話し始めよう、物語の続きを。
開闢。
切り開き、二つに分けることである。
かつて世界は一つ、《混沌》から生まれたという。
そこから二つに、《光》と《闇》だとか、《天》と《地》だとかに分かれ、それらを礎に世界が形創られたとかなんとか。
俺、路木ハルトは《鱈水沢高校》の一年生。
ちなみに得意教科は国語。歴史は苦手である。
苦手ながらに、努力してようやく、古代の神話、特に北欧神話の基礎の基礎を覚えた。
大まかな流れはこうだ。
長年に及ぶ世界間戦争の果てに和平協定を結んだ神々は、芸術などの文化を快楽として暮らしを営んでいた。
そんな神々のうちの一人、ウートガルザ・ロキはいたずらを文化とし、それで快楽を得ていた。
彼のいたずらは最終的に善い成果をもたらす為、神々は最初、それをやむなく黙認していた。
だが、そのうちに《いたずら》は過激になっていく。
神々の命を奪うまでに至った為に、神々はロキを幽閉した。
だが。
まるでこうなることを予測していたかのように、ロキに召喚された巨人たちが、神々を襲い始めたのだ。
それが、最終戦争である。
結果として、神々は敗北し、世界は水底へ沈むのだった。
俺は数ヶ月前に旅をして、このロキと同じ行動を取りかけた。
記憶を失い、犯罪者グループ《ムスビ》の主張とされた俺は、《ウートガルザ卿》としてこの世界を恐慌に陥れかけたのだ。
ある少女の命掛けの説得により目を覚ました俺は、どうにかこのロキのように世界を滅ぼすまではいかなかったが。
まあその話自体は、この物語ではさほど重要ではないのだが。
旅を終え、数ヶ月間はずっと裁判にかけられていた俺。
証拠不十分にも関わらず裁判は俺には不利だった。結局、裁判官は世間の目に怯え、ご機嫌伺いをするのみだったからだ。
精神鑑定、情状酌量された末に釈放となったが、世間の目は未だ冷たい。
これはそんな、無実の罪を精神的に背負わされた俺の、過去と未来が絡み合う物語である。