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三話 白銀赤目メイドガール


「伏せてください」


 その声で、体の硬直が解けた。

 即座に片膝を地面に付き、頭を低くする。

 頭上で金属の重い音と、狼のキャウンという鳴き声、液体の飛び散る音がした。

 視界いっぱいが地面なので、緑色であろう草を黒い液体が染めてビビる。うぉ、狼の血。

 二体が地面に落ち横たわる軽い音に、頭を上げる。

 すると、いつの間にか俺の正面に少女が立っていた。


 思わず、狼の群れに囲まれていることを忘れた。

 俺の正面に立っている少女があまりにも神秘的で、綺麗だったから。

 白銀色の腰まであるツインテール、紅の瞳。

 先程の金属の音は、彼女の周囲に漂う鎖が元だろう。

 鎖はまるで意思があり、主人に従うように彼女の周りに漂っている。不思議な現象だ。

 月明かりに照らされた白銀色は清らかに光って見える。

 鮮烈な紅の中に、驚きに染まった俺の顔が映った。


「………綺麗だ」


 俺たちを取り囲んでいた狼が、数歩退く。

 仲間を二体落とした彼女を警戒しているのかもしれない。

 しかし、ただ畏れているようにも見える。

 彼女は視線を左右に振ると、片腕を軽く上げた。

 意思を持った鎖が勝手に動き、先端の刃物を閃かせる。

 威嚇とも言えるその動きに、狼が大きく退いた。

 最も近くにいた一匹が身を翻す。

 そうすると、他の狼もそれに従うように身を翻し、暗い森の中に消えていく。

 俺の足元で倒れていた狼二匹も、きゅうんきゅうんと鳴きながら、よちよち歩いて暗い森へ向かっていく。結果的に、俺と謎の美少女だけがその場に残った。


「………大丈夫ですか」


 芯の通った、しかし女の子らしい声が淡々と言葉を紡ぐ。


「ありがとう、助かった」


 俺はよいしょ、と立ち上がり、改めて少女を見た。

 俺より少し背の低い同年代くらいの彼女に、人形という言葉が思い浮かんだ。

 さらりとした白銀色の髪、陶器のように白い肌。

 顔立ちは可愛らしい部類に入る。正直言って好みどストレートだった。

 彼女の服装は月夜の森にそぐわないというか、昼の森にもそぐわないというか、そもそも私服にするとおかしい。フリル付きの、実用性の低いクラシカルメイド服。

 膝下まであるスカートの裾からは、編み込みのブーツが覗いている。

 彼女は鎖に目を向け、黒のグローブに包まれた指先を鎖に触れさせた。

 パキン、という高い音と共に、鎖が弾ける。

 鎖は光の粒子となって砕け散り、地面へと落ちていく。

 それを見届けた紅の瞳がこちらを向いて、変に緊張する。

 白銀の髪に紅の瞳。アルビノ………だっただろうか。

 生まれて初めて見たが、不気味という感じはしない。どこまでも綺麗に感じた。


「貴方は――――」

「………?」


 彼女の薄い唇が動く。

 が、すぐ閉じられて、首を傾げた。


「貴方は、何故こんな時間にこんな所にいるのでしょうか」


 そっくりそのまま返したい。

 何故女の子がこんな時間に夜中の森に居るのだろう。


「えーっと、散歩?」

「散歩ですか」

「すみません、自分でもよくわからない内にここにいました」


 紅の瞳が細められ、思わずゲロってしまった。

 これは不審者確定では?

 どうしよう、彼女が不審者速攻通報するガールだったら。


「記憶喪失ですか」

「………どうなんだろう」

「曖昧ですね」


 反射的に謝りそうになって、ぐっと唇を閉じる。

 明らかに疑いを向けられている。疑いでなくても、強く警戒されているのは嫌でもわかる。

 紅の瞳が瞑目する。やがて開かれ、形の良い唇を動かした。


「………夜の森は危険ですから、取り敢えず離れましょう。お話やその他諸々は落ち着いた場所でゆっくり」


 メイド服の裾を翻す。一緒に白銀色のツインテールがふわりと揺れて綺麗だった。

 慌てて竹刀ケースを拾い、竹刀を中へ押し込みながら追いかける。


 森を抜けた先に広がった光景に、俺はただ呆然とするしかなかった。

 クラシカルメイド服の女の子とか大好物です。もちろんミニスカメイドも守備範囲です。

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