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居眠り卿と密室の死体と消えた小瓶  作者: 中里勇史


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出入りできない部屋の死体

 いつの間にか、ガルトレンらがウィンの後ろで彼の様子を窺っていた。


死体(これ)、誰です?」

「『これ』とは無礼ではありませんか。その方はポセワイゼス卿――ヴァル・ポセワイゼス・トルートン様です。当家の遠縁で、三日前からご逗留いただいていました」

 広間に居た青年が進み出て、説明した。

「私は当家の長男で、ガルダレンと申します。そこに居るのは母のアレナセイア。その後ろで控えているのは執事のゲルネセルムです」

「ご家族はこれで全てですか?」

「ここにはおりませんが、アレナエリンという妹が一人。他に料理番などの使用人や女官などもおります」

「ポセワイゼス卿はいつ死んだんですか?」

 ウィンが死体の腕を持ち上げると、肘や肩は抵抗なく動いた。

「あなたがいらっしゃる直前です。ポセワイゼス卿の叫び声を聞き付けて、扉を破ってご遺体を発見した直後に、ゲルネセルムから監察使殿のご来訪の知らせを受けたのです」

「扉を破った?」

「はい。内側からかんぬきが掛けられており、開けるにはかんぬきを破壊するしかありませんでした」

「他に出入り口は?」

「ありません」

 誰も答えないため、長男のガルダレンが一人でウィンに対応していた。ガルトレンはむっつりとした顔で口を閉ざしていた。

「いや、それは変でしょう。ポセワイゼス卿はなぜ死んだのですか? 見たところ服毒死のようだが、毒の容器が見当たらない。自殺にしては変だ。しかし、内側からかんぬきが掛かっていて誰も出入りできなかった。そういうことですか?」

「私に聞かれましても、何が何やら……」

 ガルダレンが返答に困って両親の顔を見た。二人とも顔を背けて押し黙っている。落ち着きもない。


「これは困った。『出入りできない部屋』で人が殺された、という訳ですか」

 ウィンはわははと笑った。ガルダレンには、何が面白いのかさっぱり分からなかった。


「出入りできない部屋」は冗長な表現ですが、現代ミステリ用語の「密室」を登場人物が使うのは不自然なので、「そういう用語がない世界の会話」としてこうしてます。

当然ながら、指紋採取などの科学捜査の概念もありません。一応、死後硬直の有無を調べる程度のことはしていますが。

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