名谷陽季〈みょうやはるき〉と火乃浩太〈ひのこうた〉
「...い!」
「おーい!おーいいいー!」
心地いい睡眠の中、騒がしい声が聞こえる
散々聞いた声、目を開けるまでもなく奴、浩太〈こうた〉だとわかる
この照りつける陽よりも暑苦しく迫ってくるその声に
彼はガン無視を決め込むことを決意した。
なにがなんでも無視する、しかしその熱い決心は儚く消えたようだ。
「うぉぉぉぉおおおぉぉぉぉ...おおおおおおおおーーーーーーーいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!陽季〈はるき〉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!!!!!!!」
とてもうるさい。
浩太は構わないと延々と騒ぐ奴だった。
潮の匂いと波の音が鼻と耳をくすぐり眠気覚ましにピッタシだ。
と、海に来ていたのなら彼は思うだろう。そんなはずはない。
彼は夏休みに小学生の頃の友たちと山に秘密基地を作りに来たのだ。
ましてや海のある県ではない。
浩太「やっと起きたなおい!おかしいんだよ俺たち海にいんの海!意味わかんなくね!?海っていっても後ろ見たらジャングルみたいになってるし鳥とか鳴いてるしみんないねぇしぃ!」
陽季「お、俺もわっかんねぇ...と、とにかく皆探すしかない」
浩太「さっきから大声出しても誰も見つかんなくて一緒にいたの陽季だけなんだよ!」
陽季「電話かけよう電話」
浩太「かしけー!」
[圏外]
陽季「圏外だ...」
浩太「けんがいー!」
2人とも砂浜に座り黙りこくる
どうしたらいいのか3分ほど悩んだ末、海沿いを歩くことを決めた