第2話
今日は、おかあさんといっしょに病院にいってきた。おかあさんに手をひかれて、こっ
ちよっていつもとおんなじ道をあるいた。受付のおねえさんとおはなしして、待合席であ
たしのなまえがよばれるまでまってるの。たいくつ、たいくつ、たいくつだ〜。。病院にく
るたんび、30分くらいまつんだよ。じゃあ、30分くらいどこかであそぼうって言って
も、おかあさんにだめっていわれるの。つまんないってわかってるのに、まつなんてイヤ。
ハズレってわかってるクジをひいたり、負けるってわかってるゲームをしたり、マズイっ
てわかってるものを食べるのとおんなじだよ。そんな時間をふんわかしたイスにすわって、
ずっとまってなきゃなんない。足をぶらんぶらんしてたらおかあさんにおこられるし、テ
レビをみててもニュースしかやってないし、アニメがみたいなんていえないし、いっても
チャンネルかわんないし、携帯用のゲームは目がわるくなるからって買ってくれないし、
家にあるマンガや本だってもうみあきてるし、つまんないよ〜。それに、病院の空気って
きらい。だって、ほとんどの人が病気だからきたないもん。あたしの右っこにすわってる
人も、左っこにすわってる人も病気なんだよ。うつったらどうしてくれるの、とばっちり
もいいとこだよ。いろんなバイキンマンがうじゃうじゃ、あたしの回りをとんでる。おね
がいだから、あたしの中にははいってこないでね。あたしが病気になったら、ユッくんと
チュウできないんだから。そうしたら、責任とってもらうよ。とれないんなら、私にスッ
ってうつさないでよ。
まだですか、あたしのなまえ忘れてませんか?たいくつ、たいくつ、たいくつだ〜。。あ
たしは検査できてるだけなんだよ、パッっておわらせたい。こんな不健康なひとたちには
さまれてるの、きらい、きらい、きらい。でも、それを口にできないあたし。おかあさん
に迷惑かける、おかあさんにおこられる、だからいえないあたし。よわむしこむし、あた
しったら。自分にツン、ふてくされる。ユッくんがいてくれたらなぁ、いつもそうめぐる。
ユッくんとおはなししてたら、30分なんてあっというまだよ。えっ、もう終わっちゃっ
たの。なんなら、もっとまっててもいいのに、ってくらい。それならユッくんよべばいい
のに、って?ダメ、ユッくんはあたしだけのものじゃないんだから。あたしのわがままで
ふりまわしてばっかりじゃいけないの。ホントはそうしたいよ、でもがまんもしなきゃい
けない。あたしがだだこねてばっかで、ユッくんにきらわれたらかなしいもん。
あたしのなまえが呼ばれた、きょうは35分まったよ。5分オーバー、そのかわり次は
25分にしてね。ミリカせんせい、こんにちは。ミサコちゃん、こんにちは。1ヶ月ぶり
のせんせい、あたしの検査が月に1回だから。ミリカせんせいはおかあさんより年上、お
ばあちゃんより年下。せんせいのまわりはポワポワしてて、とってもやさしい気がでてる。
だからせんせいはすき、おもしろくない検査がちょっぴりおもしろくなる。
「なにか、様子のかわったところはありますか?」
いいえ、ありません 。
「外に出すぎたりしてませんか?」
いいえ、おうちの中ばっかでたいくつです。
いつもとおんなじ質問されて、いつもとおんなじ答えをいう。いつもとおんなじ検査を
して、いつもとおんなじ結果がでる。今までどおりに生活してればだいじょうぶ、だって。
「無理はしないで、ゆっくりすごしなさい」
ミリカせんせいにいわれたから、ハイっていった。きょうの検査はこれでおしまい、ま
た来月までさようなら。おかあさんに手をひかれて、2時間前とおんなじ道をあるいてか
えった。途中でおかあさんがアイスをかってくれた、おいしいな♪




