僕は時間子
広い広い空間に今日も、いろいろなものが元気良く飛び交っている。赤い世界の玉、青い世界の玉、白い世界の玉、•••。
皆が皆あて度なく、ほら、水槽の金魚のように思い思いに動き、重ねて合わさって透明な世界を創っている。ヒトには見えないけれど僕には見える。
だからときどき僕がムラムラっとして、気の向いた玉に抱きつくと、それがヒトの目にも見える粒子になる、と言うわけ。なんか、収束するなんて言われているけど、まあ、どうでもいいや。
でも僕は実験屋さん泣かせ。だって発射された玉にいつ僕が飛び付くか、飛び付かないかなんて、気分屋の自分にも分からないからさ。
けれど、なんだか誇らしいね。だって電子にしたって光子にしたって、精子や卵子と同じで、それだけじゃどうしようもないもの。僕が抱き付く事で、彼らはこの世に時を刻めるようになるのさ。
さてと、•••チーン、チーン、チーン•••。何をしているのかって? 今日はシュレ猫の88回忌だからお線香をあげているところさ。