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都の月

作者: イプシロン
掲載日:2025/10/29


  東方ビザンツの風をあび

  街はたたずむ

  西方ローマの風は殷々として

  今宵ときをとめんとす


  月のアルバムをひらかんと

  仮の宿に焚き火を灯せば

  街は炎に揺れて語らう


  窓外に憩うは海の女王

  波音はスフォルツァンド

  潮騒は祈りのキリエ

  尖った夜の三日月こそが

  タクトの主と朧雲が


  海はまた

  葡萄色にメタモルフォーゼ

  南方ティレニアの風におされ

  極光をよびよせる


  ゆれる街はゴンドラのよう

  歴史の豪雨にしとど濡れても

  運河は溢れまじと迷路を抜け

  ドッジオーネが口から水はき

  金のドームは知らぬ顔

  街をまもるは妖魔か孔雀か


  古の都に宿りし魂は不滅なり

  冥界の風にあおられども

  息すう日々

  北方、死の風にさえ育まれ

  息はく日々


  真珠の都

  ヴェネツィアは

  水に浮かんだまま

  ただようだけ

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