春には青を、生徒には思春を、先生には残業を、俺には何があるんだい?よぉく、理解。俺には誇りを、かぁ…へ?埃の間違いじゃなくて?
小学校終了!同窓会開くとか言ってるけど、俺は誘われても行かないからダイジョーブ、実際、誘われる事なんかねぇだろ。あんなクラスのヤツらに俺の高等学校ライフは邪魔させねぇ!
これで 入学式を 終わります
これでぇ 入学式をぉ 終わりまぁすぅ
これでぇぇ 入学式をぉぉ 終わりまぁぁすぅぅ
長ったらしい入学生徒代表とかいう何基準で決められるの?の時、校長先生のお言葉、現・生徒会委員長の言葉、誰がどこのクラスの教師に就くかとかの話を乗り切り、晴れて我、中学生になったなり。久しぶりにこんな嬉いかも。次々と退場していく新たなる生徒たちは全員が全員、輝いてるやけではなかった。確かに、ここが第一希望ってわけじゃないし、不安とかプレッシャーもかかるわけだもんな。そんな中で嬉しがってる俺は空気が読めてないのと似てるってわけか。
空気を読んだようにして若干の作り笑顔をした。俺も退場するとしよう。ちゃんと列を作ってね。さっぱり分からん校内を先輩となるこの学校の生徒が先導する。隣に先程話しかけてくれた葵楓様もいた。やっぱり綺麗だ…いかんいかん。
いつの間にか「ここのクラスです。」と先輩が言った。着くの早くね?俺がよそ見してただけか。外から見たら二階建ての旧校舎もあれば、現在進行形で使っている三階ての校舎、走り回っても誰にも迷惑をかけなさそうな校庭の大きさに、家畜いるんじゃねぇかってぐらいのデカい小屋、畑は校舎裏と屋上にそれぞれあり、特別教室用プラス体育館アンドプールの場所もあるし、マジでなんでもあり。まぁ国立というより全世界立って言った方がいいぐらいの設備の量、施設の量、校外学習の量、教材の量。さすが岐阜県のど真ん中のど真ん中。日本のへそってだけあるな。
俺の教室は一階にある教室であった。俺が教室を廊下から見ると右手側に正面黒板。左手側にはホワイトボードにロッカー。傘立てもある。別にすげぇ大きい窓なんて無いが、ベランダのようになっていた。一応、アニメみたいなぼうっとできるスペースはあるということか。全体的に温かみのある木材が使われてるから、ほっとできる雰囲気のようなっているのか。
続々と入っていく生徒を見つめていると、先輩から「入っていいよ。」と言われた。どこまで俺に親切してくれるんだよ。ありがとうございます。教室の裏扉から入ろうと歩いた。
「かっ…うぅ…」
どんだけ入ろうとしても体がそれを拒否する…なんでだよ…動けよ…卒業の時は入れたじゃんか…こんな所で止まんなよ…動け、動いてくれ…
「大丈夫?」
すいません…本当にすいません…
息が苦しい。体が言う事を聞かない。力が入らない。目が乾いて、涙が今にも溢れ出そうだ。もう倒れそう。つらい…ただつらい。目の前が真っ暗になってくるぐらいで葵が目の前にうっすらと見えた。
そうすると、俺の腕が誰かに持たれるのを感じた。
「大丈夫、私がいる。一緒に入ろ。ね?」
葵楓様の声だった。葵楓様が一歩教室に踏み出すと、やっと俺も踏み出せた。目立ってないだろうか。今日知り会ったばかりの人に片方支えてもらって、やっととか。恥ずかしすぎる…。
席に着き、座ると一気に楽になった。なんでかは知らないし、なんであんな状態になったのかも理解不能。俺の知ってる限りではそんな症状の病気なんてあったかどうか。一種の難病なのだろうか。
何があってこんな運命になるってほど思ったのが、葵楓が隣の席であったこと。おいおい、ラブコメぇか?もしかして。一瞬焦って周りを見渡してもこっちを向いて陰口を言ってる様子もなかったし、笑ってるヤツもいなければ、殴りかかってくるようなヤツもいない。睨んでくるヤツもいないし。世界がまるで違って見えた。
正面黒板には先輩からの新入生へのメッセージが書いてあった。絵も描かれていた。こんな迎えてくれる場所なんてある?って思ったぐらいだ。
ドアが音もなく開いた。開けた人は大体予想がつく。教師だろう。ていうかほとんど無音とかどんだけ手入れいんだよ。固有奥義『静かなる侵入者』が進化して我が真なる奥義、『誘ってないぜ、訪れ者』ができるってわけか!?我ながらネーミングセンス皆無だな。
