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子は父には一切似ずに

以前感想で、シャーリィのバニーガール姿がヤバいとあり、何のこっちゃと思っていたら、ニコニコ静画でシャーリィのコスプレ企画があったということを初めて知りました。原作者、何も知らされていませんでした。これも世間を騒がせる某ウイルスのせいだと思います。

投稿された意見の中から着せる服を決めるみたいな企画だったらしく、その候補止まりの中から面白いと思ったものを後書きにでも載せようかと思います。よろしければ、ニコニコ静画共々見ていってください


「ん……っ」


 動きやすい民間学校の運動服に着替えたティオは、硬く軽い木剣を両手で持って、同じ木剣を握るシャーリィに打ち込む。

 飛び込むような勢いを付けた上段からの一閃を片手持ちの木剣で受け止める。カンッ! という軽快な音を立ててぶつかり合う木剣だが、ティオが持つ木剣の切っ先が横に大きくずらされた。


「わわ……っ」

「っと……危ない」


 シャーリィが縦一文字の一撃を横に受け流したのだ。勢いの付いた攻撃を受け流され、その速度を殺せずに地面に転びそうになったティオだったが、その寸前にシャーリィが細い腰に腕を回して、一切怪我することなく再び地面に立つ。

 木剣で受け止められた瞬間、自分の動きを完全に支配された気分だ。パチパチと瞳を瞬かせるティオに、シャーリィは悠然と切っ先を向ける。


「勢いがあるのは良いですね。その上、打ち込みに躊躇いもない。親の贔屓目抜きにしても、ティオには前衛職として必要な要素が備わっています」

「……簡単に防がれたっぽいけど」


 そう不満げに呟きながら、ティオは再び木剣を握って打ち込む。その狙いはシャーリィの膝……身長差もあって狙いやすく、尚且つ当たれば相手の機動力を下げる、実戦においても致命傷にはならないが、長期戦を見越せば有効な一撃だが――――


「……あれ?」

「ですが、貴女は少し素直です。全体像を視界に入れられては、どれだけ早く動いても対処されてしまいますよ」


 再び木剣同士がぶつかる音が鳴ったかと思えば、ティオは痛みもなくシャーリィの履いているブーツを枕にして、仰向けに転がっていた。 


「今……何されたの?」

「何をしたと思いますか?」

「むぅ……教えて」

「駄目ですよ。それを考えるのも、鍛錬の内の一つです」


 跳ねるように飛び起き、シャーリィとの距離を置くティオ。十歳ながらにまるでウサギのような俊敏さに内心少しだけ感心していると、ティオは再度シャーリィに向かって駆け出す。

 それに対して慌てる様子もなく悠々と剣を構えるシャーリィだが、ティオは距離を詰める途中で前に出した右足に全霊の力を込め、第一歩で急加速し、シャーリィに迫る。


「運動会で見せた、私の縮地……以前教えた理屈を元に、その小さな体で体現するとは……我が子ながら素晴らしい才能ですね」


 そんな称賛を聞きながら……ティオは気が付けば、強く握りしめていたはずの木剣を失っていた。


「……?」

「ですが、まだまだ」

   

 木剣はどこに消えたのだろうと慌てて周りを見渡してみると、何とシャーリィの手に先ほどまで手にしていた木剣があったのだ。その事実に、ティオは思わずシャーリィを半目で睨む。


「もしかして……魔術とか使った?」

「いいえ。空手奪刀(くうしゅだっとう)という技術を使いました」


 ズルをしたのかとでも言いたげなティオにシャーリィは苦笑しながら答える。

 東方の島国、商国においては真剣白刃取りとも呼ばれる、素手で相手の武器を奪う技だ。シャーリィは擦れ違いざまにティオの木剣を指三本でつまみ、腕の捻りでティオの手から木剣を奪い取ったのである。


「魔術じゃないの? わたしにも使える?」

「……言っておきますが、教えませんよ? 訓練は大怪我前提の危ない技ですし」

「むぅ」

「そ……そんな顔をしてもダメなものはダメです」


 奪われた木剣を返されたティオは、むくれながら上目づかいでシャーリィを見上げるが、そんな娘の視線は必死で顔を背ける母には届かなかった。


「はぁ……さっきのは当たるって思ったのにな」

「ふふ……剣を振り始めたばかりの子供に当てられたら、流石の私も立つ瀬がありません」


 さて……二人は一体何をしているのか。それは見ての通りの剣術修行である。

 この一年、様々な事件に巻き込まれて、シャーリィも少し考え方を変えた。これまでは何があっても自分が守れば良いと思っていたし、その考えは今の彼女の根本にある。

 だが、自衛の術を身につけるのは良い事だし、身につけた技術というのは決して無駄にはならず、この物騒な世の中においては二人の有益に繋がるだろう。

 

