プロローグ2
2
学校に着き、僕は早速、自分の席で本を読む。「人間失格」を昨日の続きから読む。物語に浸っていると、ガラガラっと勢い良くドアを開けて、椎名が入って来た。
「おっはよう。」
と朝から大きな声で挨拶をして、入ってくる。その声に反応して、教室にいた僕を除く全員が各々「おはよう。」と返す。まるで椎名は、このクラスのシンボルだと言わんばかりに、全員が返す。グループが違ってでもだ。流石にここまで来ると、何かの宗教の様に感じてしまう。
僕は、また物語に浸ろうとする。この作品も大詰めの部分で、速くどうしても読みたかった。だが物語にまた浸った僕に、椎名が話しかけてきた。
「ねぇ。一条君。」
後ろから声が聞こえたので、後ろに振り返ると、椎名がニヤニヤしてこちらを見ていた。嫌な予感がした。
「何か用?」
「あのさ、その作品さネタばれしようか?」
「は?」
「えっとね。それはね。最後にね。」
「ちょっと待ってえっ!」
今までにないくらいの声を出した。クラスは一瞬静まった。その後、チラホラ笑い声が聞こえた。僕は、恥ずかしくなって下を向いた。頬が熱いし、汗もやばい。少ししてから、椎名の方に目を向けると椎名はまだニヤニヤしていた。
「実を言うと私。その作品読んだこと無いんだよね。」
「……は?」
僕があんなに必死に声を張り、阻止したのは何だった、たんだ。僕は、呆れてしまった。椎名にそして自分に。
「はあ。最悪だ。」
「ごめんね。一条君悪気はなかったんだ。」
と言いつつ、椎名の顔は笑いを堪えるのが必死だった。
「あのさ。謝る気無いでしょ。」
「うん。そうだよ。」
「僕をそんなにからかって面白い?」
「うん。面白い。」
僕はため息をついた。本当に何なんだコイツは。僕は椎名を無視して、また物語の世界へ、入ろうとした。が、椎名は僕にまた話しかけてきた。
「あのさ。一条君。今日の一限目何だか知ってる?」
確か、学活で委員会決めとかだったはずだ。
「委員会決めだったはずだけど。」
「うん。その通り。」
椎名の顔がまたニヤニヤしだした。僕は悪寒を感じた。
「それで一条君は、図書委員になりなさい。」
「……は?」
「私も一緒になるから。」
「ちょっと待て、何で僕が図書委員になることが決定しているんだ?」
「それはね。私と仲良くなるためです。」
椎名は、誇らしげに言った。僕がおかしいのだろうか。全然話しについていけない。いや、どう考えても椎名の方がおかしい。多分椎名は思考回路がおかしいのだろう。
「はぁ。君はさ。本当にこの世のすべての人とおトモダチとやらになる気?」
椎名は、少し考えた素振りを見せた後、答えた。
「うん。私はなれると思う。」
「どうして?」
僕には、分からなかった。椎名の考えていることが、おトモダチの意味が。僕は、今まで友達というのは、何とも感じていなかった。強いて言うならば、僕の価値を示すものとして捉えることもあった。それなりの友達といれば、自分はいじめに遭う事さえ無いし、ある程度人間関係では困らない。でも椎名の言うおトモダチというやらは、何か違ったものだと僕は感じた。
「うーん。そうだね。」
椎名はまた少し考えているようだった。そして何かをひらめいたのか、椎名は、手を合わせて、顎の下まで持ってきて話してきた。
「だからさ、一緒に図書委員になってよ。そうしたら理由を教えてあげるよ。」
椎名は、満面のドヤ顔だった。少しイラつきを覚えたが、承諾をすることにした。
「いいよ。なってあげる。」
「本当に!」
椎名の顔は、満面のドヤ顔から満面の笑顔になっていた。椎名は、「それじゃ。よろしくね。」と言い残して席へ戻って行った。
僕は、また本の世界へ浸ることにした。
一時限目が始まった。どんどんと委員会の委員が決まっていく中、遂に図書委員の番になった。椎名の方へチラッと目を向けると、ちょうど目が合った。椎名は、「手を挙げてね。」と言わんばかりのニコッと笑顔でこちらに合図した。僕は、最後の最後までやるか迷ったが、結局手を挙げた。
これで僕と椎名は、一緒に図書委員になった。




