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断章聖典
…聖女は一人にしてはならぬ。
彼の者が孤独にあるとき、天の理は裂け、地の血は逆巻く。
孤独の聖女は、意志のままに世界を歪める。
感情は天候に、溜息は地震に、涙は塩の雨となって降り注ぐ。
友を与えよ、伴侶を置け、情を交わせ。
鏡として傍に立ち、寄り添う者こそが、その“核”をなだめる。
起伏を抑えよ。
喜びと怒りを等しく分かち合い、感情の端を削れ。
…さすれば、天災は収まる。
炎も、嵐も、崩れも、全ては静まる。
だが、もし聖女が死ねば——
“あとに残るは我らの死のみ”
一柱の消滅が、一国を灰とし、万の命を奪う。
それゆえ——祭り上げよ。
声を尽くし、祈りを重ねよ。
讃えよ、神の子よ。
讃えよ、災いの封。
讃えよ、我らを生かすもの。
…されど、その笑みは悲しみより重く、
笑わぬことを罪とはするなかれ。