1 人の「価値」
「魔力量」
世の中ではこれがその人の価値を決める。
この世の中で生きるには必須な力でありながらも未だ謎多き力、「魔法」。
この魔法のおかげで、調理場で火をつけられるし、風を起こせるし、夜道を街灯が照らしてくれる。
しかし、なぜ同じ力でこれだけ様々なことができるのか、誰も知らない。だからこの力を「魔の力」として人々は敬意を示しているわけだ。
この魔法を使うためには、生物が作り出し、自然界の様々なところに存在する「魔力」が必要になる。日常的に魔法を使うだけなら、魔力量を意識することはほとんどない。おそらく普通の生活をしていく上で魔力量を気にすることはほとんどないだろう。
しかし、戦場では話が変わってくる。
魔法は大きなほのをお起こしたり、爆発をおこすことのできるものであり、戦局を一撃で変えることができる「殺戮兵器」なのである。
たとえ一人の人間がどれだけ力が強くて、剣術や武道に精通していたとしても、遠くから魔法による爆撃や火炎放射が飛んでくればひとたまりもないのだ。
だからこの世では魔力が多ければ、出世は確約されているようなものなのだ。
しかし、誰もが戦場で魔法をぶっ放せるわけではない。攻撃魔法は日常で使われる魔法とは比較できないほどの魔力量が消費されるのだ。
魔力量は多少は訓練によって増やすことはできるが、一般人は増えても中級の攻撃魔法が一発打てるかどうか。たとえ打てたとしても、魔力を使い切ればその人は3日はベッドに横たわったまま目を開けることはないだろう。最悪そのまま天国行きなんてこともある。
大型の魔法を打ったり、何発も魔法を打つような選ばれし人間はこの世に一握りしかいない。
彼らは一般人から見れば「化け物」のような存在である。
そのため、戦局を変えられる手札をそれだけ持っているかによって、軍隊の強さは決まる。つまり、魔法を使える人間が軍隊に何人いるかによって、おおよそその軍の強さが測れるのだ。
逆に、魔力を多くは持たない一般兵はどんな奴でも務まる、それが傭兵であってもということなのだ。
また生まれつきの魔力量は遺伝するのだそうだ。そのため、魔力量が多い人達は「貴族」として特権を与えられ、先祖代々安定した生活が保障されている。
土地を治めるリーダーは全員大規模魔法を複数回使えるような人間、いや化け物たちだ。彼らが前線に出て戦う戦闘には、正直参加したくはない。
逆に平民が貴族になることは基本的にありえない。稀にいきなり魔力を持つ人間もいるらしいが、残念ながら私がその人でないことは、傭兵ギルドに入会するときに検査済みだ。「魔力量が少ない」、これだけで人生負け組なのだ。
ちなみに、魔力を持たない人間はこの世にいない、と考えていい。歴史上に数人はいたらしいが、その程度だ。
魔力持ちが優遇されていく一方で、持たざるものはその配下へと下っていく。こうして魔力量によって格差が拡大していくわけだが、実際に戦闘で魔法を使えるほど魔力を持っている人なんて、きっとこの世に1割もいるかどうかだろう。残りの大半は農業や商売などをして生活をしていくわけだ。
ただ、一般的に「当たり前」と言われていることができない人も大勢いる。
世は大戦乱時代。
常にどこかの田畑は荒らされ、街は燃え、人々は職や住処を失う。
そんな生活拠点を奪われた者たちが最後の望みをかけ集まってくる場所、それが今私のいる「傭兵ギルド」だ。
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