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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
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『サイシン』 2


「ここでいいかな?」


 謎のロボットとの戦い、というか逃走の後。街から少し距離のある森の中にハウンドを座らせた、あんあのが居るのではステルスは外せそうになかった。


「ハウンド、状態を教えて」


『左肩部損傷、可動に一時的な影響あり』


「修復までの時間は?」


『自動修復機能利用で、60時間必要』


 ハウンドは自己修復機能があるのだけど、どうしても時間が必要になると理解出来てる。


「それにしても、60時間か」


 手元に置いた袋の中を確認する、中にはサンドイッチが入っているのだけど。


「さすがに、足りないかもな」



「やっぱりか」


 水はたくさんあるからどうにかなったのだけど、食料はもうなくなってしまっていた。


「ハウンド、あとどの位の時間が必要?」


『残り、20時間と13分です』


 20時間、一食ならば食べないって選択も出来ない事はないけど、さすがに長い。

 

(仕方ない、街に行ってみるか)


 そんな事を考えていると、ピピピという音と通信を知らせる表示がモニターに表示された。


「こちらシグナルだ。ショウゴ君、今大丈夫か?」


「シグナルさん」


 聞き覚えのある声とモニターに表示された仮面に、少し安堵した。


「今は、大丈夫です」


「すまないが、現状の報告をしてくれないか? ニュースでサイシンの情報を多少は得られたのだが、もう少し詳しく知りたい」


「今はサイシンの近くにハウンドソーサリーを隠してます」


「隠す? 何かあったのか?」


「そこはニュースになってないんですか?」


「どうしたんだ?」


「ハウンドを目的の場所で待機させていたら、よく分からないロボが出てきたんです」


「ロボ?」


「はい。濃い紫色をしていて、ナイフみたいなのを持っていました。そのナイフでハウンドのバリアを破られて、肩を損傷しました」


 ハウンドのバリアは衝撃をうける物、砲弾や爆発風などには強く、ほとんど緩和出来るのだけど、先の鋭利な物、ナイフ等の刃物や狙撃銃のような細長い物には、ほとんど効果がない。

 ハウンドのバリアが破られた理由もそれだった。


「ふむ。新型のWFか」


「ダブリューエフ?」


 聞いた事のない言葉だ、何かの略称なのだろうか?


「WF(ダブリュ-エフ)。Within-standard Frameの略称をそう言うんだ」


「じゃあ、ハウンドソーサリーもWFなんですか?」


 シグナルは首を横に振った。


「いや、ソーサリーはOFオーエフ、Out-of-place Frame」 に分類されている」


「その違いって、一体なんですか?」


「簡単に言ってしまうと、人が作ったかどうかだよ」


「えっ?」


「OFを元にして作られた人型の大型ロボット、それがWFだ」


「待って下さい。それならあなたは襲われる可能性があったのに、なんで僕にその事を教えてくれなかったんですか!?」


 僕は、ハウンド以外にこんなモノがあるだなんて知らなかった。それにハウンドも、それを教えてくれなかった。


「君に教えなかったのは悪かったと思う。しかし、これはこちらも予想外の事だったんだ。まさかサイシンにWFがあるだなんて、我々の情報網では掴みきれなかったんだ」


 すまない、とモニターの向こうでシグナルが頭を下げていた。


「今後は、君が町に入る時にそこに関する情報を渡す事にする。それに何か必要だと言うなら、それも準備させてもらう」


 そして、再度頭を下げた。


「本当にすまなかった」


 彼の声と肩が震えている、大人が泣くところなんて初めて見た。


「……分かりました。」


 僕は彼のその姿に、しぶしぶ了承した。


「なら、早速なんですがこれからどうすればいいですか?」


 シグナルさんは、ゆっくりと頭を上げ、


「……あの場所に行った時に、君はなにかを見なかったか?」


「なにか……そうだ、杖!」


「杖?」


「そうです、杖みたいなものが見えたんですよ」


 彼は口に手を当てて、


「もしかしたら、それはソーサリーの武器なのかもしれないな」


「武器? 杖がですか?」


「まあ、あくまで私の予想だがね。なにせハウンドソーサリーには、武器のような物ってないだろう?」


 確かにそうだ、今のハウンドは素手で殴るか蹴るぐらいしか攻撃できない。


「なんにせよ、それは次に目的地に行ったら分かる事だろう」


 シグナルはそう言った。


「さて、ショウゴ君。今、困っている事は何かあるかい?」


「困っている事……」


 と、それを合図にしたかのように僕の腹の虫が鳴いた。


「フフ、お腹が空いているのか。もしかして、もう渡した食料はなくなってしまったのかな?」


「はい」


 お腹が鳴った事が少し恥ずかしかったが、正直に答えた。


「そうか、なら近くのおいしい店をスタッフに調べてもらおう」


「お願いします」

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