消えた魔理沙と破壊を生む魔学者
「あー……今日も暇ねぇ」
とある真夏の日の夕方。
博麗神社の巫女、博麗霊夢は
今日も神社の掃除をしていた。
「しかし……何でこういう時に限って
魔理沙は来ないのかしら……」
箒を動かしながら、一人言を呟く。
「ん……誰あの子?魔理沙……じゃ、なさそうね」
黒い魔女の様な者が神社を訪れた。
年はまだそんなにとっていないだろう。
「あの、すみません」
「んー?何よ?」
黒い魔女は、お賽銭箱に500円を入れて言った。
「魔理沙さんを知りませんか?」
「魔理沙?最近見てないわね。
あんた、名前は?」
霊夢が問うと魔女は、
「霧雨、緑野です。
一応、魔理沙さんの妹です」
「い……妹?
魔理沙に妹なんていたかしら?」
当然の疑問である。
魔理沙は、霧雨道具店の一人娘なのだから、
妹がいるとは考え難い。
「やはり……パラレルワールドですか。この世界は。
いや、昨晩家出して森の中で眠って、それから家に戻ると誰もいなかったし、
ここは……あの世?いや冥界があ」
「ちょっとちょっと。一人で勝手に話を進めないでよ」
「あ、すみません」
どうやらこの魔女……緑野は、一人言が激しい様だ。
「それに……パラレルワールドって何よ?」
「え、知らないんですか?」
「知らないから聞いているのよ」
霊夢の言葉を聞くと緑野はこう説明した。
「もしもの世界ですね。
『魔理沙に妹がいた世界』もその一つ。
というか、私はその世界の一つから来たみたいです」
「来たみたいって……自分で来たんじゃないのね」
「そうです」
緑野がそう言うと、霊夢は思い出した様に言った。
「あれ?さっき、誰も家に居なかったって言った?」
「言いました。それがどうかしましたか?」
「じゃあ……魔理沙は何処に居るの……?」
「え?」
博麗神社に最近来ていない。それに家にも居ないとなると、
これは高確率で行方不明だろう。
「……探しに行きます?二人で」
「そうね……でも今日はもう夕方だし、私は大丈夫だけど
夜になったらあんたにはキツいかもしれないわ。
明日の朝、出発しましょう」
「……私はどこで寝るんですか?」
「神社に決まってるじゃない」
「……泊めてくれる、んですか?」
「当たり前よ」
霊夢がそう言うと、
「ありがとうございます!!」
緑野は力強い声で、お礼の言葉を言った。