第11話
きょうはあたしのたんじょうび、14さいのたんじょうび。パンパカパーン、おめでと
〜。うれしいけど心配、あたしみたいな子供が14さいになっていいのかなって。ユッく
んもサッチも14さいだけど、2人ともあたしより大人だもん。
「あたし、もう1回、13さいをしたほうがいいのかな?」
となりのユッくんにいった。
「じゃあ、また2年生をやるの?」
となりのユッくんがいった。それはイヤ、ユッくんが3年生になって、あたしだけ2年
生なんて。ただでさえ、あたしの体はよわっちぃのに。ユッくんまでうばわれるなんて、
ぜったいにイヤだよ。
田んぼのあぜみちをユッくんのうしろについてトコトコあるく。右に田んぼ、左に田ん
ぼ、前と後ろにはぐちゃぐちゃの土と土のついた草でできた道。暑いときにはせっせせっ
せ汗かきながらはたらいてる、おじいちゃんやおばあちゃんもいない。おそらさんがくろ
くなってくから、もうみんな帰っちゃったみたい。土と草の道をシャッシャいいながら歩
くと、ユッくんが左にまがった。
「ミーちゃん、気をつけてね」
うん、だいじょうぶだよ。もう何十回もあるいてるから、なれてるよ。なのにユッくん
はいつも気をつけてって言ってくれる、やさしいな。ほっそい道をあるききると、目の前
におっきなおっきな木があった。こんにちは・・・じゃないね。こんばんは、クスノキさ
ん。ミサコだよ、またユッくんといっしょにきたよ。
「ごめんね、どこにもつれてってあげられなくて」
いいんだよ、ユッくん。あたしもユッくんも部活だったんだから、その後から遠くにい
くなんて無理だし。それに、あたしの体じゃあ遊園地とかにつれてってもらっても、ほと
んどの乗り物に乗れなくてせつなくなるから、せっかく来たのにって。だからいいの、気
にしないで。あたし、ユッくんといっしょならどこだってうれしいよ。
「すずしいね、ひんやりしてて気持ちいい」
クスノキさんはあたしとユッくんがよりかかると、2人を陰でつつんでくれた。あたし
のたんじょうびをお祝いしてくれてるみたいに、クスノキさんの上のほうの枝がユッサユ
ッサゆれてた。あたしのためにダンスをしてくれてるの、クスノキさん?ありがとう、と
ってもうれしいよ。
クスノキさんを通ってく風は、あたしの体をふんわり通ってった。1時間くらい、クス
ノキさんの下でユッくんとずっとおしゃべりした。周りはまっくらだったけど、となりに
ユッくんがいるから安心だし、クスノキさんも守ってくれてるからもっと安心だった。
「キレイだね、ユッくん」
おそらさんに、お星さんがたっくさん光ってる。ピカンピカン、あたしたちを照らして
くれてる。お星さんたちも、あたしのたんじょうびをお祝いしてくれてるのかな。ありが
とう、ありがとう、ありがとう。
しばらく星をながめてたら、ユッくんによばれた。なぁにって振り向いたら、急にひっ
ぱられた。あたしの背中から、ユッくんが両手でグッっておしつけた。あたしの体とユッ
くんの体がくっつく、ユッくんにギュッってだきしめてもらってた。あたしの体の中がド
クンドクンいってる、はじめてユッくんにギュッってされて。ドクンドクンがどんどん大
きくなってって、すごく恥ずかしかった。あたしの体とユッくんの体がくっついてるから、
あたしのドキドキがすぐユッくんにわかっちゃう。はずかしい、はずかしい、はずかしい
よ〜。でも、あたしは何もしないで、ずっとユッくんにだきしめてもらった。はずかしい
けど、それよりもうれしかったから。ユッくんのおおきな体につつまれてると、ほんわか
する。いつもプールの外からみてる、水着姿のときのユッくんのりりしい体。あたしのよ
わっちぃ体にはない、あったかさがある。
ユッくんはあたしをだきしめながら、あたしにチュウしてくれた。なんだか、あたしの
中のぜんぶがユッくんにうばわれちゃうみたい。このまま、ユッくんとあたしがひとつに
なっちゃうみたい。素敵だね、あたしとユッくんは2人でひとつなんだよ。2人じゃない
とひとつにならないの、いっしょにいないとひとつになれないんだよ。
「ミーちゃん、すきだよ」
ユッくんは、あたしに何回もチュウしてくれた。1回、1回、あたしの体の中はキュン
ってしぼんだ。ありがとう、ユッくん。あたしもユッくんがだいすきだよ。これからもあ
たしのとなりにいて、ユッくんのとなりにいさせてね。




