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ゴブリンクイーン



 ゴキッ! という音と共に骨を割る感触が棍棒を握りしめる腕に伝わる。

 その重量と腕に掛かる負荷を裏切らない横薙ぎの一撃はゴブリンの顎を砕く。


「やあああああっ!!」

「ゴギュゥッ!?」

「ギャッ!?」


 まだ致命傷に至っていないが、脳を揺らされて倒れるゴブリンの首を力一杯踏みつけ、もう一体のゴブリンの頭蓋を目掛けて真上から棍棒を振り下ろす。

 頭蓋が割れ、衝撃で眼球が飛び出させて絶命する小鬼。両手で握りしめた短剣を突き出しながら向かってくるゴブリンの一撃を盾で真正面から防いだ。

 いくら子供程度の体格と言えど、その体重は30キロ以上はある。それだけの質量の全速力が生む衝撃に思わず踏鞴(たたら)を踏むが、装備を含めた体重差ならこちらが圧倒的に有利。

 カイルは蹴り倒したゴブリンを足で押さえつけ、絶命するまで棍棒を振り下ろした。途中何度か外して岩の地面に得物を叩きつけ、跳ね返ってきた衝撃に武器を手放しそうになったが、武器は手放さないという基本を意識しながら棍棒を握る握力を強める。


「ゴ、ゴブッ……!」

「あ!? 待てっ!」


 その凄惨な光景に恐れをなした最後の一体は、カイルの隣を通り過ぎて洞窟の外へと逃げ出そうとした。

 だがしかし、すぐに追いつかれて壁に叩き付けられるゴブリン。その子鬼の頭を大きく振りかぶった棍棒による渾身の一撃が頭蓋ごと脳を砕く。

 洞窟を占拠した邪悪な魔物は順調にその命を刈り取られていった。


「良し……! 良し、良し……!」


 血に酔って高揚した気分を、大きく息を吐き出すことで鎮める。

 洞窟探索を開始して既に二時間は経過しただろうか、何度かゴブリンの一撃を受けそうになって危ない場面があったが、Eランク冒険者一人にしては十分なほど順調にゴブリンを退治し、カイルは倒れるように地面に座り込んだ。


「はぁ……はぁ……! さ、流石に、疲れた……!」


 棍棒の振り過ぎで感覚が無くなった手を投げ出すように地面に付ける。

 小休止として水と、やたらと口の中の水分を吸収する小麦が主成分の携帯食料を取り出し、バリバリと音を鳴らしながら咀嚼する。

 硬さはあるが脆く、特に味がある訳でもないソレは、ただエネルギーの補給と腹を膨らませること、そして安さだけが自慢の人気なのか不人気なのか判断に困る一品だ。

 容赦なく口内の水分を吸収して貼り付く携帯食料を水で流し込み、一息ついたカイルは棍棒を見下ろしながらポツリと呟いた。


「棍棒……普通に強いよね」


 アレから何体ものゴブリンを相手に奇襲と撲殺を繰り返しているが、疲労以外が原因で威力が一切堕ちない武器というのは、新米冒険者には非常にありがたい存在だ。

 殺傷能力こそ、きちんと刃を立てた刃物に劣るものの、それらに必要な技術を一切省いて首から上を叩けば十分威力が出る木の棍棒は、意外と性に合っている。


「依頼が終わったら、メイスを買うお金でも貯めようかな? あー、でも剣で戦うのも捨て難いんだよなぁ」


 戦場において憧れを取るか、実用を取るか。ゴブリンに警戒しながら休憩するカイルは実に悩ましい選択に心を揺さぶられていた。

 生き残るためにはどちらを優先させるべきかは理解できるが、《白の剣鬼》の雄姿を見れば憧れを取りたいと思うのは、どうしようもない男心というやつだ。


「……それにしても」


 そんな少年の悩みはとりあえず放置することにしたカイルは、最後に倒したゴブリンの死体を眺める。

 子供のような体躯の魔物の中でも、一際小柄な子鬼は岩壁にもたれ掛かって血を流しながら絶命している。


「奥に進めば進むほど、小さいゴブリンが増えてきてるんだけど、コレってどういうこと?」


 彼が先輩冒険者から聞いた話でも、そういう習性を聞いたことが無かった。巣には多少外見に違いはあれど、どれも似たような体格のゴブリンしか居なかったということだ。

 他の話を聞いていない冒険者なら理由が分かる者も居るかも知れないが、今持つ情報では確信には至らない。


(でも体が小さいってことは、若いとか子供とか、普通に考えればそういう事……だよね? ゴブリンの巣の中に、子供がいるって事は……)


