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狗の魔術師を駆るモノ  作者: 青木森羅
~ショウゴの旅~
12/37

『北の洞窟』 1




 サイシンを出てから二週間以上経つ。

 ハウンドの示す方角へ進みつつも、途中の街で食料を買う為に寄り、コクピットに戻ってからはステルス状態のハウンドを移動させてを繰り返していた。

 だいぶ進んできたからなのか、サイシンよりも涼しくなってきていた。


「どうもー」


 気怠そうな態度の店員さんから袋を受け取る、中身は黒いパンと野菜ジュース。僕はそのまま走って、ハウンドを置いている公園に向かう。

 街中に置くのはどうかとも思ったけど、この辺りには隠せるような木々も見当たらず、仕方ないのでここに停めた。その選択は意外にも悪くはなかったようで、昼だというのに公園の周りには人の姿は見当たらなかった。

 僕は周りを気にしながらも、早足で公園に足を踏み入れる。

 何も無いはずの空間から、起動音がしてゆっくりと板が降りてくる。僕がそこに足を乗せると、板はゆっくりと上昇を始めた。

 コクピットの中、正面のモニターには大きく地図が表示されている。その地図には北を示すようにマークが明滅している。

 距離にして三千キロ。

 さすがに、そろそろ次の目的地について欲しいと思いつつ、ハウンドを走らせた。



 半日以上、民家を見ていない。

 先程の街で買ったのはもう既に胃の中に入っている朝食と、今から食べようかと悩んでいる昼食だけだった。


 失敗した。


 地図上で見ると、街の間隔はもう少し短いと感じていたが、元々住んでいた島国の感覚で考えていただけだった。ここが大陸であるという事を体感として感じている。


(こんな事なら、もう少し食べ物を買っておけばよかった)


 PDAをつけて、地図を表示させる。


(今はここだから、えっと)


 北西の離れた所に街があるらしい、距離としては2百キロ。

 

(……どうしようか?)


 このままハウンドを走らせていくと、その先にあるのは高地のようで、そうなるとますます人里に出会える可能性は低くなってしまうと想像できたし、実際地図上にも見当たらなかった。

 つまり、ここから横に逸れるかどうかなのだけど、早く目的地を回りたいという気持ちが強い。

 サイシンを出た頃からだろうか? 何故だか分からないのだけど、早く目的地の場所に行きたいと強く思う様になった。ハウンドソーサリーがそれを望んでいるような。けど、機械であるハウンドがそんな事を望んでいるなんて、思うのもおかしい事だと思う。

 

 そんな思考を遮るように、モニターの地図に変化が起こる。明滅の速度が早くなってきた、これは目的地が近い事を表していた。

 それなら、僕のするべき行動はひとつしかない。


 操縦球そうじゅうきゅうをより奥に倒し、ハウンドの歩みを加速させた。



 そろそろ夕暮れだ。ステルスを解かないといけないのを考えると、そんなに悪くはないのだが、サイシンのように奇襲をされる危険性を考えると、一長一短だ。

 ガラガラと足元の岩が崩れる、浮いているのでハウンドが崩しているのではなく、元々崩れやすいのだろう。

 

 どんどん、その場所を示す表示が早くなる。そして、地図の上に目的地のマークが表示された。それは、積み重なった岩の一番高い所だった。


「ハウンド、ステルスOFF」


『ハウンドソーサリー、オンライン。チャージカウント、スタート』


 ステルスが消えると同時に、機械音が流れ始めた。前回の事を考えて、周囲の警戒を怠らないようにレーダーから目を離さない様にする。

 チャージは80%を越えた、そろそろ終わりそうだ。


――ゴロリ


 今までのガラガラという音とは違う異様な音がした。


『チャージ、コンプリート』


 ガラガラと足元で音がする、それは次第に大きな音になり地面が振動を始めた。

 嫌な予感がする。


「早く、下がらないと」


 操縦球を一気に後ろに引く、一歩後退した瞬間にハウンドが横に崩れた。


「クゥ!」


 ハウンドは、岩と共に地面の中へ落ちていく



「振動確認、A7からです」


「地震ではないのか?」


「違います。崩落が原因のようです」


「崩落?」


「ええ。あの辺りは、岩が積まれているだけのエリアなので地元民は近づきません。それに、地面の下に空洞がある事もあって、入らないようにと政府から言明されています」


「崩落の規模はどのくらいだ?」


「大きいです、まるで巨人が落ちたかのように」


「そうか。なら……」


「行くんですか?」


「ああ、その為に雇われているんだからな。仕事に行かないと、文句言われるからな」


「顔、笑ってますよ?」


「癖だからな」


「これから、殺し合いをするというのにですか?」


「だからだよ」


「だから?」


「人を殺すのが、愉快でたまらないのさ」


「……生きて帰って来てください、ブルクさん」


「おう! 行ってくるぞ!」

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