冬
『冬童話2020』用の作品です。
私は冬。
皆に寒さを届ける冬。
木の葉の色を赤や茶色に染め、稲を実らせ、果実を熟れさせる秋から、太陽を奪い、木々を枯らし、実りを奪い、動物を眠らせる冬。
「もー寒い! これで雨まで降ったら最悪ー」
「え? もう朝? まだ暗いのに……」
「うー、寒ーい。眠たい……」
冬は嫌われ者。
皆を凍えさせ、色を奪い、命さえも奪う冬。
「うわっ、真っ白。夜に雪降ったのか」
「道路と歩道の見分け付かないから、気を付けて歩きなさいよ!」
「あそこのおじいさん亡くなられたそうよ。今年は特に寒かったものねぇ」
それでも私は寒さを届ける。だって冬だから。
昨日は雪を降らせた。辺り一面を真っ白に染めた。今日もまた、皆に嫌われる。
「うぁー! 雪だぁぁ! 雪だるま作ろ!?」
「あら、真っ白。綺麗ね? 心が洗われるようだわ」
「りっか、貴女の名前はね『六花』って言う雪の結晶を例えた言葉から来てるのよ」
たけど、時々優しい言葉が聞こえてくる。
「冬はね、貴方とくっ付けるから、好きなの」
「寒くなると、星が綺麗に見えるね!」
「雪って、何かテンション上がるよねぇ」
嬉しい言葉が聞こえてくる。
だから、頑張ろう。
いろんな物を届けよう。
花が咲き誇り、命が芽吹く春になるまで、ちゃんと冬を届けよう。