 嫌な想像が心臓を震え上がらせる。

 この世に数多存在する魔物の生態調査結果など世間に出回る事は殆どないが、有名どころの魔物の生態はその限りではない。

 そんな有名な魔物の一種であるゴブリンは女王と呼ばれる個体の単一生殖によって生まれる魔物だ

 女王から生まれたゴブリンには二通りの生態が存在し、一つは成体になると同時に巣から出て群になって各地を渡る個体群、もう一つは女王と、次代の女王を守る個体群だ。

 ここで問題になるのは、一般的に成体のみで構成された渡りのゴブリンの群れには存在しない筈の、子供のゴブリンがいたということ。


「もしかしてここ、ゴブリンクイーンの巣?」


 ゴブリンクイーン。それが極稀に存在する子鬼の女王の正式名称だ。

 子供程度の体格しかない筈のゴブリンだが女王だけは話が別で、まるで蜘蛛のメスの様に通常(オス)のゴブリンの二倍……約二メートル程の長躯を持つ魔物である。

 この巣が出来たのはごく最近でまだゴブリンの数は少ないが、放置すれば一週間もしない内に大幅に増え始める可能性もある危険な魔物だ。


「あそこが一番奥……かな?」


 依頼書によると、ここは昔の炭鉱だったらしい。

 実際、洞窟の最奥へ辿り着くと、そこには人間の真似事をしているのか、暖簾(のれん)のような布がかけられた採掘場の入り口、その奥から無数のゴブリンの鳴き声が聞こえてくる。

 いずれも子供らしい高い声が殆どだが、耳を澄ませばその中に地を這うような低い声があるのも分かる。

 

(うわぁ~、アレ絶対居るよ……僕ってばまた予期せぬ遭遇(エンカウント)するとか、どれだけツイてないんだ……!)


 洞窟内の状況を考えるに、十中八九ゴブリンクイーンだ。しかも今が繁殖期だと仮定すれば極めて凶暴な時期の。

 

(どうしよう……! 一度戻って報告するべき……? いや、ここに来る途中に居たゴブリンは皆退治しちゃった!)


 知恵ある魔物は決して恨みを忘れない。ある魔物を退治した冒険者が、その魔物の子供を見逃した結果、復讐されたという有名な逸話が存在する。報告に戻っている間に女王が仲間の死体を見て、人間に復讐する可能性は十分あり得る。

 単独で子鬼女王を討伐する危険を考慮しての撤退という選択肢だが、ゴブリンの巣程度から逃げ帰ったと思うことなかれ。

 二メートルほどの魔物が武器を手にし、躊躇いを一切持たずに殺意と共に全力で襲い掛かるのは、ただそれだけでも危険なのだ。

 それが新米の未熟な冒険者だと尚の事。中にいるゴブリンの数も考えれば、無策で突入するのは自殺と同義である。


「それでも、僕が今やらなきゃ……!」


 はっきり言えば自分の身の丈を超えた青臭い発言だが、撤退によって発生しかねない犠牲を考えれば真理でもあった。


(こんな時こそ落ち着いて、どうすればいいか考えろ……!)


