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開戦

戦場には全チームが集まっていた。

空気は明るいところがあれば、暗いところもある。これはそこらへんの学校の運動会や体育祭とは違う、生死を分けた戦争というのをあらためて感じた。

服はいつも通りの私服で特にそのチームのユニフォームはまずない。その人なりの装備があり、紋章がある。特に後ろにいるルナは家紋(何ていうのかわからない)が書かれたワンピースを着ている。それを背負い戦場に出るということだ。中には肩や背中に入れ墨があったり、ペンダントのようなものをつけるものも見た。

その重みというのを知った。そしてその中を勝ち上がらなければならない。


開会式が終わったあと、チームOは最初の試合のために戦場に向かっていた。

「お前ら、緊張してるか?」

俺の肩を持ち、ルナを抱えたのはキラだった。もちろんルナはいつもの姿で、噂の悪魔感のある格好ではなかった。

「お前らは今回、1対1で誰も行けそうになかったら戦え。それ以外は自分から戦うようにするな」

そう言うと、俺の肩から手を離し、ルナを降ろし、先頭の方へ歩いていった。

俺らもキラについていくように、走っていった。どんどん戦場には色々なチームが集まり騒いでいる。そして俺らもその中に入っていく。

『一回戦目のチームOとチームXは直ちに控え室に集まってください』

と、放送がはいると共に、先頭の方にいたオルガや四津野は急ぎ始めた。

「お前らも急げよー!」

後ろの方から雷帝の声が聞こえる。そしてその声はどんどん遠くに消えていった。


チームO控え室。雷帝以外の全員は集まっていた。未だに雷帝は来ない。

「このままだと、雷帝は出れないか」

「ったくよぉ、何年この学校いんだよ」

キラは出入り口付近を睨み付ける。リアはさっきから雷帝の持っている(はず)の携帯に電話をかけるが『お掛けになった電話番号は・・・』と何度も女性の声で言われる。

そして数分後、戦闘の審判が「そろそろ時間ですので、戦場に集まってください」と言いながら入ってきた。

「・・・今回は雷帝無しで戦うしかないようだな」

「しょうがないか。今回は会議で話した通り、リーダー戦制になる。誰がリーダーとして出る?」

リーダー戦制とは、両方から一人リーダーを選ぶ。この場合、チームの隊長ある者じゃなくても問題ない。むしろ、違う方が敵を混乱させることができる。そして選ばれたリーダーを先に倒した方の勝利というルールだ。

会議では一番狙いにくく、能力値のある雷帝がリーダーとして出ていたがいない以上、誰か違う人が出なければならない。

「ここは私が出よう。そしてルナを護衛する。キラは柊を」

「言われなくてもわかってんよ。行こうぜ、柊」

「あ、はい」

俺は不意をつかれたため、少し返事に力が入った。

そして四津野も同じようにルナをつれて、部屋の外に出た。

オルガは一言、リアに

「雷帝が遅れてきたら、行動を見張っていてください」

と言い、外に出ていった。

「相変わらず、不器用ね。みんな」

リアはそう言うと、雷帝を待つために部屋からでて、控え室前の壁に寄りかかっていた。


控え室から出て左に曲がるとそこには対戦相手のチームXが堂々と話し合っていた。そしてチームの隊長らしい人はこちらに気付くと、怖い笑みを浮かべながらこちらにやってきた。そいつはどことなく、どこかのビジュアル系バンドのような格好をしていて、少し不気味だが、どこかカッコいい部分もあった。

「どうもどうも、チームOのみなさん。前回は何年前でしょうか。そして今年このチームの隊長、凩とは私のことです。よろしくお願いします」

凩はそう言うと、頭を下げ、笑いながら去っていった。

「・・・相変わらずだ、あの笑み。あんなやつのどこに女は惹かれるのか」

「惹かれるって?」

「あぁ、お前らは知らないよな。この学校の名物行事、紅戦祭、日本でいう学園祭のようなイベントでいつも終幕のところで有志演舞という物がある。そこで彼の作り上げたバンドが歌うんだ」