その先生は見る限りの女性。厳しそうではなく、なんなら優しそうなレベルぐらい。だが、どこかが抜けている、そんな感じであった。
「はい、という事で、私がこれからみなさんの主任となる今藤時宗です。どうぞよろしく。名前の由来は聞かないでください。自己紹介しないといけないルールなんで適当に好きな事とか言わせていただきます。好きな事は周りに合わせて、自分も流行にのった気でいる事。特技は生徒指導。最後に一言。私に合わせてください。そしたら先生に怒られる事も流行に遅れる事もないでしょう。」
この先生の今の自己紹介でどういう人かを予想しようではないか。セカンドシンキングタイムを設けよう。セカンドってなんだ。どこから出てきたんだよ。
まず、この人の今の自己紹介は嘘が多少も入ってないように思えた。心からではないが、少し信頼はできる気がしたのは事実。そして二つ、名前の由来は聞くな、と先生は言ったがこれ…「今」藤「時」宗…今時という事になると思う。そうすると流行という自己紹介の言葉にも結び付く。所謂「今時先生」っていうわけだ。まぁご縁があった時に呼ぶ俺の密かなるあだ名としよう。
ちなみに自己紹介はしなくてもいいらしい。ここで自分の名前をどう売ろうが、好感度を高めようが、友情を育もうが、愛を育もうが、独りでいようが成績には反映されないらしい。どうこのクラスのメンバー、学年、学校全体と付き合っていくかは自分次第。どう展開していくのか、それはその人の性格を掴む、いや粗を探す機会になるかもな。葵楓様には触れさせん!絶対死守。絶対防御。俺、絶対過保護。俺意外に気持ちわる…
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そんなこんなで苦痛に満ちた時間は終わりのチャイムと共に消え失せ、次は校内案内をするだとか。それは嬉しき。
立とうとした時、椅子から崩れ落ちそうになった。だが、パッと手を取ってくれたのが、やはり葵楓様。
「立てる?私、保健室までなら連れてけるよ?」
誰にも心配をかけさせないように俺の考えを汲み取ってくれたのか、小さい声で言った。
「あ、いや。ごめん。ありがとう。なんか、体調が優れないわけではないんだけど。なんか教室入った時から、なんか、うん。」
なんだこの単語が積み重なったよく分からん言葉。主語どこだよ。
歩こうとした瞬間、また力が抜けた。今度こそ床に倒れた。葵楓様が駆け寄り、
「やっぱり保健室行こう?」
と言ってくれた。グダグダやってても仕方ない…迷惑かけたくないし…
「大丈夫です、行きましょう。待たせるわけにはいきませんので。」
今くたばるわけにはいかねぇ。俺の中学生ライフは始まったばかりなんだから。
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最初に案内をしてもらったのが新校舎の三階から。ほとんどがクラス教室で、時折準備教室。簡易個別相談室。語学学級というクラスもあった。語学は世界で全体的に使われる事が多い、アメリカ英語、イギリス英語、中国語、韓国語、イタリア語、ロシア語などなど。俺が一番と言っていいほど気になった語学はラテン語、日本語方言、日本語古語、アイヌ語。ここは勉強したい点ではあるな。三階は主にこの高等学校からの指定校みたいなもんで、一応進学先となる感じのものである。これをなんと言うのだろう。短期大学でもないし…普通に大学でいいのか。
階を移動する時の移動手段は中央階段、西階段、東階段、裏口専用階段、外部階段、中央エレベーター、西エレベーター、東エレベーター。そんなエレベーターいんのかよ。学生は全員階段使えよ。だから最近の学生の体力とか体力テストの平均が低いって言われるんだよ。
次に二階。まぁやっぱりクラスが大半ですわ。間取りも大体同じ。違う点は語学学級はなく、逆に個別勉強室が設けられている事。いや必要かこれ。家でやれよ。あ、よくないですね。あとは職員室。生徒は入れないだそうで、声を出すのではなく、うん…なんて言ってたっけ…まぁ特殊なんだって。いや、話聞けよ俺。