 今、自分にできることを改めて確認する。

 これまで慎重に慎重を重ねて進んできたおかげで、剣以外の装備は無事で道具は丸々残している。

 武器のみでゴブリンを倒してきた甲斐もあって魔力は十全。体力も休憩したおかげで不安になるほど消耗していない。

 他に役に立ちそうなのが冒険者セットの内の二つである縄とサバイバルナイフ。水筒は流石に使い道が無いので除外だ

 

(そして現状、一番使えそうなのが魔術)


 今のカイルが使える魔術はたったの四種類。

 光源を作り出し、光量を操作する《フラッシュ》。

 火球を撃ち出して敵を焼き払う初級攻撃魔術ファイアーボール

 単純明快な身体強化魔術フィジカルブースト

 切り傷や擦り傷など軽い怪我くらいならその場で完治し、重症でも応急処置になる《ヒール》。


(数に入れなくても問題にならないくらい魔力消費が少ない《フラッシュ》は何回でも使えるけど、他の魔術は使えてせいぜい四回か五回くらい……逃げる時用の《フィジカルブースト》を使う分を除けば、霊薬を飲んでも七回が限度か)


 ポーチに納まっている魔力回復効果を持つ液体が満たされた紫色の小瓶を一瞥する。

 元々高価な薬の上に金欠気味であることもあって一本しか買えなかった薬だが、場合によってこれを飲まなければならないだろう。

  

(ゴブリンの数が分からないのが厳しいな……とりあえずゴブリンクイーンには致命傷になるまで《ファイアーボール》を当てたいんだけど)


 自分よりも体格のあるゴブリンに接近戦はしたくないが、そう簡単に何発も当てさせてくれるほど相手も間抜けではないだろう。

 ならどうすればいいのか。カイルは持ち得る知識を総動員させながら長考し、やがて決心がついたように顔を上げる。


「……ふぅ……よしっ! ど、どぉりゃああああああああああああっ!」


 緊張を解すように大きく息を吐く。体の震えが収まるのを確認すると、叫び声を上げ乍ら採掘場へ突入した。


「ゴブッ!?」

「ギャギャギャギャ!!」

「ゴォオオオッ!?」


 中に居たゴブリンたちの視線を一身に浴びる感覚を感じる。暗闇の中でも対応できる彼らの眼には、突然現れた侵入者の姿をはっきりと映し出しているだろう。

 誰の眼から見ても無謀にして無策な特攻。しかしこれは紛れもない奇襲だった。


「《炸裂》!」


 腕で目を覆い隠して短く唱える。

 そのたった一節の詠唱により、マッチの火ほどの僅かな光を放っていた光球が、洞窟全体を照らし出す太陽の如き閃光となった。

《フラッシュ》は魔術師が一番初めに覚える初級魔術だ。その使い道は主に洞窟など暗い場所の探索だが、その真価は光量の強弱に限度が無いという一点。

 

「ゴォオオオオオオッ!?」

「ギャギャ!?」


 暗い場所が慣れた状態を狙った瞼を透過する強烈な発光。暗闇の中でも目が見えるというだけで、決して視力が弱いわけでは無いゴブリンたちは堪らず目を抑えてのたうち回る。


「《発火・球形・投射》!!」


 三節の詠唱によって撃ち出された火球、《ファイアーボール》が胸を布が覆い隠した巨大な子鬼、ゴブリンクイーンに直撃し、肌と毛が焼ける匂いが採掘場に広がった。


「ギャアアアアアアアッ!?」

「《発火・球形・投射》っ!!」


 視界を潰され、更には灼熱で体を焼かれて錯乱するゴブリンクイーンに走り寄りながら第二射を放つ。

 生きたまま焼かれる苦痛に苦しみもがく子鬼の女王の頭に向かって、両手で持った棍棒を力一杯振り下ろした。


「よし! 次っ!」


 メキリという、確かな手ごたえを感じたカイルはまだ視力が回復していない他のゴブリンの頭を棍棒で殴り、遠くにいる子鬼は火球で焼き払う。

 

「《フラッシュ》……! 洞窟って聞いて練習しておいて良かったぁ!」


 四発の《ファイアーボール》で四体のゴブリンを焼いたところで魔力回復の霊薬を飲み干す。

 運動中に液体を喉に流し込んだことと、数種の霊草を混ぜて作った猛烈な苦みが相まって吹き出しそうになるが、口と鼻を抑えてなんとか胃に収める。

 視力が回復しない内に手早く討ち取っていく。そこには赤子も子供も関係なく、魔物の復讐の芽は確実に摘む。

 魔物を子供だからと見逃すのはバカのすること。これが冒険者たちから話を聞く内に確信した、魔物との戦いの鉄則だ。


「これで、全部だよね……?」

  