(それに何より……)


 母に倣って冒険者になりたいと、娘たちは言った。心中では娘たちが危険な道を選ぶことを納得はしていないが、それでも最後に自分の道を決めるのは娘たち自身であり、母親が決めることでは決してない。

 だからこそ、シャーリィはソフィーとティオの意思が変わらないことも予見して行動に移す。これまで特に訓練もしたことのないまま、成人と共にギルドに登録し、何も出来ずに死んでいった冒険者たちを何人も見てきた。女の場合、更に悲惨な末路を迎える場合もある。

 そんな結末を辿らせないためにも、シャーリィは自分が伝えられる全ては伝えよう……娘たちが本心から決めたことなら、母として最大限の助力を惜しまないと、そう決めたのだ。

 結局、親が子供にしてやれる最後の事なんてものは、子供を信じて見守ることだけなのだから。


「ママー、ちょっといいー?」

「ええ、今行きます。……それではティオ、私は少しここを離れるので、今の内に休憩をしていてください」

「ん。分かった」


 そう言いながらも木剣を握り、きちんと刃を立てて打ち込む練習用に用意した巻藁を叩くティオに、シャーリィは思わず苦笑する。熱心さもさることながら、休憩中ということも踏まえて、剣筋を確かめるようなゆっくりとした動きで、体力の消耗を防ぎながら行っているあたり、実に筋の良い弟子だ。


(まぁ、我ながら甘い教え方になってしまっているのは否定できませんが)


 シャーリィはカイルやクード、レイアたちに訓練を付けている時の事を思い出した。あちらは現役の冒険者という事を抜きにしてもかなり厳しくやっている自覚はある。怪我は当たり前、一瞬でも隙を見せれば殺す勢いで叩きのめし、対処を経験で理解させる。

 本来戦いを教えるというのはそのくらいしなければならない。相手が親しい相手であろうとも、弟子を死なせないために心を鬼にして妥協なく望むべきだ。

 

(ですが……娘相手だとそれも難しいものですね)


 ハッキリ言おう、仮に娘以外の十歳の子供を剣の弟子に取ったとしても、シャーリィは一日で弟子が夜逃げするくらい厳しくできる自信がある。だがそれが愛する娘たちが相手となると、心情的に凄まじい抵抗があるのだ。

 教える以上厳しくしなければならないのは理解しているが、娘たちをカイルたちと同様に叩きのめすのは、少なくとも今のシャーリィには無理だ。せめて年月を重ねて段階を踏んでいく必要がある。


(そうですね……一年……いえ、二年……三年……五年……十年くらい経って心身共に成熟したら、実戦形式で……)


 自分の子供とは言え弟子に対して非情に徹することができない……シャーリィの当面の課題である。


「お待たせしました、ソフィー。それで、どうしたのです?」

「うん、この魔法陣なんだけど……」


 用意した紙の上に書かれているのは、ソフィーが誰の教えも受けずに(・・・・・・・・・)自ら発案した典型的な初級魔法の術式を実戦向きに改変したものだ。

 前衛職として既に才能の片鱗を見せるティオに対し、ソフィーは持ち前の勤勉さと理解力の速さで、魔術師としての才能の片鱗を見せている。

 本来魔術の術式など、複雑な記号や紋様の配列もあって、その道の家柄の子供でもなければ十歳には難しすぎて理解すること自体を放棄したくなるような代物なのだが、ソフィーは以前グラニアから教えられた魔術を軸に独学で発展、日常で使いこなしつつある。