次に一階。まぁ同様。こっちでは語学学級でもなく個別勉強室でもなく、食堂。ここが最重要ポイント。定員はこの学校の3分の1程度。自販機はこの食堂には七台。飲み物の自販機から始まり、たまに駅に置いてある紙パックの自販機、お菓子とか瓶ジュースの自販機、アイスの自販機と…へ?何だぁ、スッゲェ充実してんじゃん。食堂で提供される人気料理は第三位はスパゲッティ類、第二位はうどん類、そしてラーメン類という結果でした!うん、随分ざっくりしすぎだろ!もう麺類でくくってくれ。次は米類だろうが。先輩は「軽食やデザート類も人気があります。軽食には揚げ物とかで、デザートはアイスとかパフェなどなど。」っていうことは軽食類、デザート類がランキングに入るかも…だと
…?自販機については入れるなよ。ややこしくなるから。
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次に到着した場所は校庭。地面は土じゃない。さすが、土にすると誰かの目に入れるヤツが出てくるだろうし、服にも被害、今度は自分の物にも被害出るもんな。一応トラック二周すると1キロらしい。一周500メートルってこと?はははは。遊具なし。サッカーコートが二つ分+野球コートが一つ分+テニスコート二つ分+トラック+バスケットゴール単体が二つ分+立ち幅跳びの砂か土のアレ+どこにも所属しない所って感じ。いやぁ〜デカいねぇ〜。帰宅部はここで練習するといんじゃねぇか。俺はここでなんか部活したくねぇな。どんだけ走ることになるんだか。校舎裏の庭には畑あるし。
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そして三つ目の施設紹介となりました。先程紹介した校舎と同化するようにあるのが小屋。主に農業学校にある施設というか設備というかそういった扱いらしい。農業部もあるらしいし、ついでに牧畜部もある、と先輩は言った。いやぁ〜さすが。俺でも予想できなかった。ちなみに家畜が中にはいて、牛、豚、鶏がいてしかもガチめの。兎もハムスターもモモンガもいた。いや鳥のオウムとかインコ、鷹、鷲もおんのかい。どうやって飼育すんだよ。ちゃんと一羽ずつの部屋あるし。アニメでも見ねぇぞ。動物園?ココ。
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四、「室内プール隣接体育館特別教室」と。情報量よ、少しは仕事減らせ。脳が理解するの遅くなるから。言葉通り室内プールが一階にあって、校庭の三分の一スケールの体育館、特別教室扱いの音楽室、理科室、情報室、美術室、図書室本館、トレーニング室、校内博物館、和室、華道室、書道室などなど。もうツッこむの疲れた。無理、脳がだんだん理解し始めてるし。違和感、仕事しろ。
ハイ。よぉく理解。旧校舎の説明なくてよかった。この学校三年経っても迷う説あるよ。
案内が終わりを告げそうになった時、重々しく先輩は口を開いた。
「そうだ、こんな感じで学校全体は紹介したけど、みんなに言わなきゃいけない事があるんだ。」
急になんだ、この先輩。
「別に君たちの実力が絶対じゃない。むしろ実力で戦おうとしない方がいい。自分の技術、知識、性格とか全部は誇りとして換算するのが一番いい。理由はその内分かるよ。今それらをくくって自分の中で留めておかないと多分やってられない。」
プッ…ハハハハハハ。先輩、そうすると俺が勝利者だな。誇りなんてもうとっくのとっくにないよ。小学校でずっと殺し続けた俺の全て、否定されてきた俺の人生だ。だからくくる必要もない、首以外な。
俺は多分、無意識的に歯を出して不適な笑みを浮かべたのだろう。ただ独りだけで。周りの不安の声、面白がる声の中で誰よりも不吉に。
ちなみに案内の途中でも葵楓様と話していたが、途中から周りのヤツらの視線が向き始め「何であんなキモいヤツが可愛い子とつるんでんだよ。気持ち悪りぃ」と言われた始末。次はお前を始末してやろうか。俺と葵楓様との会話を台無しにするな。葵楓様ファンクラブがあれば俺が潰そう。俺だけの関係であれ。