第14話
いたい・・・いたいよ・・・。夜中にあたしの体が急にいたくなった。体中がいたくて、
息がしにくくなった。ガマンできなくてサッチをおこしたら、あたしはそのまま救急車で
はこばれた。いつもとちがう病院で、いつもとちがう先生に、あたしの体をみてもらった。
結果もいつもとちがった、異常あり。
あたしの体は不思議みたいで、せんせいもどこがどう悪いか分からないみたいだった。
突発性のなんとかっていわれたけど、ホントはせんせいも分からないみたい。どう悪いか
わからないから予防できない、経過をみたいって先生がいった。それっぽい薬をのんで、
それっぽい検査をうけて、それっぽい点滴をして、あたしは病院のベッドにねかされた。
あたしは何もかわらなかった、異常信号はつどうちゅう。これがミリカせんせいが言って
たことなんだね、あたしみたいな病気の子は誰もが1回はおおきな症状をおこすって。
「・・・ミサコ・・・ミサコぉ・・・」
サッチがないてた、あたしのとなりであたしの手をにぎってくれてた。ごめんなさいサ
ッチ、あたしはダメな子だね。きのう、せっかくサッチがあたしをガマンづよくなったっ
て言ってくれたのに、あたしはすぐガマンできなくなっちゃったよ。おこってもいいよ、
これまでみたいに。
朝になってもあたしはいたかった、もう何時間もあたしはいたいまま。先生がこまって
た、あたしの体が不思議ちゃんなせいで。どうしていいか分からないから、あたしはそれ
っぽい薬をのんで、それっぽい検査をうけて、それっぽい点滴をして、ベッドにねていた。
このままじゃ、あたしがこわれちゃう。ガタがきて、こわれて、うごかなくなっちゃう。
そんなのヤダ、あたしがなくなっちゃうなんて。まだ、あたしはやりたいことがたくさん
あるんだよ。ユッくんと高校生になって、ユッくんと京都にきて、その先も・・・。その
先も、ユッくんとずっといっしょにいたい、ユッくんのとなりにいたい。ユッくん・・・
ユッくん・・・。
「ミーちゃん!」
ユッくんの声がきこえた、目をあけたらユッくんがそこにいた。なんで・・・大阪にい
るんじゃないの?聞きたかったけど、あたしは声がでなかった。
「ミーちゃん、まけるな!」
ありがとう、ユッくんがおうえんしてくれたら力がでるよ。がんばる、まけない、ぜっ
たい。ユッくんとさようならなんかしたくないもん。
「・・・ミーちゃん・・・」
あたしに何かがふんわりのっかった。ユッくんのくちびるがあたしのくちびるにのっか
ってた。ユッくんのふつうのくちびるとあたしのふつうのくちびる。こんにちは、3日ぶ
りですね。さいきん毎日あってたのに、旅行してたから3日もごぶさた。
ユッくんのくちびるは柔らくて、あたしを安心させてくれた。なんだか体がかるくなっ
た、いたくなくなった。息がしやすくなって、体がおちついてきた。先生がおどろいてた、
何がどうなったのかわからないみたい。
「・・・ミーちゃん?・・・」
ユッくんもおどろいてた、ごめんねビックリさせて。
「・・・ユッくん、ありがとう・・・」
今わかったよ、あたしの予防線はユッくんなんだね。ユッくんのとなりにいることで、
ユッくんとチュウすることで、あたしはあたしでいられるんだよ。3日もはなればなれに
なったから、あたしの予防線がパチンって切れちゃったんだよ。あたしにはユッくんが必
要なの、ユッくんがいてくれないとダメなの。だから、近くにいて。これからも、あたし
とずっといっしょにいて。はなれちゃダメなんだからね、あたしがこわれちゃうから。ユ
ッくんのとなりはあたしの指定席、誰にもすわらせない。そこが、あたしのいるべき場所
だから。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
前作「摩れた歯車」と対称的な物語を書こうと思い、
幼なじみ2人のかわいらしい恋を書けたと思います。




