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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
23/37

『教会』 6


 街外れまで、お互いに攻撃をする事はなかった。


「やっぱり、街の人に危害は加えないんですね」


「当たり前のことです、人の命はどんなものよりも重い。だからこそ!」


 ヒュナノスの右手が持ち上がる。


「かわす!」


 操縦球を動かす。


「遅いわ! キャプティヴ!」


 ヒュナノスの右手人差し指がハウンドを指す、それと同時にハウンドの左足が動かなくなってしまい、右足だけ動かしたハウンドはつんのめる形になった。


「ヘカよ!」


 右手で体を支えたままで、左手にヘカを出現させた。


「ヌール!」


 閃光ヌールが暗闇を引き裂く、そしてその光はヒャナノスの肩に当たる一瞬、何かにぶつかった。


「バリア!?」


 透明の壁のような物がヒュナノスの前に現れ、その体に傷をつける事を拒む。バリアに守られたままの体を動かしてヌールの軌道から外れると、見えない壁がパリンと音を立てて割れた。


「こっちのよりも強力なのか!?」


 ハウンドのバリア性能はヌールを防ぐほどの力はない、コンクリートの壁だ。しかし、ヒュナノスのバリアは鋼鉄製だ、その差はかなりあるだろう。

 つまり、ヌールであのバリアを壊すのはなかなかに難しいだろう。

 けど、


「ヌール!」


 バリアが壊れたばかりの今ならば、連続での使用は難しいだろうと放つ!


「キャプティブ!」


 その指はヘカを指している。


『ヌール、使用不可能』


「クソッ!」


 無意識に毒ずくと、モニターの正面に接近してくる天使のような容姿のロボットが接近してきていた。操縦球そうじゅうきゅうを急いで引く。


「駄目よ!」


 キャプティヴの声が聞こえ、ハウンドの足が動かなくなる。


「また……!」


 ヒュナノスは再度接近してくる、そこに再度ヌールを打ち込もうとしたがまた封じられた。


(さっきから、攻撃らしい攻撃をしてこないのはどうしてだ?)


 そういえば、無抵抗のハウンドにも損傷らしい損傷もなかった。まるで、ただ殴られていたような損傷の仕方だ。もしかしたら、向こうには武器などの明確な攻撃方法が無いのかもしれない。

 なら、どうして接近しようとするんだろうか?

 そんな事を考えていたら、再度接近される。


(駄目だ! 今は、この状況をどうにかする方が先決だ。だけど、どうやって?)


 今考えるべきことは、それだ。

 遠距離からの攻撃はバリアに防がれてダメ、移動しようとしてもダメ、これでは……!


(そうだ、アレを!)


 僕は再度ヌールを放つ、しかしその攻撃はやはりバリアに防がれる。


「無駄な抵抗はやめて。私は、ソイツが居なくなればいいだけなんだから」


 トリステスの声が聞こえる、その声は酷く悲しそうで、まるで助けを求めている様だった。


「それは、出来ません」


 ハウンドの足にヒュナノスの指が向く、また動けなくなった。


「僕は、ここで止まる訳にはいかないんです」


「どうして?」


 ヒュナノスはまでの距離は十歩程度。


「ソイツは! 人を不幸にするのよ!? なのに、どうしてソイツを守るの!?」


 守る?


「違いますよ、それは」


 僕は、ハウンドを守っているのでない。


「ハウンドは、僕を救ってくれるんです」


「救う? そんなのは、幻よ!」


 手の届く距離にヒュナノスが迫る、もう一歩だ。


「例え幻でも、僕にはそれが必要なんです!」


 僕にはソレ以外に選べないんだ、そこで止まったら行く事も帰る事も出来ない。なら、少しでも希望のある方へ進むしかないんだ!

 ヒュナノスの手が接触する寸前に、


「ヌール!」


 僕は、叫んだ。


「キャプティヴ!」


 トリステスの声が光線ヌールの発動を阻害する。


「これで」


 そう、これで。


「終わりよ」


 それは、


「違う!」


 ヘカをしっかりと握り、


ハルシュよ!」


 ヘカの柄が伸び、両手にしっかりと保持される。丸い杖の先端が徐々に伸び、その内側に刃を形作る。

 これが、ハウンドの新たな力『ハルシュ


「これで!」


 ハルシュの刃が接近してきていたヒュナノスの右手にかかり、切り裂いた。


「下がるの、ヒュナノス!」


 彼女は後退しようとしたが、ヒュナノスの腕にかかった鎌はそのままヒュナノスの右腕の半分を体から綺麗に切り離した。

 

「これで、もうキャプティヴは使えないはずだ!」


「なんでそれを!?」


「あなたは右の指を向けた時にだけキャプティヴを使っていた。それは、右でしか使えないからじゃないんですか?」


 もしかしたら、右腕を失ってもキャプティヴの効果は残っているのかもしれない。それでも、その効果を受けたのはヌールだ。ハルシュには一切の問題はない。

 それは、ハルシュの切れ味が証明していた。


「……よく、気づいたわね」


 彼女の声は少し動揺しているようで震えていたが、けどなにか……?


「けど、まだよ」


 ビービー、と警報を告げる音がコクピットの中に響いた。


「なんだ!? どうしたんだ、ハウンド?」


 モニターにカウントダウンを刻む時計が表示される。


『ハウンドソーサラーの自爆が実行されました』


「自爆!? そんな機能は無いのに、どうやって?」


 フフ、とトリステスの笑い声が聞こえた。


「起動しましたね」


「起動した? いったい何を?」


 彼女はヒュナノスの左腕を上げ、


「ヒュナノスの左腕の薬指は永遠の眠りをもたらすもの、『ラズン・ミル』よ。それをあなたに撃ち込んだの、あなたが右腕を切った時にね」


 左の薬指だけをこちらに向けた。

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