ⅩⅠ:や~っと<ギルド>に着いたぜぃ☆
「せんせ~、前回の復習をお願いしま~す」
「おう! まかせなっ!」
・ぷるぷるしてる!
・はエスって何!?
・緑のが仲間になった!
・緑の名前は『ネミー』!
「以上だ!」
「ここが<ギルド>か……」
「ピュイ……」
「ピャピ……」
「ピーィ……」
……今、僕達(1人+3匹)の前にそびえ立っているのは、紛れもない豪華な宮殿(サー○マハルみたいな感じ)。
しかし、入口に付いている看板には大きく『ギルドへようこそ!』の文字が。
「……すっげー……」
建物の中も、彫刻やら絵画やらレッドなカーペットやらシャンデリアやらがあって、とても傭兵所のイメージとはかけ離れていた。
これで、むさい屈強な男達がいなかったら、間違い無く僕は回れ右していただろう。
……さ、そんなどうでもいい事は置いといて、聞き込み経由(おっさんに睨まれて凄く怖かった)で受付へ。
「あの、ギルド登録がしたいんですけど……」
数人いる受付嬢の内、よく気が利くという噂の受付嬢に声を掛ける。
「承知しました。 では、こちらへ」
受付嬢に連れられて、たくさんある部屋の1つに入る。
リアルに寿命が縮むような聞き込み調査により、<ギルド>で依頼をこなすには、<ギルド>に自分の個人情報(といっても名前と手形のみ)を登録する必要がある、という事実が発覚。 なんでも、悪事を働いたものをさっさと特定するためなんだとか。
赤っ恥をかくのを華麗にスルーした僕は、外面だけ真面目に諸注意を聞く。 ……いや、要約すると『悪い事したらお仕置きだぞっ☆』って事だし、スルーしていいよね。
「……では、この石板に両手を置いてください」
宿でもやったように、両手の平を下にして石板に乗せる。 そして、しばらくすると魔法陣が浮かんでくる。
「……はい、手形の登録が完了しました。 それでは、この登録証明書にサインをお願いします」
差し出された紙には、『貴方の個人情報をこんな事に使いま~す☆』という事が書いてあった。 召喚前の世界とほとんど変わんないな。
「さて、名前名前……」
一通り目を通した後、名前欄に名前を書く為、差し出された羽ペンにインクを付ける。
さあ! 僕の名前を初公(ピシッ……パキッ!)開……って、えぇ!? 名前を書こうと紙にペン先を付けた瞬間、羽ペンが縦に真っ二つにぃっ!?
「「…………(ぽか~ん)」」
一生に一度、見られるか見られないかという衝撃的光景を目の当たりにして、僕も受付嬢もフリーズしてしまう。
「……はっ!? か、代えを持ってきますね!」
いち早く正気を取り戻した受付嬢が、縦に折れた(裂けた?)羽ペンを回収して、代わりの羽ペンを差し出す。
「ど、どうぞ……」
流石、よく気が利くという噂の受付嬢。 予想外の事にも対応も早い!
……まぁ、そんな事は置いといて。 再度羽ペンを受け取り、インクを付けて再チャレンジ。
「そ~っと……」
さっきの事を踏まえて、優しくペンを走らせる。 ……よし、今度は書けたぞ!
「それじゃあこれを……って、あれ?」
何だか紙が掴みにくいな……って、これはまさか!
「えぇっ!? 紙が粉末状になってるぅ!? (ひゅぅぅぅ……)って、ああっ! 隙間風で散らばっちゃったし!」
どうしよう! これじゃあ、画面の前の皆さんに僕の名前を公開できないばかりか、ギルド登録も完遂できないじゃん!
「……仕方ないですね。 特別に匿名で登録しますか?」
「……よろしくお願いします」
……その日、涙ながらに3匹のスライムに愚痴っている黒装束の少年が、<ギルド>前で目撃されたという……




