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第4話
ステラとの出会いから半年。図書室で調べものをする日々は、いつしか静かな癒しになっていた。
けれど、ラテルの心にはずっと決めていたことがある。
——この屋敷を出て、自分の足で病と向き合いたい。
その朝、荷物をまとめて玄関に立っていると、風に揺れる薬草の香りが背後から漂ってきた。
鳥がさえずる中、石畳を踏む音が近づき、そしてステラの声が聞こえた。彼女は一歩前に出て、そっとラテルを抱きしめる。
「……やっぱり、行くんだね」
振り向くと、そこにはいつものように分厚い本を抱えたステラが立っていた。けれど、その目はどこか寂しげだった。
「うん。でも……よかったら一緒に来てくれないか?」
小さな沈黙のあと、ステラはふっと笑って頷いた。
「もちろん。薬草学の実地調査ってことで」
不安がなかったわけじゃない。 それでもこの病気と向き合うためには、この家を出て前に進まなくてはならなかった。
——こうして、二人の旅は静かに、けれど確かに始まった。
謎の病気を解明するために──そして、まだ見ぬ未来のために。