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第7話


 あたしはいつのまにか、ユッくんのいないクラスに慣れた。もちろん、ユッくんがいな

いのはさみしいけれど。いっぱい友達できたし、みんなでキャッキャはしゃいでるのは楽

しかった。

 ユッくんもおんなじ、いっぱい友達ができてワァワァはしゃいでた。あたしとユッくん

がちがうのは、ユッくんはみんなと校庭で走り回れるけど、あたしはそんなユッくんを教

室とか遠くからみてることしかできないこと。夏とかお日様がつよく光ってるときは外に

出れないから教室にいるし、冬とかお日様がよわってるときも動き回れないから校庭のは

しっこの方にいるくらい。いいなぁ、みんながうらやましい。あたしも力いっぱいにこの

大きな校庭で走ってみたい。でもやんない、おとうさんやおかあさんやせんせいやみんな

やユッくんに迷惑かけるから。でもねぇユッくん、あたしのお願いってそんなにいけない

ことなのかな?そんなにあたしが苦しくならないといけないくらい、いけないことなのか

な?


 体育の授業ではあたしはいつも見学、校庭のすみっこでポツンとすわってるだけ。つま

んないし、さみしいし、やるせない。みんながドッジボールしてるのや、サッカーしてる

のをみてるだけ。あたしが休むせいで、30人のクラスが29人になっちゃう。だから、

ドッジボールやサッカーをするとき、チーム分けがしにくくなる。2チームにしても、3

チームにしても、4チームにしても、半端になっちゃう。ごめんね、あたしのせいで。あ

たしが元気でピンピンなら、へんてこなチームにならなくていいのにね。

 きょうは寒いけど陽がでてるから、麦わらぼうしを装着。みんなの赤白ぼうしとはちが

う、あたしだけのけ者みたい。あたしだけ体操着じゃないし、あたしだけ運動してない。

夏なんかもっとちがう、日傘をさして見学しないといけない。みんなとあまりにもちがう、

あたしだけとくべつ。特別って、いいこと、わるいこと、どっち?

 せんせいは気をつかって、毎回けんがくしなくてもいいって言ってくれる。教室にいて

もいいし、図書室にいてもいいし、保健室にいてもいいって言ってくれる。あたしはそれ

をダメっていう、せめてみんなが体育をしてる場所にいたい。そこにいないと、ホントに

のけ者にされてる気になってきそうだから。


 ちょっと無理もしたりした、ガマンをこえたりした。夏のカンカンした太陽の光がすご

くて、焼けそうにあつい日だった。どうしようか迷ったけど、あたしは日傘をさして麦わ

らぼうしをかぶって見学した。痛いくらい太陽はひかって、眩しいくらい太陽はかがやい

てる。あたしの体があつくなって、さむくなった。だんだん目の前がボヤーンってしてき

て、コテンって横になった。誰かの声がきこえたけど誰の声かわからなかった。

 気がついたら、あたしは保健室にいた。せんせいがあたしをここまで運んでくれたみた

い。安静にしてなさいって保健室のせんせいにいわれて、ベッドで横になってたら6時間

目がおわった、チャームがキーンコーンカーンコーンってなってた。外がうるさくなって

くる、みんなが下校したり、校庭であそんだりしてるから。あたしもかえりたい、たのし

くかえりたい。ユッくん・・・ユッくん・・・。

「・・・ミーちゃん・・・」

 目をあけたらユッくんがいた、ちょっとおどろいた。

「ミーちゃん、だいじょうぶ?」

 きょうは・・・だいじょうぶじゃない。

「ユッくん、なんでここがわかったの?」

 あたしの友達がおしえてくれた、ってユッくんはいった。あたしが体育の時間に保健室

にいったって聞いて、ユッくんはきてくれた。ありがとう、ユッくん。

 ユッくんはあたしに元気がでるまで、日差しがおさまる夕方までまってくれた。ユッく

んといるとパワーをもらえる、それは今もかわらない。帰り道でユッくんが手をつないで

くれた、あったかかった。あたしがまだ気分がよくなかったから、ずっと元気をくれてた。

もう学校の子はみんなかえってたから、恥ずかしくなかったみたい。

「ありがとう、ユッくん」

 あたしは弱ってたから泣きそうになった、ユッくんのやさしさに。ユッくん、あたし嘘

ついたかもしれない。ユッくんのいないクラスに慣れたなんていったけど、あたしにはや

っぱりユッくんがいてくれないとダメみたいだよ。


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