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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
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ハウンドの行く先




 僕は育った街に別れを告げ、ハウンドのモニターに突然の表示されたマップが示すままに矢印の方角、西へと移動し続けていた。

 シグナルさんから別れて二日ほど経つ。その間、ハウンドは出来るだけ人のいない道を自動操縦で移動し続けた。その甲斐もあってたいした問題が起こる事もなく、あの街からだいぶ離れた所まで来ていた。

 来てはいたが……


「こまったな……」


 僕とハウンドの目の前には、一面に広がる大きな水面。

 海だ。

 

「さすがに、ハウンドで海は渡れないな」


 ふくらはぎ位までならば歩いていけるだろうけど、流石に海は無理だ。ハウンドに潜水機能はついていない。

 だけど、ハウンドはこの先に行きたがっている。

 

(けど、どうやって渡ればいいんだ?)


 ここは港町みたいだから船は沢山あるけど、小さな漁船なんかじゃ当然ハウンドは乗れない。ステルス状態でタンカーなどに乗せるにしてもすぐばれてしまう。

 完全にお手上げだった。

 それでも、とあれこれ色々な方法を考えていたそんな僕の思考を打ち消すように、モニターから音が鳴り響く。


(うん? 通信?)


 一体、誰からハウンドに通信を?

 そう思ったけど、ハウンドに連絡が出来そうな人なんてシグナル以外で思いつく人はいなかった。

 とりあえず、受信だけする事にした。

 

「聞こえているかい? 聞こえているなら返事をしてくれ。ハウンドソーサリーのパイロット、ショウゴ君」


 しかし、聞こえてきたその声は予想していたシグナルではなかった。


(誰だ? なんで、僕の名前を? それよりも、どうしてハウンドに通信して来れるんだ?)


 ハウンドの通信機は、知らない人が勝手にかけて来られるような簡単な代物ではない。

 

(通信にでたのは、間違いだったかもしれないな)


 そんな事を考えていた僕の耳に、


「シグナルさんから、君を送る様に頼まれたものだ。安心してくれていい」


 聞き覚えのある名前が告げられ、僕は急いで返事をするために通信回線を開いた。

 それを向こうでも感知したらしく、


「あっ、聞こえてるね。とりあえず、今から指示する場所に移動して」


 モニター正面に地図を開き、彼に言われるがままその場所までハウンドを移動させた。その指定された場所の周囲だけに何故だが人がまったく居なかった。

 少し向こうからは活気あふれる声がしてるというのに。まるで、ここだけ別の場所みたいだ。


「どう? 大丈夫?」


 唐突にかけられた声に、


「あ、はい」


 慌てて返事をした。


「なら、今からラックを出すからちょっとだけ待ってて」


「ラック?」

 

 なにかの駆動音が海の上からする。そう、何もない海上からだ。

 その音は、シャッターのような大きななにかが開く音のように聞こえる。とはいえ、普通は人の耳に聞こえない音なのだと思う。ハウンドが音を拡大して聞かせてくれているおかげで、僕には聞こえている。


「そうだった。ハウンドの赤外線モードをオンにしてくれないかな?」


「分かりました。レーダーONオン


 モニター越しに見えている風景に、肉眼では見えてなかった赤い大きな塊が映っていた。


「えっ!?」


 急に現れたソレに驚いて、声が出てしまう。


「驚かせてごめんね。でもこれは、君とハウンドソーサリーを運ぶための輸送機なんだよ」


 その赤い塊の中から、フレームだけしかないベットのような物体がせり出している。これも肉眼では見えないみたいだ。


「ラックの出っ張りに足を乗せる様にして、ハウンドを寝せてくれないか?」


 僕はハウンドを動かして皿のようになっている部分に足を置いた、カチッとはまる音がした。そのまま、言われた通りにハウンドを仰向けで寝かせた。


「よし、じゃあ格納するから。動かないで、そのまま待っててね」


 ハウンドを載せた見えない寝床が、輸送機の中に格納されていく。本当なら振動を感じるのだろうけど、このハウンドソーサリーのコクピットは中空に固定されているような形になっているので、気にならなかった。


「よし、それじゃあ出発するから。それまでは、ハウンドソーサリーから降りないで待っていてくれよ」


 ゴゥ、と低い音と共に、機内の物が振動で動く音がした。



「じゃあ、ラックを立てるから。姿勢制御はよろしくね」


 言われた意味がどういう事かイマイチ分からなかったが、ハウンドを寝かせたベットが動き、ラックとそれに横たわるハウンドソーサリーを垂直に立たせ始めた。グォングォン、という音が格納庫の中に響く。

 コクピットがあるハウンドの胸部の辺りに、橋のような物が架けられた。


「はい、オッケー。ショウゴ君、もう大丈夫だから降りて来ていいよ」


「わかりました」


 イスから立ち上がり、軽く背伸びをしながらコクピットを出ると、そこにはトランシーバーのような物を持っている若い男性がいた。

 彼は僕が降りてきたのを見ると、そのトランシーバーを耳から話してこちらに笑顔を向けた。


「やあ、ショウゴ君」


 その声から、彼が通信の相手だと分かった。


「あの……あなたは?」


 彼は少しバツの悪そうな顔をしながらも、


「そっか。ごめん、先に自己紹介だね。僕はこの輸送機『メセクテト』の主任技術員でソーマって言うんだ。これから、よろしくね」


 と、彼は手を差し出してくる。


「よろしくお願いします」


 そう答えて彼の手を握り返す、彼の握力は細い見た目のわりに、強かった。

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