第三話
「じゃ、退院できますね。怪我も大丈夫そうですし。」
「あ、はい。」
霧雨の診察があったその翌日、思っていたよりも少し早く退院することになった。
病院を出ると青い空が広がっていた。
街を歩き、電気屋の前を通ったときちょうど俺が遭遇した事件のニュースをやっていた。
驚いたことに、巨人の足が暴れて幾ばくか壊されているかと思っていた道路や家は傷一つなく平穏そのものだった。
「夢幻かっての・・・。意味が分からねぇ・・・何なんだよフェンタムってのは・・・・。」
最近では教育機関にも心象世界具現装置やヘェンタムについての教育がされていると聞くが、それでもおざなりにしか教えられないし、教師自身もよくわかっていないそうだ。(友人談だがな)
その話を聞いたときはそれでいいのか教育機関、と思ったこともあるが実際にフェンタムに遭遇してみるとこんな話は知らない方が幸せなんじゃないかと思える。
自分の心象世界に影響がなかったとはいえ軽くトラウマになっているようだった。
様々な事を考えながら街を歩き、自分の家にたどり着く。
家の中に入り上着を脱ぐと、ポケットから一枚の紙が落ちた。
「なんだこれ?」
拾い上げてみるとそこには丁寧な、しかし幼さが残る字でこう書いてあった。
『貴方の鍵はいつかの愛。絶対に、奪われないで。なにかあったら電話してください。by霧雨』
その裏には電話番号か書かれていた。
「こりゃまた随分と・・・。」
とりあえず、メモ用紙を壁の掲示板にピンで留め寝ることにした。
―もう、こんなことに巻き込まれたくないと、願いながら。
だが、現実は実に残酷で、無慈悲だった―