 採掘場に血脂と、血肉が焼ける悪臭が充満する頃には、視界には倒れ伏すゴブリンの死体しかなかった。

 魔力は残り緊急時に使用する身体強化をギリギリ一回使える程度。満身創痍で汗と泥に塗れた姿だが、それでも単独のEランク冒険者には輝かしい結果と言えるだろう。


「……あ、これって」


 勝利の雄叫びを上げる気力もないまま、ふと採掘場の隅に眼を向けると、打ち捨てられた茶色混じりの白色が見えた。

 それは人の頭蓋骨だった。大きさから見て恐らく子供の頭蓋。ゴブリンに限った話ではないが、食人種と呼ばれる魔物は肉の柔らかい女子供を狙う傾向があると、カイルは聞いたことがある。

 この骨は間違いなく子鬼共の被害者なのだろう。ここで見つけたのも何かの縁、せめて外に持ち出してちゃんと埋葬してやろうと人骨の元に歩み寄った。


「ゴォオオオオオオオオッ!!」

「なっ!? うわぁっ!?」


 しかしその時、採掘場に怒号が響き渡る。

 その音源はゴブリンクイーン。火球を二発も受けて全身に火傷と片目を焼かれるという重症を負い、頭に渾身の一撃を食らってもまだ生きていたのだ。

 木こりが持つような大きな斧を横薙ぎに振るった一撃を咄嗟に棍棒で防ぐが、斧の重量と女王の膂力が生む勢いに負けて棍棒が弾き飛ばされてしまう。


「ギャギャギャギャギャ!!」

「くっ……!? あ、危な……っ! ひぇぇっ!?」


 地面に落ちた棍棒に目を配る暇も与えず、女王は渾身の力で斧を振るい続ける。

 瀕死の体であるにも関わらず異様にも見える速さと力。死の間際、子を殺された怒りも相まった火事場の馬鹿力だ。


「や、やってやる! ここでお前を倒すっ!」


 ギラついた髪と同じ茶色い瞳でゴブリンクイーンを睨む。

 加虐ではなく憤激を瞳に宿した子鬼の母を前に、脳内物質が大量に分泌され興奮し切ったカイルが選んだのは、逃げではなく闘争だった。

 とはいえ、その手に頼りの棍棒は無い。身体強化をしてもサバイバルナイフで斧を相手に攻めきれるとは思えない。

 興奮状態にあって変なところで冷静な部分を残している新人冒険者は、ゴブリンクイーンから必死に逃げながら知恵を絞る。

 火球はもう撃てない。今の魔力では身体強化もたかが知れている。サバイバルナイフはリーチで圧倒的に負ける上に切れ味も悪い。


(それでも何かあるはずだ……! まだ思いついてない、もう一つの活路が……!)


 発想と思考の破棄を何度も何度も繰り返す。すると、一つだけ女王に止めを刺せる方法を思いついた。

 カイルはポーチに手を入れ、その武器の感触を確かめる。


(大丈夫……! 落ち着け……!)


