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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
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『サイシン』 4


「『シキョウ』と名乗ったのか、その男は」


 僕はあの店での食事を諦め、他の店から買って来た物をコクピットの中に持ち込み、それを食べ終えてから、ソーマにシグナルさんの連絡を取り次いでもらっていた。


「はい、そう言ってました」


「彼の噂なら聞いた事がある。軍の上層部に近い場所にありながら、その任務の大半は暗殺や殺し、つまり汚れ仕事ばかり。しかも、その部隊に所属するものは全て殺人狂で構成され、違法な手段で入隊させ、施設軍隊のようなモノを組んでいると聞く。それに『ユアン』、彼女の方も少しは聞いた事があるが、あまりいいとは言えない性格のようだ」


「激高し易い事ですか?」


「それもあるが、WFダブリューエフの事を大衆の前で話した事も問題だ」


「やっぱり、ハウンドソーサリーの事は話さない方が良いんですか?」


「ああ、そんな事は止めておいた方が無難だろう。ハウンドの事は権力者、その上位の者ならば知っている事で、それを狙っている者も数知れない。もし、そんな連中に君がパイロットだとバレたらハウンドよりも君を捕えようとするだろう、その後が、どうなるかなんて考えたくもない事だ」


 彼の口調には異様な重さがあった、それは僕に想像も出来ないような事なのだろうと思えた。

 

「そう言う訳だから、あまりハウンドの事を大衆の前で話すのは控えた方が君のためだ」


「……分かりました」


 シグナルさんはモニターの向こうで姿勢を正し、


「それよりも、『トウテツ』に対抗する手段は何か考えつきそうか?」


「それが……」


 いまハウンドが出来る事は、レーダー探知、ステルス、そして効果の薄いバリアのみ。

 つまり、


「打つ手なし、か」


「はい」


 シグナルは口元に手を当て、


「この前言っていた杖について、なにか分かった事はないのか?」


 僕は首を横に振る。

 杖を見たときからずっとそれについてハウンドのAI「ハウンド」に尋ねたのだけど、答えは毎回「NO」だった。


「たぶんなのですけど、チャージが終わればあの杖が何なのか分かるとは思うんです」


「しかし、あの場所に行けばまたアイツと戦う事になってしまうな」


「ええ。だけど、それしか方法がないと思います」


「……分かった。君がそういうのならば、こちらは君に賭けるだけだ。道筋は最善の場所をこちらから送らせてもらう」


 ありがとうございますと、頭を下げる。


「いいさ、こちらとしても君に頑張ってもらうしかないからな」


 そういうと回線が切れた。



「ハウンド、修理完了までの残り時間は?」


『四分三十二秒後に終了します』


 あたりは薄暗くなり始めている、この中でなら黒いハウンドソーサリーは目立たず行動できるはずだ。

 ピピッ、とPDAが鳴った、ソーマからメールが届いた、そこにはこの周囲の地図と、目的地までのルートが記された矢印が書かれていた。

 怪我の功名なのか、この場所から目的の公園まではまっすぐ一直線に進めばいいようで、その間に建物もなかった。ステルスを使って移動すれば、誰からも見られる事は無さそうだった。


「センサーON」


 周囲に人の姿はないようだった。


「ステルスは大丈夫、機能してるな。よし!」


 操縦球に手を添える。


「行こうか、ハウンド」


 ハウンドが木々の隙間から立ち上がる、木にとまっていた鳥が慌てて飛び立っていた。


「進め! ハウンド!」

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