「確かに声や歌詞やリズムといったところは俺らも好きだが、戦闘中がな。まぁ戦ってみればわかるさ。お、そろそろだな」

戦場に続く重たい扉が鈍い音を発てながら少しずつ開いていく。そしてその間からこの薄暗い部屋を照らす眩しい光が漏れてきた。


『さぁ、始まりました、王座決定戦!今回も実況は私、チームU監督のコガがやっていきます!今回のゲストはチームAの副隊長及び能力調査制御委員会の会長を勤めている、東条 アキネさんに来てもらっています!』

戦場の至るところにあるテレビのようなパネルから二人の姿が映し出されている。コガの横ではアキネが笑顔で両手を振っていた。観客席からアキネへの声援が聞こえる。

『いやーやはり、アキネさんのファンも来ているみたいですね。ゲスト:東条 アキネと書いた瞬間、一瞬にして観客席が埋まったらしいです。流石、学園のアイドルといったところでしょうか』

『あまり、アイドルってのはちょっと・・・今も戦場に紅戦祭の大取りを勤めるバンド、『C.daze』のボーカルの凩さんもいるらしいので』

『他人のことも深く考える、流石ですな。おっと話が長くなりました、一回戦、チームOvs.チームXだ!・・・悪いこと聞くかもしれませんが、どちらが勝ちそうですか?』

『私はチームOですかね。今回から配置戦が無いからその分、強くなってると思いますよ。それに強い新人さんがいるみたいですので』

スラッと俺とルナにプレッシャーをかける。

『新人ですか・・・そう言えば、チームOは今回も雷帝さんが参加していないみたいですね。前は戦闘中の飲酒でしたが今回は』

『そう言えば、会場前をふらふらしてるのを見ましたよ。たぶん今日も休戦ですかね』

雷帝の話は案外広がるし、笑いの種になる。案外、驚きだ。

そして時は来た。

『・・・残り30秒となりましたね。それでは、アキネさん、両チームにエールを』

『・・・がんばれー!』

小さい声で何か言ったあと、がんばれー、と大きな声で言った。・・・俺にはそのマイクに入らなかった小さな声がわかった。

戦場に出た兵士は声援に胸を高鳴らせると緊張した身体を軽くほぐし、戦闘体制に移る。

そして今


ブォォォォォン!ブォォォォォン!


大きな音と共に戦闘が始まった。


音が体の芯が震わせる。地が足を震わせる。空気が体の表面を震わせる。

俺は『緊張』していた。

配置戦がない以上、キラ、または他の先輩に近寄るためには動くしかない。そして頼みの綱は指揮だ。だが、綱は戦場になく、戦場を知るのは昨日の授業で覚えた記憶のみだ。

今回の戦場はF5の大樹海と呼ばれるところで、その名の通り戦場面積の大半は大木で埋め尽くされ、何事にも判断しづらい場所だった。さらに小さな音でも案外響くもので「どこにいますかー」なんて言ったら必ず敵にばれるだろう。そのため十個以上ある戦場の中で最も苦戦するとキラは言っていた。

少し前にチームTとここで戦うことになっていたが、キラの戦闘外暴行や雷帝の校内飲酒のため、戦闘ができなかった。

俺が考えながら、歩いていると少し開けた空間に出た。

そして次の瞬間、銃声が聞こえ、俺の横を銃弾がかすめた。すぐに俺は近くに倒れている大木に身を隠した。銃声は何度も聞こえ、その度に銃弾が俺の上を通過したり、大木にめり込む。

俺はキラ直伝の闇を放つが敵がどこから狙撃しているかわからない以上、その闇は無駄に空を切る。

そして遠くの木に当たり、ギシギシと音を発てながら木を折った。

銃声は鳴りやむことなく俺を狙う。

俺は心のなかで「誰か助けて」と願った。

そして敵はリロードのためか銃声をやめた・・・リロード?確かこの世界の銃はリロードというものがなく、武器自体が壊れるか使用者がトリガーを引くのをやめない限りは撃ち続けるようになっている。俺は恐る恐る穴だらけになった木の影から銃弾の飛んできた方向を覗いた。

「んなところで何隠れてんだ。敵なら四津野がもう倒したみたいだぞ」

そこには仁王立ちで俺の方を見るキラと、そこから少し高く木のない場所からこちらを見る四津野がいた。四津野の足元には俺を狙撃していたと思われる敵が頭に大きなこぶを作りのびていた。

