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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
18/37

『教会』 1




「どうだ? くっついたか?」


 ソーマが、横倒しになったハウンドに登っている作業着姿の女性に声をかけた。


「なんだって!?」


 バリバリとバーナーのような物の音のせいで、その女性にソーマの声は聞こえなかったみたいだ。

 女性は手を止め、こちらを向いた。


「終わりそうか?」


 と、再度大声で尋ねた。


「ああ、ほぼ作業は終わったよ。残りは最終チャックだけだ」


 彼女はこちらを一瞬だけ見て、


「ただ、直したって言っても後はコイツ自身の修理機能に任せるだけだから、私達がした事は実質繋げただけだよ。だから、完全回復させるまでは、あまり無理させ過ぎない様に注意しな」


 僕は首を縦に振り、


「ありがとうございます」


 と、お礼を言った。


「私達は仕事でやってるだけだから」


 と、言ってまた作業に戻った。


「すまないね、ショウゴ君。彼女、口下手だから」


「いえ、大丈夫です」


「それなら助かるよ。さて、これからの事だけど」


 そういうとソーマは何かの資料を眺めて、


「メセクテトはこれから行かないといけない場所があってね、君を送るってのは出来そうにないんだ」


 すまないね、と彼は謝る。


「大丈夫ですよ」


「だから、君にはこれから次の目的地に向かってもらうんだが、さっきの彼女が言ったようにハウンドソーサリーは今、完璧な状態じゃないから、そこだけは気をつけて」


「はい」


 準備出来たよ、とさっきの女性が大きな声でソーマに伝える。


「だそうだ。すまないね、あまり休憩もさせてあげられなくて」


 僕とハウンドがメセクテトに入ってから一時間程だったけど、足を伸ばして横になれただけでもありがたかった。

 その事を伝えると、


「なら、良かったよ」


 と、答えた。


「ほら、何してんだい? そろそろ、行かないとマズいだろ?」


「ああ、分かってる。すまないね、追い出すみたいで」


 と、ハウンドの元へ導かれる。

 横倒しになっているので、いつもより乗り込むのが難しかったが何とか操縦席に腰を下ろす。


「もし、何か困った事が起きたら連絡をしてくれよ」


 と、通信機越しにソーマの声が聞こえる。


「分かりました」


「なら、行こうか」


「はい、ありがとうございました」


 倒されていたハウンドの体が次第に起こされていく。ガシャンと、固定具が外され手足が自由になった。


「じゃあ、行こうか」


 操縦球を前に倒す。


「ハウンド、ステルスON」


 モニターの波が全身を覆う、マップに表示された矢印は南南西を示していた。


「ハウンド、状況を教えてくれ」


『碗部の修理に四日、他の部分は二日かかります』


 それならば、移動しているうちに直るだろう。僕は操縦球そうじゅうきゅうを矢印の方に向けて倒した。



「どうも」


 ショップの店員さんは、手に持った雑誌から目を離す事もせずそう言った。僕は彼に軽く会釈をし、袋を手に店の外に出た。ハウンドと一緒にあちこち行ったからか、こういう事で驚かなくなった。あの街、というか国全体が対人関係を重んじているような雰囲気だった。

 その空気感が、閉塞を生んでいたような気もする。他者を気にして自分を殺し、自分とは違う考えや何か気に食わない相手は迫害してもいいというそんな風潮。

 けど、外の国はそんな事を感じる事があまりなかった。そこまで深く知っていない、住んでいないのもあるかもしれないけど。

 ガサゴソと、袋の中身を確認する。その中身は、パンというよりもクレープのように平べったい生地の物でトマトやタマネギなどの野菜や鶏肉を包んだ郷土料理的な食べ物数個とサンドイッチ、ペットボトルの水を数本が入っている。

 これで、次の街までは持つはずだろう。

 袋の中身を確認し終えた時、急に視界が揺らいだ。


「あっ……」


 フラフラと足がもつれ、近くの壁に肩からもたれかかる。


「あなた、大丈夫!?」


 ゆらゆらと揺れる視界の中で、茶髪の女性が心配そうな声をあげる。


「ええ、大丈夫です……」


「本当に!?」


「はい、ご心配ありがとうございます」


 と、僕は多少ふらつきながらも彼女から距離をとった。


(またか……)


 最近、こういう事がちょくちょく起こる。


(ハウンドの中にずっと座りっぱなしだからかな? さすがに、そろそろきちんとしたベットで寝た方がいいのかもしれない)



 街から歩いて十分ほどの場所にハウンドを停めていた。


「ハウンド、状態は?」


『碗部の修復完了。損傷なし』


「時間は……まだ二時。なら、もう少しだけ、先に進もう」


 モニターの地図に目をやる、地図の目的地を示す矢印は数日歩いた事によって西を示していた。ここからしばらく先は民家のない所を走っていけそうだ。

 

「ハウンド、ランドフォーム」


 駆動音と共にハウンドの視線の位置が下がっていく。操縦球を目的の方角に向かって前に倒した。

 外の景色が急速に後ろに飛んでいく、ハウンドは更に加速していく。これならば、今までの倍の速度で移動出来そうだ。

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