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第6話


 あたしは小学生になった、黄色いぼうしと赤いランドセルがあたらしいアイテムになっ

た。なんだか探検にいくみたい、ワクワク。ユッくんと毎日いっしょに学校にいって、な

るべくいっしょに学校からかえった。でも悲しいよ、ユッくんとクラスがはなればなれに

なっちゃったから。幼稚園のときは、いつでもとなりにいれたのに。おかあさんにいった

ら、それはいつまでもユッくんのとなりにばっかいちゃいけないってことなのよって言わ

れた。あたしもちょっと大人にならないといけないんだって、そう言われた。わかりまし

た、ユッくんにあいたいけどガマンします。ただ、ユッくんと遠くになりたくはない、近

くでいたい。だからね、これだけは言わせて。

「ユッくん、すきだよ」

 いっぱい気持ちをこめて言うと、ユッくんはウンってうなずいてくれる。ユッくんとい

っしょにいれる時間はへるけど、いつもユッくんの中にあたしがいてほしい。ユッくん、

すきだよ。


 最初のころは、あたしはユッくんとはなれてるのをガマンするのがつらかった。ユッく

んはかっこいいし、やさしいし、かけっこも速いし、勉強はまぁまぁ。そんなユッくんは

女の子に人気があった、それがあたしの痛みのタネ。その中には、多分あたしよりかわい

い子やきれいな子もいるはず。ユッくんがあたしから他の女の子に心がかわらないかって

思うと体の中がキュッとなる。あたしの近くにいて、あたしからはなれないで。あたしの、

ミサコのとなりにはいつもユッくんがいるからね。

 バレンタインデーの日には、ユッくんは8コもチョコをもらってた。ユッくんは隠して

るつもりだったけど、ユッくんの黒いランドセルはパンパンにふくれてた。ちょっと切な

かったけれど、ガマン、ガマン。他の女の子たちにまけないくらい、あたしはユッくんが

すきなんだから。

 きょうはあたしが呼んでたから、ユッくんがあたしの家にきてくれた。そこで、ベッド

にすわってるあたしがカーペットにすわってるユッくんにチョコをあげた。

「ハイ、どうぞっ」

 おかあさんに手伝ってもらって、いっしょうけんめい作ったよ。・・・ごめん、ホントは

ほとんどおかあさんが作ったんだけど。でも、あたしのすきがいっぱいはいってるから。

「食べてもいい?」

 ユッくんがいった、あたしはうれしかった。あたしのチョコだけは目の前でたべてくれ

るんだね。もしかして、あたしは他のチョコをくれた女の子たちとはちがう「特別」なの?

やったっ、あたしはユッくんのとくべつ。

「おいしいよ」

 ありがと、でもおいしいかどうかはホントはどっちでもいいの。おいしいかどうかは、

おかあさんのお手柄だから。その中にはいってる、あたしの気持ちがユッくんの中にはい

ってくれるかなの。


 その日のチュウははじめての味だった、いつものフルーツじゃないチョコレートの味。

2人であたしのチョコを食べて、そのまま2つのくちびるがくっついた。チョコの口紅が

ついたあたしのくちびるとチョコの口紅がついたユッくんのくちびる。チョコレートの味

が口いっぱいにひろがった、あまくて少しにがかった。


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