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楽園の書
……きっと彼女たちは、ただ優しかったのだろう。
それが許されぬ世界だった。
“優しさ”は願いとなり、“願い”は奇跡となり、“奇跡”は必ず誰かを踏み潰す。
世界は均衡であることを望むが、聖女の存在は常に均衡を壊す。
1人の聖女は、人を赦そうとした。
もう1人の聖女は、獣を救おうとした。
だが、どちらも世界に“滅び”をもたらした。
だから、1人の聖女は“愛”を殺された。
「これ以上、世界に優しくしてはならない」
それは、人類が選び取った最も冷たい正義だった。