えた方が良いよ?」

「速やかに逃亡してみせる自信があるのでお断りです。」

「だからそれは困るってー。」


 そのとき、奥の扉が開き、大臣が姿を現した。

 どうやら国王がお出ましらしい。

 その後、ことの顛末を知った国王が私を引き留めるためにあれこれ画策し、逆効果なことばかりしでかすことになるのだが、それはまた別のお話し。

 相変わらず締めが弱い。

 迂闊な行動は身を滅ぼすよ☆

 思い込みでろくに確認せずに決めつけちゃいけないよ☆

 という話でした。

 本当はいらん設定がもっと盛りだくさんだったんですが、削れるだけ削ってこの形に。

 男勝りで口が悪くて強い女の子って良いよね。

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