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寝室

 隣の部屋、廊下の一番左奥の部屋は寝室だった。

 部屋の扉は他の部屋の物とは違いゴムパッキンが付いていて、素材も少し違うようだった。


「何の意味があるんだこれ?」

「恐らく防音用じゃろうな」

「……何でわざわざ防音とかするんだろうな?」

「知らんわ……じゃが恐らく子供に喘ぎ声が聞かれたく無かったからじゃないかの?」

「ああ、なるほど」


 庭側に窓が一つあり、中央にはキングサイズのベットがでかでかと部屋に陣取っている。壁にはデジタル時計が掛かっており、十年前から動いているという事なのだろう……俺の腕時計の針が刺す時刻と同じ時間を刺している。


「そろそろ見っけたいところなんじゃがの」


 そう言ってサファイアはベットに飛び込んだ。

 部屋をざっと見まわすと、部屋の端にはクローゼット、そのすぐそばには窓と木製の大きなタンス、そしてその上には三人で映った家族写真が置かれていた。


「取り敢えず儂はベットでも調べるかの、そっちはタンスを調べとくれ」


 そう言って布団に潜り込むサファイア。

 俺はそれを端目にタンスを開ける。


「うっわ」


 三段ある戸の一番上を開ける。

 中にはぎっしりと服が入っているが綺麗にたたまれている、しかし放置されていたからかところどころ虫食いされている。

 一つづつ取り出す。

 女性ものと男性ものが半々といったところで、共有のタンスだったことがうかがえる。


「ねえな」


 真ん中の戸を開けると、中にはハンコや通帳、高そうなネックレスや指輪などのアクセサリーが入っていただけで特筆すべきものは特になかった。

 なので次を確認するため、一番下の戸を開けようとた……しかし開かない。


「あれ……あ、鍵かかってるな」


 戸の表面に鍵穴がある。


「別にぶっ壊せば良くないかの?」


 ベットの下から顔を出したサファイアがそんな事を言い出した。


「お前、それはやばいだろ」

「そうかの? もう不法侵入しとる時点でアウトなんじゃから気にするだけ無駄じゃないかの?」

「……それもそうか、じゃ倉庫にハンマーとかあったし取りに行ってくるわ」

「いや、多分素手で行けるじゃろ」

「え?」

「いやだからの、貴様の筋力は強化されとるんじゃから思いっきし引っ張たら開くぞ」


 俺は言われた通り、取手に手を掛け体重移動を駆使して後ろへと引っ張る。

 だがビクともしない。


「無理だ、開かない」

「は? そんなわけないじゃろへたくそが、どけ儂がやる」


 自信満々といった表情でタンスの前にサファイアが来る。


「ふん、貧弱雑魚人間が。力というのはこうやって使うんじゃよ!」


 サファイアはそう言って、俺と同様に戸を引っ張る。

 だがしかし、ピクリとも変化は起こらない。


「……どうやって使うんですかね?」

「ええい! 貴様も手伝わんか! 同時に引っ張れば開くわい!」


 なので俺も戸に手を掛け、サファイアと掛け声でタイミングを合わせ同時に引っ張る。

 だが、やはり変化は起きない。


「何なんじゃこのタンスは! 一体どんな事態を想定して作っとんじゃ、頑丈過ぎじゃぞ」

「もう大人しく鍵を探そうぜ、まだ家中調べ終わってないんだから最初っから壊す前提はやめとこう」

「……確かにそうじゃの、少し焦っとったわい。すまんの」


 そう言ってタンスを蹴っ飛ばすサファイア。


「しゃーないし次はクローゼット調べるぞ」

「おっけ」


 両開きの扉を開けると下にカーペットが引かれていて、広さは大人が二人入れるぐらいの大きさだ、中には季節ものの服が何着か中の棒にかかっており他にはネクタイやスーツなどの仕事服が入っている。


「服以外には……布団乾燥機ぐらいかの?」

「そうだな」

「次行くかの」

「そうしようか」


 クローゼットを閉じ、部屋の扉の方を見るとそこには壁しかなかった。


「……扉無くなっとるの」

「窓もなくなってる」


 クローゼットを開けると扉で窓を覆って見えなくなる位置だったのだが、今はこちらも無くなっている。


「閉じ込められたという事かの?」

「……どうする?」

「そうじゃの……分からん」

「役に立たねえな」

「うっさいわ! 拗ねるぞ!」


 サファイアはそう言って近くにあったタンスに蹴りを入れた。

 しかしどうするか、そう考え座り込んだ時だった。

 ブォオンという車の音と共に、部屋が一瞬だけ光った。


「………………あ」

「お、なんか分かったのかの?」


 俺は立ち上がり窓のあった場所に触れる……冷たい。

 俺は確信をもって扉があった場所へと歩いていき、壁を触る。


「あった」


 壁には“見えない”が扉があり、取手がありそうなところをまさぐってみると……取手らしきものに触れることが出来た。俺はそれを掴み捻って前に力を込めるとギーッという音と共に壁が開き、部屋は元に戻った。


「ええ? 貴様何をしたんじゃ?」

「……なんか光ったからさ、多分外に車が走ってそのライトが部屋の中に入ったんだろうな」


 音もなっていたし多分そう。


「まあそんでもしかしてと思ってな、これ窓が無くなってんじゃなくてそう見えてるだけなんじゃないかと」

「なるほどの、幻影を見せられとった訳か」

「だから扉もそうなのかなって思ってな、実際触ってみたらあってたわけだ」

「はぁ~~、貴様実は頭いいんじゃな!」


 そう言って感心するサファイア。

 ………………というか。


「いや、お前が閉じ込められたとか言わなかったら真っ先にあった場所調べてたけどな?」


 変な先入観を与えられたのが敗因だろ。


「すまん、下手に魔術の知識があるからの……単純な考えが出てこんのじゃ」

「……そう言えばだが、魔術っていうのは具体的にどんなのがあるんだ?」

「お、気になるかの!」

「まあそりゃな」

「ふっふっふ、気は進まんが気になるのなら教えてやろう……儂のパーツを取り戻した後でな!」

「お、そうか。じゃあ早く見つけないとな」


 俺は部屋を出た。


「本当に貴様興味あるのかの? 別に頼むなら今説明してやってもいいんじゃぞ?」

「あ、大丈夫です」

「返事が適当じゃないかの?」

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