文化的な手口
自供とも取れるかも知れないが、あの事件の顛末を話しておきたくてね。
もう少しで完全な犯行として成立する筈だったのだが、あと一歩というところでバレてしまうとはね。
事の次第はこうだ。
知っての通り、あの哀れな作品が消えた話だよ。
露天美術館で隣にあった作品が10万もの価値をつけられ、
ありとあらゆる方向から写真を撮られ、人の伝手や井戸端での話にも上がって、
果てにはゾンビやロボットまで出てきて盛り上げてお祭り騒ぎ、模倣した作品まで出てきただろう?
鍵は確かについていなかったし、警備が厳重だったかと言われるとそうではなかったかも知れない。
ただまるで煙のように痕跡一つ残らず、初めから無かったように消えたからね。
大袈裟に新聞の見出しにもなったし、警察も威信をかけて対策本部を立てて捜査していたね。
重箱の隅をつつくように行方を探し、目撃情報なども募ってね。
「経路や盗み出した目的は?その巧妙で計画的な犯行とは」
「以前も見つからず、組織的な犯行か?」
「10代から40代の男性または女性が犯人像として浮かんでいる」
なんて三日目にしてテレビのコメンテーターが面白おかしく話していた時は吹き出してしまったよ。
ここだけの話だけど、まだ捜索は打ち切られていないらしいよ。
あの哀れな作品もハート二つ分の価値しかなかったが、価値は価値だ。
盗まれたと思っても仕方がない、でも実際は消滅したんだ。
にわかには信じられないかも知れないが、本当なんだよ。
宇宙に浮かぶ無数の流れ星のように溢れる中から、君があの作品に価値を見出し、
そしてまた見るために戻ってきた。
だからこそ、この犯行に気が付かれてしまうとは思いもしなかったよ。
ここまで言えば分かるだろう。
あり得ないという顔をしているけれど、実際はボタン一つで事足りたのさ。
消滅させることに意味はないから、その発想に至らなかったのだろうね。
今まで43回もこの手口で消してきたのだが、事ここに至っては観念することにしたよ。
心配しなくても大丈夫、捕まりはしないよ。
認めるだけさ。
悔い改めるつもりはないよ。




