Ⅶ:月夜の戦い
前回のあらすじ。
・回想フザケンナ!
・シズクが意外と大胆!
・ブレードウルフが現れた!
「「「ウォオオオオオン!!」」」
「ひっ……」
3匹のブレードウルフは、雄叫びを上げながら近づいてくる。
見た感じ強そうだし、僕とシズク以外の皆はグッズリとお休み中。 今度こそ絶体絶命です。
(どどどどうしよう! このままじゃ軽く死ぬ! こういう時は……)
……と、頭の中をある特技がよぎった。 こうなったらダメ元だ!
「……シズク、僕の後ろに隠れてろ」
「は、はい……」
シズクを背後に隠し、僕は1人でブレードウルフ共と向かい合う。
そして覚悟を決め、勇気を振り絞って行動を起こす。
「……食らえ!」
僕はその場で飛び上がり、膝から下までを地に着けた後、肘から先を地に着け、出来るだけ姿勢を低く――おでこが地に着くまで――倒す。
そして、魔法の言葉を息の続く限り唱え続ける。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ……」
……そう。 僕の唯一使う事のできる特技【土下座】である。
何故これでMPを1も消費するのか。 ……永遠の謎だ。
「…………えっと……」
「「「…………グル……」」」
『 貴方は【土下座】を使った!
シズクは困っている!
ブレードウルフ×3は困っている! 』
何だろう。 この、どう反応すれば良いのかよくわからないウインドウは。
「……あの、私が戦いますか?」
「よろしくお願いします……」
仕方なく、僕はシズクに前線を譲る。
ヤメテ! 僕をそんな目で見ないで!
「いきますっ! 【風弾】!」
巨大な氷の塊がブレードウルフ共に向かって行くが、軽々と躱されてしまう。
「まだまだっ! 【風矢】! 【風刃】! 【電撃】! 【落雷】!」
シズクは次々と魔法を放つが、全くもって当たらない。
「……こうなったら……!」
シズクがそう呟くと、いきなり睡魔が襲ってきた。
そして意識を手放す瞬間、シズクの髪が月明かりで銀色に輝いたような気……が……
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「……い! もう朝ですよ! 起きてくださいってば!」
「う……ん……? あれ?」
目が覚めると、シズクが僕の顔を覗き込んでいた。
「……あ! ブレードウルフは!?」
起き上がって、辺りをキョロキョロ見回すが……どこにも見当たらない。
「ブレードウルフならもう追い払いましたよ?」
笑顔で答えるシズク。 髪の毛はやっぱり金色です。 ……あれは見間違いだったのか?
「それじゃあ朝ごはんを作りますから、少し待っててくださいね」
そう言って、小屋の中に戻っていくシズク。 暫くしてから良い匂いが漂ってくる。
あぁ…… 早く食べたい……
2/18) 文章をちょこっと訂正。
2/19) 文章をちょこっと訂正。