「どうかな? ちゃんと出来てる?」

「……うん、そうですね。問題ないかと。本当によくできましたね」

「えへへ……やった」


 頭を撫でられて嬉しそうにはにかむソフィーだったが、その表情が不意に曇る。一体どうしたのだろうかと視線の先を追ってみると、そこには木剣を振るうティオの姿があった。


「ティオがどうかしましたか?」

「な、何でもないよ! 気にしないで、ママ」

「とてもそうは見えませんでしたが」

「……うぅ」


 慌てて取り繕おうとしたものの、時すでに遅しと察したのか、ソフィーはポツポツと心情を吐露し始める。


「……ちょっとだけ、ティオが羨ましくて……不安なの」

「羨ましくて不安、ですか?」

「私、まだまだ戦う事ってよく分かっていないんだけど、ティオにはママみたいな才能があるっていうのは、何となく分かるんだ。その分ちゃんと強くなれるって感じるんだけど、私はそういうの無いし……最近お姉ちゃんとしての威厳が揺らいでるから余計に……ね?」


 それは誰もが持ち得る当たり前の感情だ。自分自身が大成していない中で、周囲の誰かが大成すると、自分も同じようになれるのかと不安と焦りに駆られるのは人として当然である。それが妹ともなれば尚の事だろう。

 

「そうですね……ここしばらく訓練を始めてから分かりましたが、そういう面においてティオは私に似ています。大成する予感を感じさせるものがあるのも事実。……ですが」

 

 シャーリィはソフィーが書いた魔術の術式を眺めながら、確固たる自信と共に告げる。


「貴女には、私やティオには及びもつかないほどの魔術の才がある……私はそう感じていますよ」

「……ママ、私を慰めるために適当なこと言っていない?」

「生憎ですが、私はこの手の世辞は言わない性分です」 


 事実、シャーリィは心にもない世辞を言ってなどいない。なぜなら――――  


(冒険者たちの中でも半数以下しか理解していない、無詠唱での発動術式を理解する子供に才能が無い……とは口が裂けても言えませんしね)


 実戦における魔術は、一に理論で二に実践。立ち回り以前に術式の内容を正しく理解しなければ発動すら出来ず、極限状態でも術式を正確に思い返せる精神力が肝要。なので実際に出来るかどうかは話は別なのだが、そもそも無詠唱の術式は詠唱有りの術式と比べて更に複雑なので、魔術師を始めとした後衛を専門とした……その中でも熟練した者以外は殆ど理解していない。

 基本となる術式に加えて、専用の術式を何十と加える魔術の奥義の一つ。それをありふれた初級魔術とはいえ、無詠唱の術式まで完全に理解してしまうとは想像もしていなかった。

 

「実を言えば、私はカナリアの師事を受けて魔術を覚えたのですが、あれほどの魔術師から事細かな解説を受けながらも、無詠唱の術式を完全に理解するまで二月ほど掛かりました」

「え? そうなの? 私は何となく理解できてたんだけど……」


 自分がどれだけの才覚を発揮しているのか、それをいまいち理解できていない様子のソフィー。


「自信を持てと言っても、実感が持てなければ納得は出来ないでしょう。ですがソフィーもティオも魔術や剣を習い始めたばかり……不安になるのも、自信を持つのも早すぎる。将来に対して不安を抱くのは、今しばらくは研鑽を積み、自分と周囲を比べてからでもいいでしょう。その後どうするのかを決めるのは、それからでも遅くはありません」

「んー……ママがそこまで言うなら」


 経験則的には、まだ素人の域にしか居ない自分が才能がどうとかを悩むには早すぎる。それを聞いて少し悩みの晴れた笑みを浮かべるソフィーを見て、安心を与えるように微笑みを浮かべるシャーリィであった。


最終的には赤面しながらバニーガール姿を緋賀さんの神画力で披露し、数多くの読者様のテンションを上げたシャーリィですが、候補の中にはこんな面白いのがありました↓


・エビフライ←マジでありました。

・旧スク水着

・海苔

・ふんどし

・太巻き

・布切れ

・娘で大事なところを隠す

・貝殻

・唐揚げ棒

・カキフライ

・カルボナーラパスタ

・ボンレスハム

・触手

・荒縄

・絆創膏

・園児服

・裸

 その他にも色々と面白いのがありました。選ばれるのが一つだけというのが非常に残念なくらいです。

 ていうか、コスプレ企画なのに食い物が混じっているのはなぜでしょうか。最後のに至っては服すら着ていない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 食い物は、そのゴニョゴニョ……(*´艸`*)
[一言] ニコニコ漫画> comicコロナ>元貴族令嬢で>最新話 確かにヤバいですね
[一言] どう調べたらそのイラストが見れるんや! 見たいのに見れないジレンマ ……ウワァ───( ゜д゜)───ァァ!!!
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