 斧を振り上げて迫るゴブリンクイーン。その恐怖を肌で感じながら必死に冷静さを取り戻す。

 カイルを間合いに入れた女王が、怒りに任せて彼に致命的な一撃を与えようと踏み込んだその瞬間。


「《身体・強壮》!!」


《フィジカルブースト》を発動し、ゴブリンクイーンが片足を上げたその時、軸足への痛烈な蹴手繰りが炸裂する。

 女王は前のめりに転倒するが、これだけでは完全に怒りで痛みを忘れているため止めに程遠いだろう。

 しかし、ゴブリンクイーンが腕に力を込めて起き上がるよりも先に、カイルはその背中を強化された脚力で踏みつけ、女王の首に冒険者セットの一つである縄を括り付けた。


「う、ぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「ギャ……!? ゴ……ェ……!?」


 気迫の叫びをあげて全力で首を絞め付けるカイルと、斧を手放し必死に縄を解こうとするゴブリンクイーン。 

 鋭い爪を生やした指が抵抗の痕を首に刻むが、《フィジカルブースト》で高められた腕力で食い込む縄を外すことは出来ず、徐々に顔色を変化させていく。


「ゴ…………ギャ……ェ……ェ……」


 やがて女王の四肢から力が抜け、白目を剥いて泡を吹く。それでもしばらくの間気道を潰し続けたカイルは、ゴブリンクイーンがピクリとも動かなくなるのを確認すると、拳を握り、天へと強く掲げた。




 冒険者ギルドの受付で、亜麻色の髪の受付嬢は見事な営業スマイルと共に布袋と称賛を送った。


「お疲れさまでした! こちらが報酬となります!」


 その硬貨が詰まった袋の重さは、自らの力のみで勝ち取った栄誉のそのものに他ならない。

 子鬼の女王の討伐。ベテランの冒険者からすれば大したことは無い戦果は、Eランクの新米には正に大冒険と言っても良い激戦だった。

 子鬼に苦戦を強いられ、その上幾つかの運が絡んだ泥だらけの勝利だったが、それでも生きて帰って来れただけでも儲けもの。

 理想には程遠いが、今はこの結果に満足し、胸を張って報酬を受け取る。


「ゴブリンクイーンと予期せぬ遭遇(エンカウント)して大変だったでしょう?」

「えぇ、それはもう。本当に死ぬかと思いましたよ」


 とは言っても、単独(ソロ)で冒険に行くなんて無茶は当分したくは無い。今回は冒険者を続けるためのケジメとして一人で赴いたが、仲間が一人でも居れば避けられた危険を何度も味わった。

 その上、ゴブリンの巣を叩くのにかなり入念な準備をしてしまい、労力と対価が釣り合っていないようにも感じる。


「やっぱり新人さんの内はパーティを組んだ方が何かと安全だと思うんですよ。よろしければいい冒険者さんたちをご紹介しますが?」

「それはありがたいですけど、僕Eランクですよ? 欲しがる人います?」

「はい、大丈夫です。何せ新人の訓練を請け負ってくれているAランクの冒険者さんのパーティですから」


 新人冒険者の死は後を絶えない。

 ゴブリン程度なら追い払ったことがある。スライム程度一般人でも倒せる。そんな慢心によって無残に命を散らせた者。

巨大蜚蠊(ジャイアントバグ)を討伐しに行ったつもりが、何故かデーモンと遭遇して対処方法も分からず殺された者。

 冒険者と言えば聞こえはいいかもしれないが、彼らの新人時代の殆どは戦闘の素人でしかない。

 そんな若輩たちが少しでも生き残る可能性を広げる為にも、冒険者ギルドは訓練所の開設と教官の輩出に力を入れているらしく、今回受付嬢が勧めたパーティも、教官を志望した冒険者が立ち上げた新人だらけのパーティらしい。


「どうですか? もちろんパーティを組む以上報酬は分割されますが、危険性は幾らか少なくなりますよ?」

「んー、そうですねぇ」


 もちろん魅力的な提案ではある。しかしカイルにはカイルの冒険のペースと言うものがあるのだ。

 あと一押しすれば首を縦に振りそうな風に唸るカイルに、受付嬢は書類で口元を隠しながらニヤリと笑った。


「それから何ですけど、実は安全を考慮した保険として、そのパーティにもう一人ベテランさんを入れようと思っているんです。カイルさんも知っている人ですよ?」

「え?」


 受付嬢が悪戯な眼差しで告げた名前に飛び跳ねるほど驚いたカイルは、結局彼女の思うがままにその話を受けることとなった。

 

お気に頂ければ評価してくださると幸いです。

カイル君の閑話的な展開が終わり、ようやく次回からロリババアを出せます! 

しばらくの間冒険パートとなりますが、皆様のお付き合いのほど、よろしくお願いします!

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