ファンクラブまであるのか...by葉
ちょっと遅れたけどどうぞ
「橘、どの動物にするんだ?」
俺はそう聞く。早くしないと、昼飯に間に合わなくなってしまう。それに、こいつずっとここにいるつもりだろ。
「...この子がいい。」
そういって橘がみせてきたのは、真っ白な毛並みの犬だった。
「体が弱っていて、商品にならないから、ただでくれるって。」
そう橘が言う。体が弱いって、それじゃすぐ死んじまうだろ。
俺がそういうと、橘は、犬の体にさわってなにか唱えはじめた。
「これで、だいじょうぶ。」
まじかよ....橘の手元にいる犬は、死にかけとは思えないほど元気そうだった。
ペットショップをでた後は、まっすぐに家に帰った。ただ、ペットショップの店員の驚いた表情が忘れられない。
家に着いた。玄関のドアをあけ、中に入る。リビングにいくと、瀬名がパソコンをしていた。
「お帰りなさい。兄さん、橘さん。マスコットは手に入りましたか?」
「この子。」
橘が自分の手の中の犬を見せる。
「この子の名前は?」
「...決めてなかった。」
名前か...まぁ、てきとうなのでいいだろ。
「シロとかでいいんじゃないか。」
「安易すぎます。もっとマスコットらしいネーミングを」
瀬名にだめだしされた。マスコットらしい名前ってなんだよ。まりもっこりとかか。
「...ユニコーンは?」
橘が聞く。全身白色で名前がユニコーン、まさかガンダムか?
「ああ、それでいいですよ。」
なんと、認めやがった。瀬名も絶対ガンダムからつけたってわかってるだろう。
「で、瀬名。お前は何をしてたんだ?」
「旅館のホームページを作ったりしてたんですよ。」
ちゃんとさぼってないようだな。
「そんなことより、早く昼ごはんを作ってくださいよ。」
瀬名に急かされる。昼食は、簡単なものでいいか。
2日後、土日の休みは、ユニ(ユニコーンだと長いから、略称してユニ)がきたこと以外は特になかった。ユニは俺によく懐いてくれた。他の二人にも懐いているが、やっぱりおれに一番懐いているだろう。
俺達は今、学校に登校していた。周りの視線が痛い。橘もそうだが、瀬名も結構な美少女だったりする。橘に勝るとも劣らずってとこだな。
そんな美少女二人といっしょに登校しているのが、さえない俺だから、周りもそりゃ嫉妬するわな。
俺が嫉妬の視線に耐えながら、ようやく学校が見えてきた。瀬名は、日直の仕事を忘れていてようで、あわてて走って行った。
ふう、これで周りの視線が半分になる、俺ははそう思っていた。
甘かった...
瀬名がいないという事は、俺と橘は二人っきりで登校しているように見える。つまり、
美少女と二人っきり=嫉妬の対象となってしまう。
ということで、さっきよりも強い嫉妬の視線に耐えなければいけないんだよ!ちくしょう!
校門前へたどりつく。クラスに入っていくのも怖いな。そう考えていると、突然、二つの影が俺達の進む道の前へ立ち塞がっていた。
二つの影の内、比較的太い方がいった。
「僕たちは橘朱莉ちゃんのファンクラブのもの!貴様、我らがアイドル朱莉ちゃんとの関係をこたえろ!!」
俺はまず素直に驚き、そして溜息を吐く。
「まさかファンクラブがあるなんてな....」
横の橘をみると、いつもどおりの無表情だった。
「さあ、早くこたえろ!!」
ファンクラブの奴らが催促してくる。うざってぇ...
「橘は、ただの同居人だ。安心しろ。男女の仲や彼氏彼女の関係でもない。」
そう答えてやった。ファンクラブの二人組は、おおぉ、といううめき声を言いながらこっちを向く。
「死にさらせぇ!!!」
「なんでだよ!?」
「だまれ!朱莉ちゃんといっしょに住んでるなど言語道断!!問答無用で死刑だぁ!!!」
「はあ!?意味わかんねえよ!?」
とりあえず、殴りかかってきた二人組の内、一人は鳩尾を、もう一人は股間を蹴ってやった。
ふぅ、一件落着。と思っていたら、周りも不穏な空気になっていく。
まさか、まだファンクラブのやつらがいるのか!?
「橘、いくぞ!」
俺は、話を聞き飛ばしてぼーっとしていた橘の手をとり、一目散に駆け出していた。