「全然来ないと思ったら、こんなところで立ち往生くらってたとはな。まぁここがわかったのはお前のお陰だ。素直に喜べ」

四津野は高いところから下りると、

「君の放った物が君の居場所を教えてくれたみたい」

と言いながらこちらにむかって歩いてきた。

「まだ敵はたくさんいる。急ぐぞ」

キラがそう言った次の瞬間、北の方角から大きな爆発音が聞こえた。

「あっちか。行くぞ」


その爆発の起こった周辺では・・・

「やはり面倒か。お前の『爆発の刃ーエクスプロージョン・ナイフ』は」

「そちらこそ。さすが『神の遣い』と自負しているだけはありますね」

凩は右手のナイフを逆手に持ちかえるとオルガの刀を受けとめ、左手のナイフでオルガの右手を切り落としにきた。だが、オルガはそれを察し、一瞬で体勢を立て直し、刀でナイフをはじく。

「やはり一対一でナイフは不利か。なら・・・」

凩は一旦距離を離すと、指笛を鳴らす。

このやり方は味方に場所を知らせるのは早いが逆に敵にも教えてしまうため、ハイリスクである。

指笛を鳴らしてすぐに木陰からひっそりと現れたのはチームXのメンバーだった。

そいつは目の下にくまを作り、グシャグシャの黒髪が目立つ頭をかいていた。見た目からわかるように一切、やる気がなさそうだった。

「カジ!やる気を出せ!戦闘だ!」

凩はそう怒鳴ると、持っていたナイフをカジに渡した。

「・・・・・・はい」

カジと呼ばれた男は大きなあくびを吐くと、ナイフを受け取り、オルガを見た。

次の瞬間、カジの姿はその場から消え、オルガがそれに気づいたときにはオルガの背後をとっていた。

「・・・一殺」

オルガは紙一重でそれを避けると、刀を振った。だが、それは無を切り裂き止まった。

「これが私たちの新人、カジの能力です。いただいてください、彼の詞を」

カジは瞬く間に現れオルガを切りつけては消えを繰り返し、いつのまにかオルガの着ていた服には多数の切り傷が現れた。

「・・・・・・しつこい」

「お前こそな!」

感情的に振った刀はやはり空を切る。そしてカジの持ったナイフはオルガの皮膚を切り裂く。

「・・・・・・チェックメイト」

ナイフは勢いをつけ、オルガの心臓を貫いた・・・かのように思わせた。

「・・・・・・刃が・・・ない」

「計画通り」

心臓を貫いたはずのナイフの先にはさっきまであった銀色に光る刃がひ一欠片もなく消えていた。

「・・・どうして」

「どうしてか、と?それは俺の能力『天使の装備』がすでに発動されていたからだ。俺らはそんな短いナイフでも心臓を刺されたら命を落とす。それを逆に利用したってことだ。お前は攻撃する度に、どんどん心臓部へナイフを近づけていった。そして」

オルガは着ていた服のチャックを下ろし、胸部を見せた。そこにはキラキラと光る盾があった。

「この盾はある一定威力以下の攻撃を無効果する能力が備わっている。おわかりで?」

「・・・刃はそのせいで消えたと・・・」

「甘かったな」

次の瞬間、オルガの拳はカジの顎へと入り、開けたところに生えた一本の大木の幹をその威力で壊した。

「さーて、次はお前だ」

オルガがそう言って、凩を見た瞬間、戦場には終戦の鐘が鳴った。

「どういうことだ?お前がリーダーなのでは」

『第一回戦、チームXのリーダー、カジを倒して見事、チームOの勝利ー!』

とコガが放送した。

「今言った通りです。リーダーは私ではなくそこで倒れている彼です」

凩はそう言い、カジのところへ近寄った。

「帰るぞ、戦闘は終わりだ」

カジは静かに起き上がると涙を手の甲で拭い、戦闘が終わり開かれた出口へ姿を消していった。


一日目、やはり戦闘というのは恐ろしく、そして残酷に終わる。

戦死した者や、勝利したものの多大な戦傷を残したチームも現れた。俺らはオルガの着ていた服が切れた以外は無傷で終えたが、これから先何が起こるかわからない。


俺らは生きて帰ることができるのだろうか・・・

そんなことを思いながら、ベッドに倒れた。




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